「優三さんは日本国憲法になって帰ってきた」説が最強かも
『虎に翼』第9週ダイジェスト版を見ながら。直道の戦死の知らせ、直明の帰還、優三さんの戦病死判明、さらに直言の死。戦争で大切な人やモノをどんどん奪われ(麻布の家も接収されてしまった)、疎開で戦災は免れたものの、変わり果てた東京の街をさまよう寅子。
SNSで優三さんの死を巡っていくつかの感想が目に留まったが、「優三さんは日本国憲法になって帰ってきた」説が最強かも知れない。
そうなんだよね。優三さんが寅子に言い残した「僕がトラちゃんに望むこと」は寅子が寅子らしい生き方をして欲しいというメッセージで、それはまさに日本国憲法第13条や第14条の精神。
優三さんが日本国憲法のメタファーというのも、何かわかりみがある。大日本帝国憲法とその諸法規にもとづく法曹家を目指して受験してずっと合格できなかったのも、依って立つ精神が違っていたんだろうね。寅子に対しての接し方は、戦前の日本人男性の家長然とした振る舞いでなく、寅子を対等以上の存在として大切にしてくれた。穂積先生に名前を覚えてもらえなかったのも、凡庸な生徒だったからじゃなくて、大日本帝国憲法の体制下では先進的だった先生にも理解できない存在だったからかも知れない。
そして、戦場に立つことなく、病気で死んでいったのも優三さんらしい。銃を執って誰かを殺すこともなく、女子供に無体なことをすることもなく、寅子のお守りのご加護を小笠原さんに譲って、自分は病死してしまうところが、たまらなく優三さんらしい。
(そういえば、法廷劇で「女に弁護士資格なんか取れねーよ」と野次を飛ばした小橋に寅子が飛びかかった時、優三さんが間に入って顔面をひっかかれたこともあった。これも、寅子が加害者とならないための行動だった)
これからの寅子は、日本国憲法という傘の下で、温かい毛布にくるまれて、法律家として生きていくんだね。そして、日本国憲法をきれいな水の源として守っていくんだね。
……それでも、優三さんには生きて戻って欲しかったよね、寅子。
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