ドストエフスキー「弱い心」を読んだ
ドストエフスキーの短編「弱い心」を読みました。
米川正夫さん訳「ドストエーフスキイ全集2」に収録されています。
最寄りの図書館には蔵書がなかったので、近隣の図書館から取り寄せてもらって借りました。図書館ありがたいです。
ドストエフスキーの作品では「未成年」が好きで、特に書き出しがすごく面白いのですが、「原語で読めたらもっと面白いだろうなぁ」と思うくらいには好きな文章が書き連ねられています。
ただ、ロシア人名の特徴や文化的な背景をあまりよく知らなかったため、読むのが途中で難しくなっていきました。そこで、桃井 富範さん著の『すらすら読めるドストエフスキー』を読んだところ、スムーズにドストエフスキー作品を読めるようになりました。
私は電子図書館で無料で借りて読みました。図書館ありがたいです。
さて、今回読んだ「弱い心」ですが、時空を超えて現代の日本でも登場人物の心情を理解できる部分が多いのではないかと思いました。
仕事のプレッシャーから客観的に物事を見ることができなくなり、友の励ましや助けも届かず正気を失っていく、なぜか幸福になるほどそれを享受する資格が自分にないように思えて自分を責める、責任感が強く他人に頼れず、それでいて自己肯定感が低い。
そんな人間の心理が描かれた「弱い心」ですが、自分が気に入った文章を引用させていただこうと思います。
いやほんとそれ。これを手放せれば本当のミニマリストになれる気がする。
たしか登場人物が婚約者に帽子を送るシーンで、「筆者は帽子のことをまだ語っていたい」と記しているのですが、正直「話をすすめてくれ」と思っていたので最後の一文が面白すぎて吹きました。筆者(筆者役)のユーモアセンスが好きすぎた。
間違いない。異論なし。住んでる場所に不満があると毎日少しずつストレスが積み重なっていきます。
こういう、非凡に憧れる凡人の気持ちを言い当てた表現がたくさんあって、自分もちっぽけだけどそれでいいのかもしれないと思える。救われます。
この「空費」という言葉がなんとも的確で好きです。ただ無駄遣いをする「浪費」とのニュアンスの違い、まったく生産的なことをせず時間を過ごすことを表すらしいのですが、使いこなしたい言葉だなと思いました。いや、「空費」という言葉を使いたいがために自分は時間を空費することをやりかねないなと思いました。
これは共感できる人多いのではないかと思いました。自分も会社員時代、双極性障害や子宮内膜症など患いましたが、「これで合理的に休める」という気持ちはありました。子どもが熱を出した時も、「ようやく会社を休める。子どもと一緒にいられる。」と思ったし、夫に海外転勤辞令が出たときは「これで合理的に仕事を辞められる!」と解放された気分になったものです。
誠実で責任感が強すぎるゆえに自滅してしまうのですが、本来は勉強熱心で努力家だからこそ、仕事を任される。だがそれが彼を苦しめてしまう。
努力している人には報われてほしいと思うタイプの自分にはとても心に来る文章でした。
42ページほどの短編なのですが、ぐっとくる表現や面白い表現がたくさんあり、読んでいて飽きませんでした。
また別の作品も読んでみようと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございました。良い一日を。