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着物エッセイ|着物から遠ざかる夏

毎年毎年、最高気温を更新する日本でわざわざ
着物を着るなんてある意味自殺行為に近い。
着物好きの人たちも夏は厳しいという声も多い
私も例外なく暑さに弱いので着物から遠ざかってしまっている。

だが、今年は去年とは違い着る回数を
増やそうと画策していた。

まず、夏に着る物は自分で洗えるもので揃えた
お手入れが〜を理由にしないためである。
そして、着物ではなく浴衣を選択。
これは少しでも涼しく過ごせるようにするためだ。浴衣なら1枚で着ることが出来る。

この万全な装備なら、着ようとか思えるかもしれない、いや着る。
そんな決意を胸に夏を迎えた。

が、現実はかくも厳しい。
まだ7月だというのに暑すぎる。
真夏日どころかチラホラ猛暑日を超える日もある。
おまけに夏風邪を引いてしまい、体調も不安ときた。
着ようと思っていたお出かけも風邪でなくなり、次はいつ着ようか‥と考えているが、なかなかタイミングがない。
家から出たくないなぁ、なんて元も子もないことを考えてしまう。
このままでは去年の二の舞になってしまうではないか。
心の中でペチッと尻を叩き、このままでいいのか、予定がないなら作ればいい!とツッコミを
入れつつクーラーの効いた部屋で着れそうな予定を考える。

とりあえず、あの浴衣を着て‥と考えていると
やはり着て出かけたくなってくる。
多少暑かろうがなんだ、お洒落は我慢と言うではないか、どうせ何を着ても暑いのだから着てやろうではないか!と強気になって来た。
ヨシヨシ、このままの調子で週末にでも着られれば‥と気持ちは浮き足立ってくる。

そろそろ洗濯物を取り込まないと、とベランダに出た。全身をスライムの様な湿気が包んでくる。纏わりついてなんとも気持ちが悪い。
大して動いてないのに汗がじんわり滲んでくる。
ああ、やっぱり着物を着るなんて厳しいかもしれない‥なんて弱気になる気温と湿気。
先程の意気込みは何処へやら、今年もやはり
着物からは遠ざかるかもしれない。
そんなことを思っている弱気な私を夏の夕日が見ていた。


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じゃのめ
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