『星獣戦隊ギンガマン』レビュー・批評前夜祭考察(1)〜1クール目をサンバッシュ魔人団以外が相手していたらギンガマンは詰んでいたのか?〜
さて、このまま順当に行けば2月から『星獣戦隊ギンガマン』のYouTube配信が開始となりますが、ここでは以前から熟成させた下書きを少しずつ本レビュー・批評へ向けての取っ掛かりとして書き下ろします。
あくまでも叩き台としてということで本稿ではないのですが、「ギンガマン」でこれまで良くも悪くも語られていた争点に対して「本当にそうか?」ということからツッコミ系考察を入れるものです。
今回はその第一弾として、「四軍団の力の差」という、一部のノイジーマイノリティなお頭の弱いオタクの方々が鬼の首を取ったかのように行っているくだらないツッコミに関してを考察していきましょう。
というのもね、「習慣鷹羽」さんが「ギンガマンの失敗は四軍団に力の差をつけすぎたことだ」と言っているのを間に受けて、それを後見肯定の虚偽という詭弁でありもしないことを書き出すバカが多いから。
テーマは「1クール目をサンバッシュ魔人団以外が相手していたらギンガマンは詰んでいたのか?」であり、なぜ「1クール目なのか?」というと、何度も言っていますがテレビシリーズは初期1クールが命です。
物語・キャラクター・世界観などあらゆる基礎設計がなされていくのが最初の1クール、特にパイロットの1・2話でどれだけクオリティーの高いものを提供できるかが鍵となるのです。
ギンガマンの各クールで行われるイベントを箇条書きしてみると以下の通りです。
1クール目のイベント・・・バルバン復活・ヒュウガ死亡&リョウマ覚醒・ギンガの森封印・星獣の再来・自在剣機刃奪還&ギンガイオー誕生・鈴子先生登場
2クール目のイベント・・・獣撃棒登場・ブルブラック復活&ブルタウラス誕生・ギンガの光入手・ブルブラック退場&ヒュウガ復活
3クール目のイベント・・・闇商人ビズネラ登場・ギガシリーズ登場・ガレオパルサー登場・ブクラテス退場
4クール目のイベント・・・ブクラテス&ヒュウガ結託・魔獣ダイタニクス復活・ビズネラ退場・地球魔獣爆誕・バルバン壊滅
このような流れになっていますが、この大筋の流れを変えずに1クール目の部分をサンバッシュ以外が担っていたらどういう流れになったのか?を力関係も含めて考察してみましょう。
大前提として押さえておきたいルール
まずは大前提として押さえておきたいルールを提示しておきましょう、というのもこういう考察・批評は最初に「どういう前提で議論を進めるのか?」を明らかにしておかないと、後で文句を言う輩が出てくるからです。
なお、ここでのルールというのはあくまで「劇中の描写」として提示されている客観的な事実を基調とするものであり、決して私個人の一存や気分で決めるというようなものにはしていませんので悪しからず。
そのルールとは「四軍団にさほど大きな力の差はない」です、というのも第一章『伝説の刃』の覚醒したリョウマが戦うシーンで示されていたように、あそこでギンガレッドは四軍団の幹部を歯牙にもかけず蹴散らしていました。
さらには船長のゼイハブ相手にも強力な炎のたてがみと炎一閃で大ダメージを食らわせて撃退しているので、スペックがどうあれ劇中の描写としてはそんなに四軍団並び幹部連中に大きな差があるようには見えません。
また、こちらでまとめられているように、各幹部の懸賞金はそれぞれサンバッシュが7000G、ブドーが8000G、イリエスが7500G、バットバスが8000Gと、実はあまり差がありません。
懸賞金の数字から判断するのであれば、ブドーとバットバスが同等に強く、次にイリエスで最後がサンバッシュなので、確かに最弱はサンバッシュで間違いはないでしょう。
しかしあくまでそれは「相対評価」としてであって「絶対評価」としてではないし、何より彼らの倍近い懸賞金15000Gの船長ゼイハブを炎のたてがみによって攻略していることです。
ここから察するに、「ギンガマン」において大事なのは「戦闘力それ自体」ではなく、もっと複合的な目的・目標・戦略・戦術・運・属性の有利不利が裏にあるということでしょう。
この辺りはレビューと批評で本格的に語り下ろすとして、とにかくここで大事なのはノイジーマイノリティが突っ込んでいる「四軍団には力の差があったんだ!」という、根拠レスな論調に与せず客観的に見ることです。
常に俯瞰の視点を忘れずに評価を下すようにしていかなければ公正な議論であるとは言い難いので、このルールを大前提として「各軍団が1クール目でギンガマン相手に戦っていたらどうなるだろう?」を見ていきます。
ブドー魔人衆の場合
まずブドー魔人衆ですが、おそらく1クール目に出てきたとしても2クール目で見せた描写ほどにギンガマンを苦しめることはできなかったでしょう、というのも最初の段階での彼らには「情報」がないからです。
ここでいう「情報」はいうまでもなく「ギンガの光」に関する情報ですが、ブドー魔人衆並びに四将軍はあくまで「ダイダニクス復活」と「ギンガの光入手」という目的と目標があって、そこから逆算的に戦略・戦術が割り出されていました。
逆に言えば、それがなかったら一見理性的に思える彼らの戦いぶりもサンバッシュ魔人団と大差ないチンピラ同然の動き方になるでしょうし、どれだけ冷静沈着に見せていようが根っこはあくまでも「海賊」です。
ブドーに関してもギンガレッドとの一騎討ちで負けた展開を見ればわかりますが、冷静沈着のようでいて根っこはあくまでも命尽き果てるまで虐殺行為を楽しむ悪辣な外道の本性が露呈していました。
ということは、1クール目に「ギンガの光探索」という大筋での方策がなかったとしたら、どれだけ高い戦闘力・スキル・知性を誇っていたとしても、その隙を突かれてギンガマンに惨敗する可能性は大いにあったのです。
また、ブドーの性格はとても慇懃無礼であり、ブルブラックが復活した第十八章以降で露呈していましたが、ゼイハブ・シェリンダをはじめ割と周囲からの反感や顰蹙を買っていたところが散見されています。
これは社会に出て実際に経験してみるとわかりますが、どれだけ高いスキルがあって仕事で結果を残せたとしても、人間関係の上で問題があるとうまくいかないことは多々あるものです。
ブドー並びに彼の配下の者たちはそういう意味で「仕事はできるが好感度は得られず吊し上げに遭いやすい」という意味で、2クール目のあのタイミングでしか使いようがありません。
ゼイハブがトップとして配下の者たちに命じているのはあくまでも「魔獣の復活」であり、ギンガマンや星獣・地球を星の命に変えることはあくまでその先にあるものとしか考えていないのです。
ブドーは残念ながらそのゼイハブの考えが読めていながらも、やることなすことの全てが結果として事後報告になることが多く、だから先陣を切ってもブクラテスとイリエスによる失脚は免れなかったでしょう。
ギンガマンが詰む要素があるとすれば四章軍のところでわずかにあるかないかくらいであり、逆に言えばそこ以外でギンガマンが負けそうな要素は特にありません、獣撃棒開発や強化ならあっさりモークの方でできるでしょうし。
星獣が銀星獣になれないことが引っ掛かり要素としてはありますが、第十七章を見るにギンガイオーにならなくても普通の星獣でギンガレオン抜きで倒していたので、巨大戦で詰む要素もあまりなさそうです。
イリエス魔人族の場合
次にイリエス魔人族ですが、これに関してもぶっちゃけ出たところでそんなに大きな差があるとは思えないのですよね、3クール目を見るとギンガの光とかなしでも普通に倒せるような感じでしたし。
第三十四章を見ればわかりますが、イリエスが厄介なのは自分も含めて死んだ者の魂を宝石にしたり、あるいはその怨霊を糧にしてパワーを膨らませることができてしまうところです。
ギンガマンの転生を無効化する結界を作り出したり幻術で惑わせたりと厄介なことをしていますが、物理攻撃に関しては圧倒的に弱いという典型的なRPGの魔法使い・召喚士の弱点を地で行く存在して描かれています。
実際、あれだけ強力な結界を張って厄介なことをしたにも関わらず、生身のリョウマにあっさり触手を斬られて足蹴にされた挙句、結界を作り出した柱を簡単に一刀両断にされてしまったわけですから。
たまたま3クール目で描かれてあの展開だったから強そうに見えるだけで、イリエス並びに彼女の配下は「幻術・魔術には強いが真っ向勝負で戦ったら物理的に弱い」ということです。
「ONE PIECE」でいうところのナミやロビンみたいなのもので、腕っぷしで男性陣には劣る女性陣は基本的には天候を操ったり関節技を極めたりする形でしか男性陣に対抗する手段がありません。
これは古今東西変わらない性区別(差別ではない)であって、シェリンダがギンガグリーン・ハヤテに一騎打ちで負けたのと似ているのではないでしょうか。
仮に参謀としてブクラテスが加わって結託したとて、ブクラテスはサンバッシュの件然りヒュウガの件然りビズネラに比べたら脇が甘い上に身内の贔屓が入って自己保身に走る展開は変わりません。
だから、3クール目の展開をそのまま1クールに持ってきたところで、結局のところはイリエス魔人族では盛り上がりとしてはどう考えてもサンバッシュ未満にしかなり得ないのです。
これは改めて本レビューで書こうと思っていることですが、「ギンガマン」という作品の難を構成上で敢えて挙げるとするなら、イリエス魔人族が持つインパクトの弱さというのはあります。
仮に間接的な魔法などでギンガマン側を苦しめることが可能だったとして、じゃあそれでギンガマンが詰む決定的な要因になるかというと、ゼロではないでしょうが100%そうなるとも断言できません。
むしろ、下手したらサンバッシュよりも悲惨なことになっていたかも知れず、そう考えると3クール目以外のところで出していたら、ただでさえ苦し紛れで中弛み気味だった個性の弱さが決定的な作品としての瑕疵になっていたでしょう。
バットバス魔人部隊の場合
最後にバットバス魔人部隊を考察しますが、これもやはりブドー魔人衆と同じで、サンバッシュ魔人団と大差ないかそれ以上の醜態を晒してギンガマンにその隙を突かれ弱みが露呈していた可能性があるでしょう。
4クール目でなぜバットバス魔人部隊がゲルショッカーやデルザー軍団ばりの最強軍団に見えていたかというと、それはあくまで船長ゼイハブの贔屓とビズネラという参謀がいたからということを抜きにしては語れません。
バットバスはサンバッシュとは違って隠し事をせずブドーのような可愛げのないタイプでもなく、またイリエスのような執念深さや腹黒さがあるようなタイプでもないので、最も素直で信頼がおけると言えます。
しかし、逆に言えばパワーに全てを振り切っている脳筋でもあるため、有能な参謀タイプをつけないとうまくかないし、実際ビズネラを裏切って失ってからの彼は完全にうまくいかず、その最期はそれに相応しい末路が用意されていました。
各魔人部隊を見ていても、頑丈で破壊力があることは窺えるのですが、例えば第三十七章のゴビースのようにギンガマン側の戦術をコピーしてもあっさり対策を練られて負けてしまっています。
また、第四十八章を見ていてもわかるように、超装光なしの普通のギンガイオーによる銀河獣王斬りでも負けていたことを考えると、意外と1クール目に出てきてもギンガマンが詰む決定的な要素はありません。
確かにバットバス自身はギンガマンに対してパワーで圧倒していましたが、それも何だかんだ星獣さえいればなんとかなってしまうのではないかとイメージできる辺り、サンバッシュと大差ないのです。
サンバッシュとの違いは物理的な強さに振り切っていることですが、こんな脳筋を穴だらけの知恵袋である樽爺がうまく扱えたか?とういうとそうは思えず、やはり4クール目に持ってきて正解でした。
元々、ギガシリーズ=鋼星獣も銀星獣もなく五星獣のみで戦う構想があったことを踏まえると、結果的に星獣の数が増えて大所帯っぽくなっただけで、それがなければ五星獣のみで戦う作劇を貫いたでしょう。
髙寺成紀も小林靖子も徹底した職人気質の天才ですから、そんな人たちが田崎竜太・長石多可男辺りの有能な演出家と組んで連携をうまく取っていれば、そういう構成にもできたはずです。
結果的に出来上がったものがたまたまあのような形になってしまっただけで、別にサンバッシュ以外を最初に持ってきたとしてもそれなりに盛り上げる工夫はできたでしょう。
ただし、サンバッシュ以外の幹部連中並びに軍団を最初に持ってきてうまく盛り上げられるかはまた別問題であり、そういうことを色々考えた結果としてあのスタイルが一番映像作品として違和感のない出来だったはずです。
まとめ
改めて「四軍団の力の差」という一部の口うるさい特撮オタクが馬鹿の一つ覚えみたく語っている「ギンガマン」の批判点とやらに関して考察してみましたが、ぶっちゃけ書いてて我ながらアホらしくなりました(苦笑)
劇中の描写を総合して見れば、やはりサンバッシュ魔人団以外を最初に繰り出して年間の作劇を持たせるのは無理があったわけで、俯瞰で考察すると意外と戦闘力や軍団としての格差はそこまでありません。
というか、そういう目につく描写だけを主観的に鵜呑みにして雑に語れてしまうほど「ギンガマン」は決してヤワな作品ではなく、意外ときちんと骨子の部分から考えて強固に作られているということです。
親友の黒羽翔に以前このテーマでLINE通話した時に「意外と変わらないんじゃないかな。結果としては大差ないと思うよ」と言っていたのですが、実際こうして考察してみると本当にその通りでした。
皆さんはね、社会に出て働くと身に沁みてわかるでしょうが、どれだけ優れた力・才能・スキルを持っていたとしても、それを適材適所で有効活用しなければ単なる「才能の無駄遣い」でしかありません。
そういう意味では「ギンガマン」が結果的にサンバッシュ魔人団を最初に持ってきて、ブドー→イリエス→バットバスという順に持ってきたのはゼイハブの経営判断としても、また当時の作り手の判断として極めて正しかったと言えます。
何よりも天才である全盛期の髙寺成紀と小林靖子を中心とした作り手がそういう「他のパターンはどうだろう?」を考えなかったとは思えず、視聴者がツッコミそうなことなんて全部想定の上であの構成と作劇にしたのではないでしょうか。
異論があるというのであれば、最低でもこのくらいは掘り下げて劇中の描写しっかり吟味した上で反論して欲しいところですね。
これらを踏まえた上で、何か異議申し立てはありますか?