スーパーロボット大戦30周年企画・ロボアニメレビュー4作目『ゲッターロボG』(1975)
前作「ゲッターロボ」で大きな手応えを掴んだ本作は玩具のスポンサー事情で急遽続編を作ることになりました…まあ「グレートマジンガー」と同じですね。
ちなみに企画の段階では初期案としてムサシだけではなく流竜馬も死なせて、新メンバーに来栖丈という新キャラクターを持ってくるつもりだったのだとか。
それで隼人だけが残るというものだったそうで、思えば石川漫画版で隼人だけが最終的に置いていかれるのはもうこの時からすでにそういう運命だったのかもしれません。
そんな経緯で作られた本作ですが、正直なところ個人的には「好き」ではあるけれど「評価はまずまず」というところですね。
まあ「グレートマジンガー」よりもマシだなと思ったのは主人公を最後で死亡したムサシ以外交代させずに作ったことであり、これだけでもだいぶ違います。
既存メンバーがきちんといてくれるかどうかの違いは大きく、やはり突然の主役交代みたいなことをしてしまうとファンからも顰蹙を買いますし、どう話を作ればいいか難しいですしね。
その点本作は入れ替わってもそんなに支障がないムサシが弁慶に入れ替わるだけで、竜馬と隼人らレギュラーメンバーは基本変わらないので安心して見られます。
それから、ロボットのデザインを前作から大きく変えて宇宙用から完全な戦闘用にゴツくしたことで、大きな差別化を測ったのはとてもいいところです。
それから、敵組織の百鬼帝国も個人的には好みの敵ではないのですが、デザインや造形自体はなかなかしっかりできていて、ミケーネに比べたらマシだと思います。
スパロボシリーズで戦っていることもあってか、個人的には結構好きな敵組織で、特にIMPACTでの決戦編あたりはきちんと原作再現しててよかったなと。
現在はなんか中途半端な立ち位置になっていて、最終的に真ゲッターロボへの繋ぎみたいになってて中途半端な位置付けになってしまいました。
まあその後「ゲッターロボ大決戦」「スーパーロボット大戦T」で完全上位互換の真ゲッタードラゴンが出てきたので、またもや復権を果たしましたが。
とにかく、作品のクオリティは置いておくとしても、同じ続編の「グレートマジンガー」よりは安定感があって好きです。
そんな本作の魅力について漫画版との比較も交えつつ語っていきましょう。
(1)安定しすぎているゲッターチーム
これはいい点でもあり、ある意味悪い点でもあるのですが、「安定しすぎているゲッターチーム」というのが本作の1つの特徴です。
アニメ版・漫画版ともにゲッターチームのキャラクターがしっかりしていて、そつなく戦っている反面前作に比べたらやや物足りなさも感じます。
この辺りは続編ものの難しさなんですが、前作のゲッターチームはアニメ版も漫画版も戦いの中で結束力を強めて成長していく竜馬たちが魅力的でした。
時にはスタンドプレーで立ち向かうこともありましたし、メンバーが自分の未熟さでピンチを招くなどして、その度にピンチを乗り越えて成長しているのです。
その点、本作の竜馬、隼人、弁慶は最初からチームとしてのまとまり具合がいいので、最初からほぼ充実した戦力で戦えているというのがあります。
何より弁慶が天才すぎるので、大体のピンチを「弁慶が天才だから」で乗り切ることが多く、これもまたムサシとは正反対のキャラ付けです。
弁慶ってスパロボだと熱血補正でもかかっているのか、物凄く熱い努力家みたいに描かれていますけど、原作ではアニメ・漫画どちらも天才なんですよね。
アニメ版だけを見ても竜馬と隼人が音を上げる訓練にも飄々とこなし、さらにはポセイドンの操作とプラモ飛行機の操縦を同時にこなしています。
こんなことができる時点でどう考えても天才としか言いようがなく、だからこのゲッターチームには弱点と呼べる箇所がどこにもありません。
もちろん敵が誘惑をかけてくるとか、とんでもない戦闘力の兵器を持ってくるとかで敵わないことはあっても、自分の未熟さからピンチを招くことはないのです。
この辺りは「グレートマジンガー」がやらかした部分でもあったのでしょうけど、いわゆるプロフェッショナルな戦いという意味では本作の方が描けていました。
ゲッターチームが恐竜帝国との死闘を乗り越えて強くなっていることで、弁慶という新米が入っても安定して強いことに違和感がないのです。
ただ、これは同時に作劇としては1つの面白みのなさに繋がってもいて、チームが強いなら強いでもっと高いハードルを見せてくれと思ってしまいます。
竜馬だってせいぜい内面を掘り下げたといえるのが父親がらみくらいで、それもそんなに劇的といえるほどのエピソードではありませんでした。
ドキドキハラハラがない分安定感はあるのですけど、もう少しそこから身を離して次の面白さを追求してもいいと思うのです。
(2)大幅に進化したロボアクション
前作との差別化としてお隣の「グレートマジンガー」と比べても進歩したのがロボアクションであり、これに関しては本作最大の美点です。
デザインが洗練されたのもありますが、ゲッタービームが腹からではなく額から出るというのも渋くかっこよくなりました。
また、断然かっこよくなったのがライガーとポセイドンであり、これはゲッター2、3に比べると本当に良くなっています。
ゲッター2、3はアクションはともかくデザインとしてはゲッター1に比べてかなり劣るデザインだったため、その分を動きなどでカバーしていました。
本作のゲッターライガー、ゲッターポセイドンはその点を大幅に変え、例えばライガーはドリル以外にミサイルなども出せるようになっています。
そしてポセイドンもまたゲッターサイクロンやフィンガーネットなどゲッター3の時にはなかった新武器を出してさらに改良しているのです。
なおかつ空中戦にもそれなりに対応しているので、序盤は逆にドラゴンの立ち位置が微妙という感じにはなりますが、そこで中盤に大きな強化があります。
そう、スパロボシリーズでもゲッターを代表する必殺技の1つである「シャインスパーク」であり、これは以後の作品にも継承されていく最高のフィニッシュ武器です。
まずシャインスパークは3人で一斉にペダルを踏まないと発動しないようにできているのですが、このことによってゲッターチームの結束力を高めています。
まさに「3つのこころが1つになれば1つの正義は百万パワー」を体現しており、大きなリスクを背負ってやっているというところがいいのです。
「α外伝」ではこの「ペダルを踏みタイミングを合わせるんだ!」のくだりがしっかり再現されていて、まさにゲッターチームらしさを象徴しています。
石川先生の漫画版では最後のトドメに使っていますが、何れにしてもこういう体当たり系の必殺武器を確立したのは大きいのではないでしょうか。
例えば「ライディーン」のゴッドバードや「コン・バトラーV」の超電磁タツマキ、また「Gガンダム」の真流星胡蝶剣などもシャインスパークの延長上にあります。
また、のちにスーパー戦隊シリーズで時々使われる5人1丸となっての体当たり系の技もその大元はこのシャインスパークの系譜でしょうしね。
だから、「すべてのエネルギーを身にまとって敵にぶつける技」の元祖としてあらゆるところに影響を与えているのです。
本作のロボアクションはそういった意味で、前作から強化しただけではなく、後世の大きなモデルともなっています。
(3)いまいちよくわからない百鬼帝国
これはアニメ・漫画に共通していることなんですが、百鬼帝国がどういう敵組織なのかがいまいちよくわからないというのが挙げられます。
まあ百鬼帝国の正体に関してはのちに石川先生が「真ゲッターロボ」「ゲッターロボアーク」で明かしていますが、本編だけだとわかりません。
なぜゲッターチームが相手する敵が「鬼」なのかがわからず、このあたりはもう少しバックボーンの掘り下げが欲しかったところです。
前作の恐竜帝国がキャラ付けといいバックボーンといい、非常にしっかり考えられていたので、百鬼はどうもその辺がフワフワしているのですよね。
個々の幹部や敵で見ていくと、明らかにヒトラーそのものであるヒドラー元帥とか胡蝶鬼とか、個々で好きな敵幹部はそれなりにいます。
それからブライ大帝もデザインや演技は好きですし、キャラクターも帝王ゴールとはまた違うカリスマ性があって存在感がありました。
ただ、個々のキャラは好きでも組織全体としての理念などがいまいち見えにくく、また百鬼メカのデザインや能力が今ひとつパンチに欠けます。
恐竜帝国はその点「人類を滅ぼして地上の支配者に返り咲く」という単なる「世界征服」を目的としてないところが面白かったのですけどね。
恐竜帝国が面白かったのは善悪を超えた「生存競争」のために動いているからであり、そのためにゲッター線に選ばれなかったという生物の進化論みたいな設定が絶妙でした。
しかし、百鬼帝国はその点ゲッター線との関わりが薄く、行動目的もありがちな悪の組織のテンプレートの域を抜けるものではなかったのです。
そのため、個人的にはどうしてもゲッターチームと百鬼帝国とが今ひとつ噛み合っておらず、そのあたりも物語として盛り上がりに欠ける理由かもしれません。
やはり「マジンガーZ」しかり前作の「ゲッターロボ」しかり、大人気作の続編を作っていく上で敵の設定を変えるのがどれだけ難しいかを思い知られます。
(4)やはりこちらも漫画版の方が面白い
そして前作もそうだったのですが、この「ゲッターロボG」に関しても正直漫画版の方が発想にひねりがあって面白くするための工夫が凝らされています。
例えば漫画版では恐竜帝国との戦いに横槍を入れたり、また漫画版の隼人の設定である学生運動のネタを伏線回収して面白いドラマを作り上げているのです。
その他人間の愚かしさなどを指摘するような話もあって、恐竜帝国の「生存競争」とはまた違った「人間の心の醜悪」という存在感を打ち出しています。
こちらでも幾分マイルドになっているとはいえ、石川先生らしく重たい設定やドラマを入れることで戦いが薄くならないようにしているのです。
そして漫画版「ゲッターロボG」の見所といえば、なんといっても海の中からウザーラとともに腕組みで現れるゲッタードラゴンにあります。
この腕組み描写はのちに「ガイナ立ち」として「ガンバスター」「グレンラガン」などに用いられますが、「Gガンダム」でもゴッドガンダムやマスターガンダムがやっていましたね。
こうした1カットで受け継がれていくシーンを作ってしまえるのはそれこそ石川先生の構成力と画力の賜物ではないでしょうか。
しかもこのウザーラの設定自体もまた面白く、無敵を誇るゲッタードラゴンを赤子扱いしてしまうのですから、今扱ったら強さのインフレなんてレベルじゃありません。
それから上記したように、漫画版だとシャインスパークを最後にトドメとして使うので、中盤くらいで出てきたアニメとは違ってまさに真の必殺技なんですよね。
この辺り漫画版は玩具販促とかをあまり気にせず描けるのもあるでしょうけど、かなりアニメ版に比べてのびのびと自由に物語を展開していた印象があります。
全体としては非常に高いクオリティとしてまとまっていて、無駄がないのでどうしても総合的な完成度は前作も本作も漫画版の方が好みです。
(5)「ゲッターロボG」の好きな回TOP3
それでは最後にゲッターロボGの好きな回TOP3を選出いたします。
第3位…34話「危うし!百鬼三兄弟」
第2位…15話「赤い蝶のバラード」
第1位…21話「大決戦! シャインスパーク」
まず3位は終盤の傑作の1つであり、三兄弟とゲッターチームをしっかり対比させつつ、緊張感のある戦闘シーンを入れていました。
次に2位はスパロボシリーズでもお馴染み胡蝶鬼の名編であり、ミユキとはまた違う心の醜悪に突っ込んで見ごたえあるドラマを展開しています。
そして堂々の1位はシャインスパーク初登場回であり、隼人が足を負傷するというリスクを背負いながらのシャインスパークが最高です。
全体的にはまずまずの回が多い本作ですが、中でもこの3本は未だに大好きで、よく見返します。
(6)まとめ
前作「ゲッターロボ」の成功を踏まえつつ、「変える部分」と「変えない部分」の取捨選択は「グレートマジンガー」に比べるとできています。
また、ロボアクションで大きな進化を見せて差別化を図ってきたところも、よくできているのではないでしょうか。
その反面、百鬼帝国という敵組織のバックボーンやゲッターチームとの噛み合わなさなど物足りなさも感じます。
総合評価はB(良作)、流石に前作のハードルは高過ぎましたが、それでも一定以上のクオリティは保たれていました。
ストーリー:B(良作)100点満点中70点
キャラクター:C(佳作)100点満点中60点
ロボアクション:S(傑作)100点満点中100点
作画:C(佳作)100点満点中65点
演出:B(良作)100点満点中70点
音楽:A(名作)100点満点中80点
総合評価:B(良作)100点満点中74点
評価基準=SS(殿堂入り)、S(傑作)、A(名作)、B(良作)、C(佳作)、D(凡作)、E(不作)、F(駄作)、X(判定不能)