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栗原はるみさんのシフォンケーキ

台所作業をするときにはスマホでドラマやTVを見るのが習慣になっている。TVの音声はキッチンまではっきり聞こえないし、自分の見たい番組を見ることができるのがなにより便利。

前の金曜日はNHKプラスの画面で見つけた「グレーテルのかまど」を見ていた。人気料理家 栗原はるみさんのスパイスシフォンケーキ。「グレーテルのかまど」は本や物語に登場するレシピを作る番組だったと記憶していたが、今では著名人の思い出深いレシピも取り上げているようだ。栗原さんがシフォンケーキをスタッフに振舞う姿に続き、シフォンケーキを作る光景が映し出された。卵をまぜ、粉を振るい入れ、ボールを逆さにしても落ちない角が立った卵白を混ぜいれシフォン型に流し込み大きなオーブンで焼く。そのシルバーのオーブンは丸いダイヤルがドア上部に2個ついた家電売り場で見かけたことのないタイプだった。気になって画面に近づく。アルファベット3文字「AEG」がかろうじて見えた。プロ向けのオーブンだろうか。我が家のオーブンは温度がいまいちなのか焼き時間がレシピの指定より長くかかることが多く、栗原さんが使っているオーブンが気になったものの、番組の続きも気になったのでそのままシフォンケーキが出来上がるのを見続けた。

お菓子を始めた中高生の頃、家にはオーブンがなくトースターだと焼けるお菓子も限られるため、オーブンを持つことに憧れがあった。そのうち、母が「行きつけの喫茶店がコンベクションオーブンを処分しようか迷っているらしい。譲ってもらう?」と言ってきた。すぐ「欲しい!」といったかどうかは覚えていないが、しばらくしてそのコンベクションオーブンがやってきた。庫内が電子レンジより広い大きな若草色のオーブンだった。台所には置くスペースがないので、家の中ではなく農作業小屋の一角に置いてくれた。高さがあるオーブンなのでケーキの型もすんなり入る。庫内の温風を回す「ゴォーっ」と音が鳴るのが頼もしい。ただ、焼き加減を見に行くのに家と小屋を往復するのが少し面倒だった記憶がある。

今思えば、母はあの農作業小屋に電源やオーブンを載せる台をどこから工面したんだろうか。栗原さんのオーブンは、手作りらしき棚の下にこれまたオーブンとぴったりサイズに作られた平台車の上に載せられていた。栗原さんの旦那さんが買ってきてくれたという大きなオーブンをまだ使っているのか分からないが、なにかしら工夫をして使っている様子が伺えた。栗原さんはこのシフォンケーキを一万回は焼いたという。毎日焼いたとしたら27年ちょっと。私の場合オーブンが手に入ってもたまにしか作らなかったのですごく上手に作れるようにはならなかったが、家庭で食べる分には問題ない程度に上達した。熱中したらまた変わっていただろうか。いや、作りまくって太っていただけのような気がする。

実家に帰ったらあのオーブンはまだある気がする。今度見てみよう。

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