「あと何回 君に会えるんだろうって」
あの日の『あと何回』は、今までで1番沁みた。
ライブの度に、そのとき自分の中にある感情と混ざりあって色が変わる楽曲。
元々音楽はそういうものであるが、特に『あと何回』ではいつもそう感じている。
9月27日の昼。悲しいニュースが流れてきた。
とある有名アーティストがこの世を去ったという。
信じられなかった。
僕は彼女のファンだったわけではないが、彼女が慕うアーティストや彼女を慕うアーティストを応援しているため、ずっと気になる存在だった。
今年2月には対バンライブを観に行き、その歌声と楽曲のメッセージ性に「天才だな」と衝撃を受けたばかり。
あの日、彼女がステージ上で憧れのアーティストに抱きついていた姿が鮮明に思い出される。
僕と同学年。
1人の人生が終わってしまったという事実。
自分でも驚くほどに落ち込んだ。
元気をもらいに行くための元気も無くなった僕は、行くはずだったライブを2つほど飛ばした。
どんな顔して推しや仲間と話せば良いのかも分からなかったので、これで良かったと思っている。
SNSやニュースサイトを開いても彼女のニュースが目に入ってしまうので、なるべく開かないようにした。
僕は好きな音楽を聴きながら、流れていく時間に身と心を委ねた。
そして迎えた10月2日。
momocaさんバンド主催ライブ開催日。
「次の主催までには書きますね」
とmomocaさんに約束していたので、力を振り絞って9月のライブレポートを書いて投稿。
「ちゃんと書けたかな?」、「もっと早く書けば今日の宣伝にもなったのにな」という思考が頭の中を駆け回ったが、そんなこと考えても今さらである。
ひと仕事終えた僕はシャワーを浴び、吉祥寺に向かった。
僕はこの日がずっと楽しみだった。
モモカルテットはもちろん、対バン相手のライブが観られるのも楽しみで仕方なかった。
絶望に沈む数日間を過ごした僕。
そんな僕にとって「生きる理由」と言っても過言ではなかった。
ライブはトッパーのASH FRASTから盛り上がり、フロアの熱量はどんどん高まっていった。
音楽のおかげで無心になれた。
月照ラスとSTART TO BLINGの熱いライブも終わり、いよいよモモカルテットの出番。
ライブタイトルに「vs」と入っているので、この日は他のバンドに負けじと激しい楽曲を揃えてくるだろうと予想していた。
しかし、予想は外れた。
4曲目に演奏されたのは『あと何回』だった。
「大好きな人に会えるのは、大好きな歌を歌えるのは、人生であと何回あるのだろうか?」
そんなmomocaさんの想いが込められたバラード。
エレキギターとベースでしっとり始まり、サビからドラムが入って壮大になっていく構成。
バンド生演奏ならではのアレンジだった。
「momocaさんがこうして歌を届けてくれるのって、凄いことなんだよな」
日頃から感じていたつもりだったが、この日のライブではいつも以上にそう思った。
伸びやかなハイトーン。
楽曲のメッセージ性。
素晴らしいアレンジ。
ここ数日間ずっと抱えていた感情と相まって泣きそうになった。
視界は涙で少しぼやけていた。
屈折しながら入ってきたのは、キラキラとした照明と、その中で楽しそうに歌うmomocaさんの表情だった。
ありがたくも最前列の真ん中でライブを観させてもらっていたのだが、目の前で泣き顔を見られたくなかったので必死に堪えた。
僕は全く動けなくなった。
それほどに感動する時間だった。
結局、僕は音楽が大好きで、ライブが大好きで、momocaさんが大好きなんだと再認識した。
『あと何回』に「少しだけでも光になっていたい」というフレーズが出てくるが、momocaさんの存在は僕にとって大きな希望の光になっている。
生きていると色々なことがあるけれど、立ち止まったり諦めたりしては勿体ない。
それも今までmomocaさんがライブを通して、何度もファンに伝えてくれていたことだ。
momocaさんの歌が聴ける幸せをしっかり噛み締めながら、1回1回を大切に、これからもずっと応援していきたいと思う。