生の憂愁
雨上がりの林道を僕らは歩いていた。
熱っぽい僕の手を程良く冷えた君の手が包んでいた。
裕福ではないが、僕らの心は満ちていた。
鮮やかな緑の中、僕らの心は幸せだった。
永遠の中の一瞬が淡く光っていた。
淋しさの中の灯りは点っていた。
2人の一瞬は思い出となり永遠の中に溶け込んでいた。
珈琲にミルクを垂らしたように薄く波紋が広がってゆくようだった。
淋しさも悲しみも君となら乗り越えられる。
いつまでも2人手を繋いでいよう。
神様はきっと2人に微笑みかけるだろう。
いつか訪れる別れは一瞬であるだろう。
君は僕の手をきつく握って優しく微笑む。
生の憂愁は林道の中で煌めいている。