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こんな本を読んだ 番外 私が好きな人 女性篇 1 小川洋子
【結論】すぐれた書き手はすぐれた読み手
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以前の番外篇(⇒こちら)の「私が好きな人」で男性3名をご紹介しました。今回は女性編。
女性に対して「好きな人」といってしまうと少々語弊がありますので、ここでは尊敬または敬愛する人といった方がよいかもしれません。そんな方を取り上げてみました。第一回は芥川賞作家 小川洋子さん。私がもっとも信用する作家の一人です。
小川さんがパーソナリティをつとめた東京FMの番組「パナソニック メロディアック ライブラリー」が、本年3月で終了しました。15年も続いていたのに、本当に残念です。
選ばれた名著、的確な解説、小川さんのここちよい声。大好きな番組でした。この番組をもとにした本も出版されています。
小川さんが自身の読書体験を語った記事があります(⇒こちら)。
それによると、小学生のころ「世界児童文学全集」を読み、『家なき子』や『小公子』、『小公女』などに親しんだとのこと。また、図書館で借りた『赤毛のアン』や『長くつ下のピッピ』、『ファーブル昆虫記』や『シートン動物記』などをよく読んだそうです。
中学になって『アンネの日記』に出会い、小川さんが作家になるきっかけとなります。そのときは少しむずかしく感じたものの、16,7歳でもう一回読んだ時に、すごく共鳴したんだそうです。
自分の内面を言葉で表現することが、自分に与えられている自由のひとつだ、ということを教えられました。自分にも“書く”という手段があることを発見しました。それが、今の自分に繋がっているんでしょうね。
18歳のときに金井美恵子の『愛の生活』に出会います。
これを読んだ時、あ、自分もこういうものが書きたい、とはじめて思ったんです。真似をしたいという訳ではなく、自分の理想とする作品を探していたなかで、ようやく手応えをつかんだな、と。
また、大江健三郎の『死者の奢り』、村上春樹の『蛍』を読み、作家は生きている人ばかり見ていてはいけないんだ、ということを教えられます。
実は生きている人間の中に死んだ人間も混ざっているんだ、作家は生の世界と死の世界の、中間地点のような場所に立たなければ書けないな、と教えられたんです。
さらには、アヴィグドル・ダガン『宮廷の道化師たち』、ヴィクトール・フランクル『夜と霧』などのホロコースト文学も深く読まれているようです。
このような読書体験が、小川さんの独創的な作品群に根源的な影響を与えているのだと思います。
ものを書く人は誰も書いたことのないものを書こうとして書くんだと思うんですけれど、でも必ず、自分もこんなものが書きたいという欲望がどこかにないと、書けないと思うんです。誰も書いたことのないものを書こうという気持ちと、こんなものが書きたいという気持ち、その両方がないと第一歩が踏み出せないような気がします。
本をたくさん読んでも、だれもが作家になれるわけではありません。なによりも「書きたいという気持ち」が強くなければならない。
そして、多くの作家に共通していることは、よく読んでいるということでしょう。
結論。すぐれた書き手はすぐれた読み手。
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