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#107 百鬼堂農園(39) 雪と泥と衣替え
畑に出るのも億劫になってまいりました。農園仲間の同僚に聞くと、冬の訪れとともに、もうすっかり畑は片付けてしまったとのことだ。
秋冬の農作業は、フィルム状の内張りがはがれてきたノースフェイスの薄手のジャケットを着ていたが、それだけではさすがに寒くなってきた。主に通勤用として3シーズンほど着倒して、ファスナーの調子が悪くなってきたユニクロのハイブリッドダウンパーカを、農作業用にまわすことにした。泥がついても気にしない。もっさりしておらず、軽くて動きやすくなかなかに具合がよかった。通勤用には、少し丈の長い、ハイブリッドダウンコートをセールの日に格安で手に入れた。
うっすらと雪が積もった日の翌日、先日購入した「強力土起こしショベル」を背負って畑に向かった。金属の把手が冷たい。FF7のクラウド以外にこんなショベルを背負っている人間を見かけたら、すぐに距離をおいたほうがいいだろう。だが通報はしないであげていただきたい。
朝から張り切って出かけたが、雪が多少残っており、陽光でどんどん解けている真っ最中だった。こんな環境ではショベルも長靴もぐちゃぐちゃになるのは目に見えていたので、グサッと一度刺しただけで終わりにした。まあ普通のショベルも人生においてそんなに使っているわけではないのでよく分からないけど、うん、よく刺さる気はする。真価が問われるのはこれからだ。
ネギ2本とダイコン3本を収穫して帰る。小さいので収穫は楽だが、ダイコンはあまり長いこと畑に残しておくとよくないとも聞いている。もう少し大きくなるまで、と欲をかいていると、残念なことになるかもしれない。こんど大根と豚バラの煮物を作ってみたい。
冬でも畑に立って野菜に触れると、大地の力のようなものにときめく。また一方、この泥まみれの土地の土壌改良なんてできるのか、と途方に暮れるような思いもある。愛憎相半ばといったところか。未練がましくネギと大根を残してあるが、同僚のように冬の間は畑を片付けて、スッパリと距離を取るのもいいのかもしれない。春が待ち遠しくなるのだろう。