『スラムダンク』から考える、チーム作りと孤独の関係|サイボウズ式編集長・藤村能光×小説家・土門蘭
2019年8月31日、書籍『未来のチームの作り方』(SPA!BOOKS)の発売を記念したトークイベントが「BOOK LAB TOKYO」(東京・渋谷)で開催されました。
登壇したのは『未来のチームの作り方』の著者・藤村能光さんと、書籍『経営者の孤独。』の著者・土門蘭さん。さらに、『未来のチームの作り方』担当ライターの阿部光平さんと、『経営者の孤独。』の企画発起人・徳谷柿次郎も参加。
「孤独という感情は、良いチーム作りに活かせますか」なんてあれこれ4人で話すうちに、なぜか漫画『スラムダンク』の話で大いに盛り上がり……そんな約2時間のイベントの模様をレポートします。
「弱みが見せられない」編集長の孤独
『未来のチームの作り方』著者・藤村能光さん(写真左)と、同書のライティングを担当した阿部光平さん
阿部:まずは自己紹介からやっていきますか。
藤村:はい。サイボウズという会社のオウンドメディア『サイボウズ式』の編集長をしている藤村です。僕、昔は一匹狼で、チーム作りが上手くなかったんです。それでもやっていけるんだよ、という試行錯誤を『未来のチームの作り方』では書いてみました。
藤村:今日は『経営者の孤独。』チームの土門さん、柿次郎さんと一緒にトークさせてもらいます。「孤独」というテーマと「チームの作り方」は相関関係になっていて、お互い学べるものがあると思うんです。今日はその辺を話しましょう。
土門:土門蘭と申します。京都で二種類の文章を書く仕事をしています。ひとつは文芸作品を作る創作の仕事と、もうひとつが人に会いに行って、その人の言葉を文章にする仕事。後者の仕事で本になったのが『経営者の孤独。』というインタビュー集です。
『経営者の孤独。』の企画発起人である徳谷柿次郎(写真左)と、同書の著者・土門蘭さん
柿次郎:株式会社Huuuu代表の柿次郎です。ウェブマガジン『BAMP』の編集長をしていた時に、『経営者の孤独。』の連載を立ち上げました。
企画のきっかけは、前職の社長を見ていて「すごく孤独だな」と思ったからで。人が増えて会社のチームが大きくなるほど、もともと友達だった社員と前のように会話できなくなっていく。その姿が寂しそうに見えたんですよね。いまは自分がその立場なので、「やだな、経営したくないなー」って思ってます。
阿部:経営しなきゃ駄目なのに(笑)。藤村さんは、サイボウズで孤独を感じる瞬間ってありました?
藤村:ありますよ。編集長だから、チームのビジョンを作って引っ張っていかないと!と思ったんですけど、僕が作ったビジョンがなかなか共感されなくて……。
阿部:確か先代の『サイボウズ式』編集長が、ビジョンの強い人だったんですよね。
藤村:そう、大きな方針を描ける人でした。その先代を真似しようとすると上手くいかなくて。「いいリーダーとは」って本をたくさん読んでは「何ひとつ自分に取り入れられそうなことがない。どうしよう?」と悩むばかりでした。そういう時、チームの皆に弱みを見せられなくて孤独を感じたのも正直なところですね。
阿部:なるほど。土門さんは『経営者の孤独。』で10名の経営者の方々にお話を聞いていますが、今の話はいかがですか?
土門:サイボウズにおける藤村さんのやり方は、『経営者の孤独。』でお話をうかがった「矢代仁(やしろに)」の社長さんと似ていると感じました。矢代仁さんは江戸時代から9代続く呉服問屋なのですが、その社長さんに「孤独を感じたことはありますか」と聞いたら、「ない」と言われたんです。
なぜかというと「家訓があるから」と。それは代々伝わるもので、親孝行しなさいとか、仲良くしなさいとか、いわば道徳的な理念の共有なんですね。人としてこの道を行きましょう、という理念があると、どんな人が社長になっても安心感があるとおっしゃっていて。
あっ、ちょっと『スラムダンク』(※1)の話をしていいですか?
(会場ざわつく)
※1 スラムダンク:高校バスケットボールを題材とした井上雄彦による少年漫画(『週刊少年ジャンプ』、1990年〜1996年連載)。不良少年・桜木花道が湘北高校のメンバーらと共にインターハイを目指す。
「大きな軸」があるから、チームが安心する
阿部:唐突! でも、そういえば藤村さんも『スラムダンク』でいうと藤真(※2)がめっちゃ好きって言ってましたね。
土門:ほんとですか!『スラムダンク』でずっと全国1位を獲り続けている山王(※3)って強いチームがいるんですが、それが実は矢代仁さん的だと思っていて。個性豊かな選手が出てくるけど、チームに代々続くひとつの軸があるからブレがなくて、誰がリーダーだろうがあまり関係ないんです。
それに対して、主人公のチームの湘北(※4)はまだできたばかりのヤンキー集団なんです。各々のエゴをぶつけ合いながら、その都度、試行錯誤して目標に向かっているから、すごいムラがある。だから負けちゃったりとか。
土門:山王があんなに強いのは、現代に応用するとサイボウズさんのやり方に近いと思うんです。みんながリモートで仕事をしているけど、会社のグループウェアにアクセスしたらまず最初に理念が書いてある。そんな風に「これをモットーにやっていこうね、後は自由だから」みたいな共通認識があるから、安心して仕事ができるんじゃないかなと。
藤村:なるほど。それを聞いて、実はサイボウズって湘北っぽいなと思いました。
土門:あっ、そうなんですね! 湘北タイプなんですか。
柿次郎:……黙って聞いてましたけど、『スラムダンク』の例え、便利ですね(笑)。
藤村:そうですね(笑)。キャプテンのゴリ(※5)が出した「全国制覇」って大きな目標の元に自立した人たちが集まって、ヤイヤイしながら向かっていく湘北っぽいというか。
というのも、サイボウズはすごくビジョン志向で、「チームワークあふれる社会を作る」という企業理念に共感した人が集まっている。入ってくる人は多様でバラバラだけど、みんな理想や共感が一箇所に向かっているから、どうすればいいかはそれぞれ考えてやろうぜ、って感じの会社だと思うんですよ。
阿部:ちなみに藤村さんは『経営者の孤独。』を読んで、共感するチームや経営者の方はいましたか?
藤村:ぶっちゃけると、『経営者の孤独。』は「自分にわからないだろう」と思って読み始めたんです。そもそも僕自身が経営者じゃありませんし。でも、いざ読んでみると自分の孤独や人とのコミュニケーション、関係性について見直すきっかけになった。いちばん印象に残っているのが「わざわざ」の平田さんですね。自分と似てるなと。
柿次郎:どういうところですか?
藤村:「ひとりになりたい」ってところですね。「50〜60歳になったらひとりでこもって、夫とも会わずにいたい」みたいにおっしゃっていて、「寂しがり屋じゃない、ひとり好き」なスタンスにすごく共感したんです。しかも、ちゃんと経営して成果を出し、良いチームを作っている平田さんが言うのが印象的で。
それを読んで、メンバー同士の距離感はその人ごとに設定したらいいのかも、と感じたんです。僕はひとりの時間がないと潰れちゃうタイプなのもあって。
※2 藤真:神奈川県の強豪校・翔陽高校のキャプテン兼監督。(4番・ポイントガード)。1年生の頃からスタメン入りするほど実力のある選手でありながら、3年生の現在は、兼任監督として戦術面でもチームを率いる。
※3 山王:インターハイ3連覇を成し遂げた、秋田県のバスケ名門校。選手全員が坊主頭なのが特徴で、「高校バスケ界最強のセンター」河田、1年生エースの沢北、「スッポンディフェンス」の一之倉など、各ポジションに超高校級の選手を有している。
※4 湘北:主人公・桜木花道の所属する神奈川県・湘北高等学校。バスケット部はこれまで県予選1回戦敗退の無名校だったが、流川、宮城ら協力な新メンバーの参加や、三井といった旧メンバーの復帰により全国区級の実力を持ったチームに。
※5 ゴリ:本名・赤木剛憲。湘北の3年生で、問題児たちを束ねるキャプテン。勝利への執念は人一倍強いが、ストイックさが空回りし、過去の部員離れの要因となってしまったという面も。選手としても優秀で、そのプレイスタイルから「ゴール下のキングコング」の異名を持つ。
ドライな人でも、リーダーはやれる
柿次郎:突然ですけど、藤村さんって人間好きですか?
藤村:えっ! ……僕、人にあんまり興味がないタイプなんですよ。
柿次郎:やっぱり! なんか「40人の生徒を相手に喋ってる先生」みたいな距離感でずっと話すから、そうじゃないかなと(笑)。僕は逆で、ひとりひとりとウェットな関係になって疲れちゃうんです。
藤村:それで言うと、サイボウズの場合はドライな人でも、ウェットな人でもリーダーをやってもいい。多様な個性を認めていることがサイボウズっぽいのかもしれません。ドライだからチームリーダーに向いてないとは言われないし、認めてくれるんです。自分はウェットにするのが苦手だし。
阿部:いまひとりですごく頷いてたんですけど、『未来の自分の作り方』の藤村さん自身が最初に書いてた原稿は、かなりハウツー色が強かったんです。けど、藤村さんは書き進めるのにすごく苦労していて。
それで連絡をもらって話を聞いてみたら、すごい独りよがりでチームの中で孤立したとか、もっとウェットな部分が出てきたんです。だから、それはやっぱり本に書きましょう、と話したんですよね。
藤村:やっぱり失敗体験のような過去の傷を、自分でもう一回えぐることができなくて。100文字とか200文字ですら最初は書けなかったんです。だから、「この人だったら僕の闇を掘ってくれるかも」と思って、阿部さんにライターをお願いしました。
柿次郎:阿部さんは人の考えていることをガンガン掘り起こしますよね。闇掘り師(やみほりし)だ! 僕も以前、仕事終わりに一緒に銭湯へ行ったら、3時間くらいずっと裸で質問攻めされて……。でも、ここにも闇掘り師がいますよ!(土門さんを見る)
藤村:土門さんも。でも、闇掘り師って大事ですよね。
柿次郎:「その人にだったら話せる」って役割は必要です。僕は以前、土門さんのインタビューで闇を掘られまくって、そのあと2、3日動けなりました。
土門:掘る側も2、3日動けなくなります(笑)。こちらも同じように、取材後しばらく使い物にならなくなったりするので、お互いに傷つけあいながら……。
柿次郎:『経営者の孤独。』も闇掘り師の仕事ですね。あのインタビューって、取材を受ける経営者側に実はそんなにメリットがないんじゃないか、とも思うんです。すでに上手くいってる状態で、あえてこれまでの悩みや葛藤を外に出すのは。
土門:たしかに、最初はアポイントが取れるか心配だったんです。でも、もしかすると、みなさん好奇心のほうが上回ったのかな、と。「自分にとって孤独とは?」を考えることに興味を持たれて、「じゃあ一緒に探しにいきましょう、孤独を」と受けてくださったのかもしれません。
阿部:あの本は「一緒に孤独を探しに行く旅」だったんですね。
スラムダンクで見た「自分以外で勝つ」チーム作り
土門:ここでまたスラムダンクの話をしますけど、翔陽の藤真が好きって藤村さんがおっしゃったじゃないですか。藤真は監督不在のチームで4番キャプテン、プレイヤーでありながら監督もしているキャラクターなんですね。
土門:翔陽が負けた時に、ある登場人物が「藤間がプレイヤーに専念できたら、結果は違ったかもしれない」って言うのが、本当にそうだなと思って。藤村さんもマネージャーでありながらプレイヤーもされてますが、本当はこれに専念したいのに、みたいなことはあるんですか?
藤村:本当は「仕事をバリバリやってたいです」みたいなタイプでもないんです……(笑)。やりたいこともないけど、自分がご機嫌に生きていられるのはどういう状態かにはすごく関心があって。その状態を目指すと自分のパフォーマンスも上がり、結果的にチームのパフォーマンスも上がる。じゃあ土門さん、さっきの藤真の話なんですけど……。
柿次郎:みんな『スラムダンク』に詳しすぎでしょう(笑)! 会場のみなさんもついてきてますか?
藤村:ついてきてくださってると信じて続けますね(笑)。藤真は全国区レベルのプレーヤーなんだけれど、監督として、自分以外のメンバーで勝ち上がっていくことを選択していた。で、物語の後半で試合に出たけれど、結果として負けちゃうんです。
でも、その藤間の気持ちが僕はすごくわかる。なるべく自分が出ずにチームが強くなっていくことに、僕も関心があるんです。前に出て引っ張るタイプじゃないし、むしろ隠れていたい。最終的に僕がいなくなってもチームがうまくいく状態がいいなと。
土門:自分がいなくても回るような仕組みをちゃんと作り上げたい、ということですか?
藤村:それはあります。僕もプレーヤーになるんですけど、そうせずに仕事するにはどうすれば、と考えざるをえなかった。その悩みを藤真に重ねる部分がある。
藤真が最初から試合に出てたら、多分もっと勝ててたはず。それをやらずに勝とうとしていたのは、翔陽を全国に連れて行ける強いチームにするための選択なんだと思いますね。
「みんな違う」と受け入れるために
阿部:藤村さんのやり方って、仕事を属人的にしないというか、誰か欠けたらもうチームが回らない、みたいな状態を避けるやり方じゃないですか。でも、土門さんのように小説を書く人って、自分にしかできないことをやり続けていくみたいに感じます。
土門:そうなんです。だから私は『スラムダンク』で言うと……。
会場:(笑)
柿次郎:このイベントが終わったら『スラムダンク』が一番売れそうですね(笑)。
土門:(笑い終えて)私は湘北のキャプテン・ゴリのタイプなんですよ。これだけスラムダンクの話をしてるからバレバレなんですけど、私は元バスケ部で……。
阿部:ちなみに藤村さんも元バスケ部ですね。
土門:そうなんですね!(笑)私は中学で部長をやっていて、当時はめちゃくちゃ勝ちにこだわっていたんですよ。楽しいよりも勝ちたいが強くて、それをチームのみんなに押し付けてしまった。「みんなも優勝したいはずやろ? じゃあ練習しよう」「休んでないで走って!」と。
藤村:土門さん、キャプテンの顔になってますよ(笑)。
土門:で、「蘭ちゃんと一緒にバスケするのしんどい」って言われて。
柿次郎:それ、スラムダンクのゴリにも同じシーンがありましたね!
土門:そう! そこで初めて「人って全員が勝ちたいわけじゃないんだ」と分かったんです。それで私はリーダーに向いてないと。1人でゴリゴリゴリゴリ掘りたいタイプなので。
柿次郎:とことんゴリなんですね。
土門:(笑)。だから高校のバスケ部では、副部長をやらせてもらいました。チーム全体をちゃんと見える人がトップにいて、私はその下でいろいろ言いたい。そうしたら、高校では非常にうまくいきました。
土門:でも、その中学の経験がトラウマで。大人になっても、みんなが仕事に自己実現を見いだすわけじゃないし、仕事よりプライベートを充実させたい人もいる。その時、どういう風に違うタイプをまとめていけばいいのかと。
藤村:実は僕もまとめてはいないんです。土門さんの話でいいなと思ったのが、「人はみんな違う」ということ。勝ちたい人だけじゃないんだと、チームメンバーに対してリーダーが本当にそう思えているかが大事だと思います。
僕が最初に編集長になった時、成果を出したくてチームに高い理想を求めてしまって。でも、理想が高い人もいれば、家庭ができて子供もいるから仕事をセーブしたい人もいる。そのグラデーションがあるのが当たり前なのに、僕の理想だけでやろうとして失敗しました。じゃあ、みんな違うことを受け入れていい感じにするにはどうしたらいいか?と考えるようになったんです。
柿次郎:どうすればいいんですか?
藤村:えっとですね、それはわかりません(笑)! わからないから、メンバーの話を聞くようにしているんです。チームメンバーひとりひとりと、1週間に30分ずつ雑談をする「ザツダン」という「1on1」の時間があって。
基本的にザツダンは、その人の成長支援や評価のためなんですが、サイボウズの場合は「最近どんな映画見たの?」とか、本当に雑談だけで終わる時もある。でも、それでメンバーの人となりがわかるんです。
すると「今この人が動けてないのは、きっとこういう理由だから、ちょっと待とうかな」って判断ができるようになる。チームの問題に対して明確な解決法はないけれど、メンバーが思ってることを丁寧に聞いて、それを元にチームとしての動きを考えてますね。
土門:じゃあ、もし藤村さんが「やりたいことがある人」だったら、喧嘩が起こるかもしれない?
藤村:そうそう、「もっとやれよ!」って僕の中のゴリ的な部分が出てくるかも(笑)。ただ基本的に、喧嘩というか議論はやるんです。チームの中で「質問責任」と「説明責任」というものがあって。
「あなたがもしわからないことがあれば質問してください。質問できないのはあなたの責任です」。そして「質問を受けた側はしっかり説明してください。それも責任です」と。これは会社の文化としてあって、すなわち「ディスカッションをチームでやりましょう」ということ。
だから「わからないものがわからない」って状態も自分で言語化して、質問しないといけない。厳しい文化ではありますよね。でも、繰り返すうちにチームでディスカッションが行われて、みんなの理解が深まっていく。これがない状態で理想や戦略だけ出てきても、わけがわからないと思います。
土門:絶対に文句が出ないやり方ですよね。文句があるなら質問してね、ということだから。
藤村:僕の所属している部署の飲み会では、文句とかは出ないですね。
土門:文句は全部、質問に変換してるからってことですよね。なるほど……。
コミュニケーションを諦めないために「わかりあえない」ことを理解する
藤村:さっきの「ザツダンの場」も、設定する側は難しいんです。僕も昔、プライベートの話をしたくなくて、当時の部長に「この雑談いらなくないですか?」って言ったことがあります。
でも、そう言えたこと自体が実はいいこと。本音を言えたってことですから。習慣として喋るうちに「この人には言ってもいいかな、頼ってもいいかな」と思える関係性ができる。それがザツダンの効果だと、数年かけてようやくわかりました。
阿部:親子の関係にもありそうですね。親と喋りたくない時期をどう乗り越えるかで、その後の関係性が変わるというか。
土門:そうそう。『未来のチームの作り方』を読んだときに、ここに書かれていることは子育てにも応用できるなと思ったんです。サイボウズさんが目指すのは「社員が会社に依存しないで自立すること」ですよね。それって子育てと一緒だなと思っていて。
私は、親の考え方って子どもを叱る内容に出ると思っているんですけど、自分自身が子どもによく言うのは「文句を言うな」ということなんですね。
会場:(笑)
阿部:まさにゴリ的ですね。
土門:例えば夕飯時に嫌いなものが出たとしても、「え~、ピーマン~?」じゃなくて、「僕はピーマンが嫌いだから食べられない。残してもいいか?」と言いなさいと。
つまり、文句じゃなく提案をしろってことなんですよね。自分が言葉を使った仕事をしているので、言葉を用いての人とのコミュニケーションを諦めていないんだと思います。影でぐちぐち「あいつはわかってない」と言いたくなるときもあるけど、それは自分が相手にわかるように話せていないだけなのではないか?と。
藤村:面白いですね。土門さんって、「人はわかりあえない」と思って他人と接してますか?
土門:えっと……わかりあえないと思いながら、「でも絶対に諦めないぞ」と思っている感じですね。
藤村:ああ、僕も全く同じタイプです。100%わかり合うのは無理だと思っているんです。でも、距離を詰めていくのが大事だと思っています。わかってくれない、と怒りたくなるのは、相手がわかってくれると期待しているから。わかりあえないという前提がある状態から積み重ねていくのが自分のスタンスかもしれません。
土門:藤村さんがトークの前に「孤独って感情はどうチーム作りに活かせますか?」って質問をくださったじゃないですか。その答えが、今の話だと思いました。
土門:「わかりあえない」とわかってる状態は、孤独とイコールだと思うんですよ。でも、それがないと「なんでわかってくれないの?」って排他的な感情が生まれてしまう。「わかりあえないよね。でもその距離をなるべく縮めよう?」ってことが、良いチーム作りにすごく大事なんじゃないかなと。
藤村:自分の質問に自分で答えてたんですね(笑)。その場合、孤独な状態に自分が置かれてると気づく、とかもあるんですかね。
土門:あー……、「孤独」と「孤立」はまた違うと思っていて。「孤独」はみんなに内包されているもの。「孤立」はたぶん、孤独と孤独の距離をどうしても縮められないとか、あるいは「ぜんぜん距離が縮められる気がしない」って感覚だと思うんです。
だから、その孤立をいかに減らしていくか、が大事なんじゃないかなと思いますね。
藤村:なるほど…! 納得しました。そろそろお時間ですかね。今日はありがとうございました!
土門:ありがとうございました!
構成:乾隼人(https://twitter.com/inuiiii_)
撮影・編集:友光だんご
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舞台は太平洋戦争の終戦後、そして朝鮮戦争の休戦間近である1953年7月の広島県呉市朝日町。戦争という混乱期に翻弄された5人の女性たちが描かれます。詳細や本の購入は以下のページをご覧ください。
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