このひと時が終わる前に
「もしもし。今なにしてんの?」急な電話は僕の常套手段だ。
「今大学終わって家帰るとこだから、夜からなら遊べるよ。」
「まだ、遊びの連絡だって言ってねーだろ。」
「お前からの連絡で遊び以外無いんだよ。後、電話かけてくるな!ラインでいいだろ。」
高校からの親友―藤森達守は僕の電話内容を察知したらしい。
「電話の方が早いんだよ!まぁそれは置いといてよ、夜から飯いこーぜ。その後サウナ決定な。」
僕が一方的、淡々と遊びの予定を埋めていく。
「まぁいいけどよ。20時以降な。他誰誘うよ?」
男は3人以上の遊びを好む習性がある事は僕たちの共通認識みたいだ。
「じゃー隆道と古道に電話かけるわ。」
橋本隆道・古道三竿この2人がいれば、高校のメンツは大体揃う。いわば、友達と友達を繋ぐパイプラインなのだ。
「わかった。じゃー俺は古道に電話をかけるわ。進藤は隆道に電話かけて!」
紹介が遅れた。進藤道木―僕の名前だ。険しい木の道でも進めるようにと、名前をつけたらしい。
「おけおけ!じゃー決まりね。ほなほな、また結果教えてよー。」
「らじゃんばい!」
訳の分からない電話の切り方は達守らしくて、どこか安堵した。私は電話をかける前に少し眠りにつく事にした。
「もしもし。今なにしてんの?」急な電話は彼の常套手段だ。
「今営業終わって会社から帰るとこなんで、夜からなら書類片付けれます。」
「まだ、仕事の連絡だって言ってねーだろ。」
「すみません。こちらの勝手な憶測で。」
もちろん仕事の連絡以外はない。電話ではなくメールで送れよ、と心の底から思った。
「夜からもう一軒営業先に訪問してくれないか。それから書類片付けてよ。人は派遣する」
彼は一方的、淡々と予定を埋めていく。
「わかりました。今からだと、20時以降なら大丈夫です。3人ほど派遣してもらうと幸いです。」
男は3人以上を好む習性がある。
「じゃー隆道と古道に電話かけて、派遣さすよ。」
隆道と古道なぜか聞いたことがある名前なのに、思い出すことができない。
「わかりました。では失礼いたします。」
「らじゃんばい!」
上司が言うはずもない、この言葉が僕を現実へと誘った。ガタン、と大きな音と共に頭を机に打ち付け、私は目を覚ました。
「これが本当の悪夢か。」学生生活残り半年間、私はこの貴重な時間を大切にしよう、と心に誓った。