同人誌編集のはじめかた:コンセプト設計から頒布まで
この記事は、これから「文字系同人誌を作りたい!」という人向けに、同人誌を作る上で知っておくと嬉しいことをまとめたものです。
自分が初めて同人誌を作ったときは何も分からず手探り状態だったため、過去の自分が困っている時に読んだらすごく助かっていたであろう、そんな記事があればいいなと思い書くに至りました。
同人誌制作に興味があるけれど何を始めれば良いのか分からない初心者や、公認サークルを引き継いで機関誌を発行することになった学生などを主な対象にしています。ですので、すでに一定の経験がある方にとっては、言うまでもない内容も含まれているかもしれませんので悪しからず。
逆に、まだ何も分かっていないけれど、漠然と次のような思いを抱えている人にとっては少し役立つかもしれません。
0.はじめに
なぜ同人誌を作るのか
自分が今まさにnoteでこの記事を執筆しているように、電子メディアで事足りる現代において、敢えて紙の本を作る意義とは何でしょうか。
第一に、自分の成果が物体として形になることの喜びがあります。大学生活のほとんどを同人誌制作に費やしてきた自分にとって、己の歴史を物語ってくれるのは、iPhoneのカメラロールではなく、本棚に並んだ同人誌です。
第二に、誰かと一緒に何かを作ることの喜びがあります。チームで本を制作する際、そこで行われるやり取りは基本的に楽しいものです。特に、多人数で制作する合同誌の場合、関係者同士のコラボレーションが生まれ、未知のシナジーが生まれる「場」として同人誌が機能します。
僕はこの第二の理由に惹かれ、複数人が参加する合同誌形式の本を制作し続けてきました。本がなければ関わることのなかった人々やクリエイターが、1つの「場」を共有し、絡み合う。そのような形で生まれる可能性は、単なるメディアの枠を超えた力を持つと感じています。
自己紹介
「そもそもお前誰やねん」という話なのですが、自分は2021年に大学入学と同時になんとなく同人誌を作り始め、現在までに主宰・編集としては30冊ほど、寄稿も含めると50冊ほどの同人誌に関わってきました。
とはいえ、同人誌制作歴4年というのは全体から見ればまだまだ新参者ですし、自分よりはるかに優れた本、多くの本を作っている人はたくさんいます。そんな自分が何かを言えるとしたら、これまで様々な形態のサークルに参加し、様々な形態で同人誌を作ってきたという経験を活かしてでしょう。
運営形態の違い
試しに、自分がこれまで関わってきた同人誌の制作ケースを記してみましょう。
自分は2021年から2024年まで『青春ヘラ』を発行する大阪大学感傷マゾ研究会の代表を務めていましたが、同団体はまさにこのパターンでした。複数人が参加する合同誌を1人の人間が取りまとめる形式は、案外多く見受けられます。
次点で多そうなのが、2人でタッグを組んで行う『バクマン。』状態での制作です。自分の場合、現在も活動している『この同人音声がすごい!』シリーズはこのパターンです。自分が主宰として企画を立てて方々に原稿を依頼した後、届いたものを校正し、組版やデザインなどをもう1人のサークルメンバーに投げます。
大学の文芸部など、学生サークルはこういったケースが多いかなと思います。自分は阪大SF研と阪大文芸部の編集長をやっていたのですが、どちらも歴史あるサークルで、ある程度会誌制作のフローが決まっています。また、原稿を外部に依頼するのではなく内々で集めたり、対面で校正会や編集会議が行われるのも特徴です。
『信仰SF』という本を作っていた際、自分が編集長だったのですが、編集者が10人いたこともあり、統括として制作を進行するのが本当に大変でした。正直二度とやりたくないです。
通常であれば同人誌レベルで10人も編集がいる必要はないのですが、大学サークルはその特性上、後進育成のためになるべく沢山の後輩に早期から編集を経験してしまった方が良いのです。そのためにできるだけ編集に入ってもらったのですが、トップの負担が爆増する結果となりました。深夜0時に電話で催促する先輩とか最悪です。
その他にも、もともと個人誌のコピー本として出していたものを再録・加筆のうえ製本して出しませんかと、原義の「編集者」っぽいスタンスでお声がけした例や(『なんかいのんでも…総集編』)、共著としてインタビューや原稿も書いた上で組版・デザインを担当した例(『Z世代のフツウ』)、あとは個人誌など、一口に「同人誌をつくる」と言っても、無数の形態があります。
当たり前のことですが、組織の実態が異なれば、制作フローも変わり、それに伴って有用な方法論も異なる場合が多いでしょう。しかし、いくらケースバイケースとはいえ、共通して大切にすべきことがあるのも事実です。ここからは、過去の活動を通じて個人的に感じた、制作において大切にすべきことをいくつか挙げていこうと思います。
1.コンセプトを決める
最初の段階でまず「コンセプト」を決定します。初出店の場合はサークルそのもののコンセプトを決定し、その後冊子のコンセプトを決めることになるでしょう。コンセプトとは、本で特集したいテーマ、実現したいアイデア、表面的なキャッチコピーなどを総称した言葉です。
先ほども挙げた、主宰している(していた)サークル2つを例に取りましょう。これら2つは運営体制だけでなく、「コンセプト」が大きく異なり、それが制作面でかなり影響しています。
自分が制作する上でも、感傷マゾ研とこの同ではそれぞれ冊子の作り方が全く異なります。前者は毎回テーマが異なるために、あまりにニッチなテーマを打ち出してしまうと書ける人が誰もいないという事態に陥りかねません(自分があまり公募をしないのはこれが一番の理由です。文芸誌だとまた話は変わってきますが)。よって、感傷マゾ研究会での冊子テーマは以下のようなフローで決定します。
①に関しては、僕の関心のある分野がそもそも青春とか感傷とかノスタルジーに関連しているので大きく乖離して悩むことはないです。そもそも自分のやる気や関心がないと良い本にはなりません。
難しいのが②です。自分は大抵、交流のあるフォロワー、そのテーマについてnoteやTwitterでよく言及している人、その分野の専門家なんかを一通りリスト化して検討しています。言うまでもなく、その分野に関して勉強する時間がかなり必要です。
その人の属性や関係性次第で依頼の難易度は下がるので、タイプ別に段階を設定して、このように依頼のフローを組んでいました。そして、それをNotionで管理していました。
ひとまず、かなりの確率で依頼を受けてくれるタイプAの人々はリストに加える上で心強い存在です。この段階である程度人が集まりそうなら、実現可能性は高いのでもう企画を走らせても良いでしょう。
タイプBやCの人を探すのが実は一番時間を割くかもしれません。しかし、普段から書き慣れている人が提出してくる原稿は、やはりクオリティが高いものが多いです。これに関しては、特集テーマについて勉強するために書籍を読み漁ることはもちろんのこと、普段から意識して同人誌を買うようにしています。
自分は毎回の文学フリマで大量の同人誌を買うのですが、そのなかで面白かった書き手や特集テーマに近いことを書いている人は積極的にお誘いしています。半年後の刊行に合わせようとすると即売会が終わって一ヶ月以内に動き出さないとまずいため、タイトルと一文目を読んで気になったものはとりあえず付箋を貼って一ヶ月以内にガッと読んでます。そして、単語レベルでNotionに記録していき、独自のデータベースを作ることで、後から検索して書き手を探せるようにしています。
ボーカロイドに関する同人誌を作りたいんだけど、過去に気になった文章でボーカロイドに関係するものは何があったっけ……というのを、検索機能で一発で見付けることができます。
あとは、特定の話題に関して特集したい場合、一人でも識者が知り合いにいれば、その人に紹介してもらうことも多いです。依頼を承諾してくれた人に「他に書き手の方をご紹介してもらえませんか?」と頼んでみましょう。餅は餅屋、界隈に接続できれば一気に書き手が広がる印象です。
とはいえ、自分があまり書き手の問題で悩んだことがないのは、ある程度具体的に書き手が集められそうだなと思った段階に至らないと企画を走らせないからかもしれません。どの段階から企画を動かしていくか、主宰の手腕が問われるところです。
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一方で、『この同人音声がすごい!』の場合は、初めから「同人音声」というテーマが決まっているため、冊子テーマで悩むことはありません。こちらのケースではむしろ、レビューを誰に頼むか、単なるレビュー誌にならないように面白い企画を考えられないかといった「アイデア」を拾っていく作業にコストを割きます。
しかし、いずれにせよ、「コンセプト」が制作フローそのものを左右してしまうため、ここは慎重かつ丁寧に検討した方が良いでしょう。これを読まれている方の中にも、例えば「批評誌」を作りたいという方がいらっしゃるかもしれません。ただ、ここで「オールジャンル批評誌」と銘打つのか、「アニメ批評誌」と銘打つのかでは今後が大きく変わってきます。前者は何でもテーマにできて自由な冊子が作れてしまうがゆえに選定に時間を要することになるでしょうし、後者は枠組の中で自分のやりたいアイデアをいかに実現するかということが問題になってくるでしょう。
長くなってしまったのでまとめます。同人誌は原稿および執筆者がいないと成立しません。その際、コンセプトありきで執筆者を集めるのか、逆に執筆者が固まってからコンセプトを決定するのかが大きな違いとなります。これはサークル全体の雰囲気にも直結しますし、継続して発刊したいかどうかなど、多くの要素が関係してくることだと思います。一からサークルを作っていく場合、最初にこの点を考慮してみるととても良いのではないでしょうか。
2.企画書を書く
ぶっちゃけ書かなくても良いです。ただ、外部に積極的に依頼をかけていく場合、企画書がちゃんとあることは冊子やサークルへの信頼感につながります。極論をいえば、サークル側が色々あって飛んだりすることもあるので、そういった資料が用意されていると「ちゃんとしてる団体なんだな」と依頼を受けてくれる確率は上がるかもしれません。自分の場合は、だいたい以下の要素を書いてGoogleドキュメントで送付していました。
スケジュール感の話
何冊か作ったことがあるとなんとなく冊子制作にかかる工数が見えてくるのですが、初めての場合はなるべく早く動くに超したことはありません。
自分はなんとなくイベント当日の2週間前に入稿、入稿の1ヶ月前から組版とデザイン、2ヶ月前から原稿締め切りと校正、半年前に依頼というフローを組んでいます。冊子の規模や形態によって変わるので、自分のベストなタイミングを見つけてください。原稿依頼する場合、常識的なスケジュールは半年~3ヶ月後締め切りだと思います。たまに1ヶ月後でお願いします!とか言われますが、普通に無理です。
謝礼の話
謝礼をお支払いするか。最も難しい問題です。もちろん、人と場合によるとしか言いようがないのですが、書き手が「同人だから……」と考えてくれる場合もあります。
ひとつ何か言えるとしたら、交渉のやり方として、「謝礼は◯◯円を想定しておりますが、もし依頼の際の相場などございましたらご教授いただけますと幸いです」とメールに添えるのが大事かなと思います。
ターゲット層の話
依頼の際に含まれている必要はないのですが、企画を考える段階においてはやはり「ターゲット」を想定するのが大事かなと思います。もちろん、「同人」は自分が好きなことをやるべきなので、「そんなもの関係ねぇ!」とか「付いてこれるヤツだけ付いてこい!」というスタンスも正しいのですが、自分は「己が好きなもの」が「誰かにとっても面白いもの」であればあるほどいいと思っているので、なるべくターゲットを意識しています。
ターゲット層を明確にすることのメリットは、その層に訴求する企画と、敢えてその層を外した企画を分類できることです。雑誌形式の本の場合、毎回買ってくれる読者を喜ばせるパートと、新しい読者を獲得するためのパートどちらも盛り込むことで、冊子としての強度が高くなっていくと思います。
3.依頼する
A:原稿依頼
やり方は人によって違いますが、タイプAの人にはdiscordのDM、タイプBの人にはTwitterのDM、他の人にはメールで連絡することが多いです。特に、以下の内容を本文に盛り込むことを意識しています。
特に大事なのが「なぜ依頼するに至ったか」という経緯です。自分に来る原稿依頼には書いていないことも多いのですが、「あなたの書かれていた◯◯を読んで~」「◯◯という作品に関する分析ツイートを拝読して~」という前置きを挟んでおくと、どういう人間として冊子に参加してくれることを期待しているのかがクリアに伝わります。
加えて、もしスケジュールや都合で断られてしまった場合も、「あなたの書いたものを読んで、心が動かされました」と伝えることができます。当たり前ですが、依頼者はその人の文章が好きで依頼しているわけで、愛を伝えられるだけで互いに不快感なくやり取りができるように思います。
「どういう原稿が欲しいのか」は、ここでどこまで具体化するのか人によって分かれると思います。場合によっては、通話しながら詳しくお話を伺っても良いですか、という流れになることもあります。
自分がよその冊子に寄稿する場合は「書きたいものを書く」よりも、「求められているものを書きたい」派なので、編集の人と結構相談します。なので、寄稿依頼の時点で「こういうものを書いてください」と具体的な要件があるとかなり楽だったりします。
一方、編集の立場としては、そのように依頼して書き手の方の可能性を狭めてしまいかねないのは把握してるので、基本的な枠組だけは共通認識を擦り合わせておいて、いくらでもジャンプしてください、と伝えています。
文末に依頼メールのテンプレを置いておくので、適宜参考にしてください。
B:インタビュー・座談会依頼
インタビューや座談会の依頼をする場合をやることは原稿依頼と同じなのですが、形式の決定や日程調整という作業が必要となります。インタビューは対面・オンライン・メールなど色々なやり方がありますし、座談会は逆にメールでは無理です。
いずれの場合も、事前にタイムラインとトピックのリストを共有しています。特に座談会の場合は人数が多ければ多いほど長く・複雑になりがちなので、全体の進行表があるとやりやすいです。他だと、「参加者が持っている独自の視点を活かせるような話題を作る」「それぞれの話題ごとの時間配分を予想しておく」「座談会全体の流れを見て適宜トピックを入れ替える」あたりが大事かなと思います。
C:イラスト・デザイン依頼
同人誌の表紙や、デザインに関する依頼はまた少し文法が違います。知人や友人に頼む場合はラフに相談しても良いのですが、まったく知らないクリエイターさんに依頼する場合は以下の要件を先に提示しておくと親切です。
自分は、これらの要素に加えて、大量のリファレンス画像を貼っていました。具体的なイラストや画像を参照しながら説明すると、途端に話が早いです。「構図はこの漫画のこのコマをベースにして~」「キャラクターのイメージは、雰囲気はこの作品のこのキャラ、髪型はこのキャラのこのシーンみたいな感じで~」とかなり細かく指定します。これは人によって分かれると思います。お任せでいいという人は、自由に描いてもらえないか最初から打診しても良いでしょう。
あと、自分は表紙デザインが苦手なので、イラストレーターさんに発注するときにデザインまで含めて依頼することが多いです。イラストレーターさんやデザイナーさんはTwitterで探してそのままDMやメールで依頼するか、ココナラ、SKIMAといった依頼サービスを使っていました。
4.校正・編集する
これまた色んなやり方があり、正解はありません。自分はGoogle driveで原稿の管理、Google documentで校正、Adobe Indesign/Illustratorで組版とデザインをやっていました。
校正する
集団制作のときも個人制作のときも同じですが、絶対に自分以外の人にも目を通してもらうようにしています。校正の人間は正直多ければ多いほどいいです。いくら探しても誤字はあります。
あと、どれだけ分担しても主宰は結局全部読まなきゃいけないので、いくら時間があっても足りません。それを何とか解決するために、脳死で出来る作業(デザインとか)をやりながら音声入力機能で原稿を再生して違和感のあるところを探る校正の方法を採ってました。これで誤変換以外の誤字はだいたい見抜けます。AI音声で読み上げられるとキツいので小春六花を買って読み上げてもらってました。
編集する
ひとまずGoogle documentで原稿が一通り確定したら、Indesignでテンプレートを作り、文章を流し込んでいきます。複雑なデザインを入れたい箇所は別途illustratorで作ったものを挿入してます。
デザインはちょっとライトめな文芸誌や昔の雑誌とかを結構参考にしてます。『ダ・ヴィンチ』とか『BRUTUS』は特によくパクってました。
縦書きの場合は「本文8pt、小口以外は18mm、小口のみ10mm」の型をよく使っていました。ただ、最近視力が弱くなってきてのもあって、本文は9ptか10ptでもいいなと思っています。本文フォントは「源暎こぶり明朝」か「リュウミン」を使っていました。
当時使っていたテンプレートを置いておきます。
このあたりの話は、ぜひこちらの記事も読んでみてください。
編集のやり方をどう学ぶか
自分が最初に同人誌に関わったのは『感傷マゾvol.06』で寄稿してからだったのですが、実際に寄稿してみると校正・編集のフローがなんとなく掴めました。いきなり編集するよりもまずは寄稿からやった方がいいと思います。
また、これは完全に自分の運が良かっただけなのですが、たまたま所属していた阪大SF研が会誌制作が盛んなサークルで、編集のノウハウがめちゃくちゃに蓄積されていたので、とても助かりました。特に、デザインやフォントに詳しい先輩と出会ったのはかなり大きかったです。同人誌を出してみて周りの編集してる人とつながりができるといいですね。
他には、ファーレはよく読んで参考にしていました。あとは同人誌デザインの本も3冊くらい買って編集の時は横に置くようにしてました。「同人誌 デザイン」とかで検索すると本がいくつか出るので、そういうのを参考にするのもアリだと思います。
5.製本する
印刷所は栄光出版/丸正インキ/ちょ古っ都製本工房のどれかをいつも使っています。左から順に値段とクオリティが高くなるのですが、本によってどれだけお金をかけたいか、どれだけ印刷の質を上げたいか変わるのでケースバイケースです。ぶっちゃけ人によって合う合わないありますので自分で探してみてください。
また特殊装丁をやりたい場合は印刷会社の併用も視野に入れましょう。ブックケースやブックカバーだけプリントオンで発注して、本自体は丸正インキで印刷、とかよくやっています。
6.広報する
基本的にはTwitterのRTといいねが中心なのですが、細部も結構大事だと思います。細部とはつまりイベントのカタログ登録をサボらないとか、分かりやすい紹介文を書くとか、お品書きは事前に出すとか、当日の設営にも力を入れるとか、そういう類のことです。
こういった細かな点を疎かにしていながらも、筆者のパワーで爆売れするサークルももちろんあるのですが、あまり部数刷ってないのかな?というサークルを見ると、だいたい細かな点を徹底できていないなと感じます。
編集の使命はただ自分の本を売るだけでなく、書いてもらった人たちの文章を「届ける」ことでもあると思います。そのためにできることはなるべく全部やらないと、書いてくれた人たちに失礼なので、自分はかなり気を遣っているところです。「もっとこうしていたら、少しでも部数が売れていたかも……」と悩むことのないように、やれることは全部やりましょう。表紙・デザイン・宣伝、あらゆる面で全力で広める姿勢が大事です。
とはいえ、新興サークルだと宣伝に悩むことも事実です。そういう人のために、最近「ジンフォ」という情報系同人誌のためのプラットフォームサービスを始めたのでぜひよろしくお願いします。
7.頒布する
お品書きやスペース設営に関してはマストではないものの、凝らないよりは凝る方がいいに決まっています。もちろん引換所のような簡素な設営も個人的には好きですが、見栄えは良い方がいいでしょう。
重要なことなのでもう一度言います。個人誌ならまだしも、誰かの原稿を預かって、それを掲載して売ろうとしている場合、あなたには寄稿者の文章を最大限広く読まれるよう努力する義務があります。それが最大の恩返しです。であれば、仮に「スペースの見栄えが微妙だったから買うのやめた」という事例を避けるためにも、細部まで全力を尽くしましょう。サークルクロスとかお品書きまで含めて「世界観」です。
設営やサークルスペースはこういった本も参考にしていました。
最後に
ここまで偉そうに色々書きましたが、実際に自分が作るとき、これら全てを達成できているかと言われれば怪しいところです。書きながら、むしろハードルを高く見せてしまっているのでは?という気持ちにもなります。
また、クオリティを高くするよう努力していくと、「同人」感がなくなっていくという意見もあります。個人的にもこの感覚はよく分かります。同人誌を突き詰めた結果が商業誌の下位互換ではなんのために作るのか分からなくなってしまいます。この塩梅は自分もずっと悩んでいるところです。
それに、こんな手順なんかフル無視したって、本自体はできますし、もっと良いやり方があるかもしれません。いえ、きっとあるでしょう。もし知見をお持ちの方は、ぜひnoteでTipsを共有してくれると嬉しいです。
結論:Notionはめっちゃ便利。全員使った方がいい。
番外編:編集作業を自動化する
Zapierを使ってタスク管理を自動化する
一つの同人誌のみを作っている場合は発生しない悩みなのですが、色々なサークルに所属していたり、様々な形態で同人誌を作っていたりすると、タスクが散逸してまとまらなくなります。毎イベントごとに平均5冊くらい同時で本を作っていると、どうしても全てを把握できなくなってしまいます。
そこで自分が使っているのがZapierというツールです。詳しい説明は省きますが、各種アプリケーションの連携を自動化してくれるツールです。使い方は適宜検索してみてください。自分が使っているZapierを用いた自動化の一例を記します。
例えば自分はあらゆるタスクをNotionで管理しているのですが、毎朝起きたらとりあえずその日のうちにやることをNotionで確認し、三段階に分けています。それぞれ、「Aタスク:10分以内に終わる」「Bタスク:1時間以内に終わる」「Cタスク:1時間以上要する」です。
Aタスクは、だいたい連絡を返したりメールを打ったりといった軽いものが多いです。そして、ほとんどがスマホだけで完結します。そういったものは腰を据えてやる時間がもったいないので、なるべく移動中に捌くようにしています。
Bタスクは時間はかかりますが、1時間程度で終わるもの。企画書や資料作り、単発の編集作業はここに入ります。これは出先でもできるので、カフェや外出先の作業スペースで行います。
Cタスクは最も時間がかかるもの。原稿執筆や重ためのデザイン作業はここに入れていました。これは本を参照したりしなければならないので、家が一番集中できます。
これらの分類を行って色づけし、スケジュールを指定するとGoogleカレンダー上で自動的に表示してくれるようにZapierを使っています。Notionでタスクを整理して、もう一度カレンダーに入れるという作業が面倒なのでかなり楽です。
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他には、自分の場合メインの連絡手段がDiscordのため、タスクが発生するのもDiscord上で起こる可能性が高いです。連絡を返す作業のときはそれ以外のことはしたくないので、DiscordからNotionに移っていちいちタスクをメモって……というのが本当に嫌になります。
そこで、自分専用のDiscordサーバーを作り、そこにある「タスク起票」というチャンネルでタスク名を記入すれば自動でNotion側にタスクが書き込まれるように設定しました。適当に書いてぶちこんでおいて、毎朝やるNotionのタスク管理時間になんとかしています。
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その他、同人誌関連でいうと、Twitterとの連携もあります。本に関する読者の感想は知りたいのですが、Twitterを開くのは面倒臭い。というか、エゴサ目的でTwitterを開くと絶対にTLを見て無駄な時間を消費するので、なるべくTwitterは開きたくありません。
そこで、ZapierでTwitterとdiscordを連携し、特定の検索ワードで投稿されたツイートが増えるたびにDiscordの特定のチャンネルに蓄積されるように設定しています。
Zapierに関しては他にも色んな使い方をしているのですが、本記事の趣旨とは離れますので割愛します。↓の記事とか良かったです。