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誰かに聞かせる物語

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朗読に利用できる作品を投稿しています。全文無料で100円は差し入れ用です。ご利用の際は規約をご確認ください。 https://lit.link/humiomatsuyo
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記事一覧

二度寝しない方がいいよ。(全文無料)

二度寝しない方がいいよ。(全文無料)

 朝の誰もいない教室で見知らぬ少女が私に向かって手を伸ばす。握られた手の平がゆっくりと開かれる。手の平の上に何かがある。柔らかく小さく温かく甘い。その何かが何であるか私は知っている。なぜ知っているのかは知らない。食べて。そう少女は言う。私は恐怖し逃げ始める。廊下に飛び出し走る。まっすぐまっすぐ行った先には何人もの人がガヤガヤといて、不意に私に気づき一斉にこちらを向く。先頭にいて満面の笑みを浮かべて

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お支払いには電子マネーもご利用いただけます。(全文無料)

お支払いには電子マネーもご利用いただけます。(全文無料)

 そういやあんた、聞いた? ノキさんとこの旦那さんが、夢に手を出したって。いやいや、ほんとさ、最近色々あったからねぇ。え、どこで夢が手に入るのかって? それがさぁ、噂だと、コンキエ通りの裏にある、なんとかっていう飲み屋で買えるらしいのよ。他にもいくつか、そういう店はあるんだって。
 ひどい時代だよまったく。それにしたって、旦那さん夢なんか買う金どこから調達してんのかね。だってさ、あれでしょ、夢なん

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庭 (全文無料)

庭 (全文無料)

 ホーソーンの「ラパチーニの娘」には、毒を持つ植物だけを集めた妖艶な庭が出てくる。私には、その庭、あるいは庭の中心で紫の宝石のような花をつける灌木こそが、心惹きつけられる関心事である。その庭で育てられ、肉体そのものが毒性を持つに至った乙女よりも、である。隣の下宿の青年は、庭の不穏なる色のどぎつさを訝しみつつも、やはり庭に行かずにはいられないのだ。むべなるかな、花々の異常なる香気、異様なる輝きはまさ

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教会 (全文無料)

教会 (全文無料)

 教会に辿りつけない。
 彼は窓の外にぼんやり目を向けた。ホテルの窓からは石造りの街並みが見渡せる。教会の尖塔は街の真ん中に、壊れたベッドのスプリングのように突き出ていた。
 風雨にさらされた灰色の街も教会も、それなりに無骨な美しさがある。だが彼は詩心もなければ、風景を紙に写し取る指もない。代わりに彼はこの二週間ずっと歩き回っていた。
 いつか母の病院の待合室で見た雑誌の写真を思い出し、彼は有り金

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この間、人形いらないかって言われたんです。  (全文無料)

この間、人形いらないかって言われたんです。  (全文無料)

※前半は私が実際に体験した話です。考察からは私が勝手に考えたことです。
 
 コンビニに行こうと思ったんです。私の住んでるボロアパートから坂をのんびり下りて、国道から一本外れた通りを歩いてました。晩ご飯作るのが面倒だからお弁当買って、ついでにチョコアイス食べたいな~とか思いながら。そこは一方通行で、車がまぁ朝とか夕方とかはけっこう通るんですが、それ以外はあんまり通りません。昔は賑やかだったっていう

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新生活 (全文無料)

新生活 (全文無料)

 さて、こうして俺は桜の樹の下に座っているわけだ。
 桜の樹の下には死体が埋まっている、なんて気取ったことを言ったのはどの作家だったか、俺はてんで思い出せない。ただ、花びらがヒラヒラ落ちてくるたびに、その色の薄さにどきんとするだけだ。
 花が群れているときには色はちゃんと見えているのに、花びら一枚一枚のこの儚くて弱い感じは不思議だ。頭の上に広がる狂ったような可憐さは、地面に落ちるとただの汚れたシー

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向日葵 (全文無料)

向日葵 (全文無料)

 向日葵の首を切るのよ、と恵子は言った。
 屈託なく太陽に顔を向けている花に向かって、ずいぶんと残酷なことを言う。陽一はそんなことを思いながら、恵子の横顔を見ていた。縁側で、恵子は絹さやの筋を取っている。ぷちん、ぷちん、という音が、セミの鳴き声に時折混じる。
 恵子は手元から顔を上げず、説明を続けていた。もっと枯れてしまうまでは、あそこに立っているままにしておいて。種ができたら、首を切って乾かすの

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なでしこ (全文無料)

なでしこ (全文無料)

 彼女は高校時代から、なでしこのような人でした。秋の七草に数えられるなでしこ。「可憐で貞淑」。簡単に手折れそうな肩と柔らかい頬の線を、私は愛しました。綺麗に結い上げた髪の、うなじに落ちる遅れ毛が愛しく、私はよく指先でふわふわと遊んだものです。
 彼女はその美しい見た目のせいで、いつも嫌な目に合っていました。男の人に言い寄られたり、不躾な目で見られたり。都電の中でふしだらなことをされたと、目に涙を浮

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さざんか (全文無料)

さざんか (全文無料)

 さざんか さざんか さいたみち
 恭一は振り向いた。今すれ違った女性。赤いセーターの背中が遠ざかり、垣根の向こうを曲がるところだった。黒く長い髪が名残のようにひらりと消えた。彼女は囁くように歌っていなかったか?
 懐かしい童謡だ。目の前を花びらが横切り、顔を向ける。傍らの民家の庭に赤い山茶花が。そうか、だから歌を。
 彼女は笑んでいたか? あぁそんな気がする。
 恭一は同じように笑んだ。垣根を曲

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