退職代行サービスのネーミングに、希望を感じるのは気のせいか
連休明け1月6日に、退職代行サービスへの依頼が最多になったというニュースを見た。
自分の周りではここ数年聞かなかったのだが、どうやらすっかり世の中に定着したようだ。「退職代行 一覧」で調べてみると、余裕で20社以上が名を連ねている。
アンケートによると、退職代行が利用される理由の1位は「引き留められた(引き留められそうだ)から」らしい。そして職種の1位は「営業」
なるほど、と合点がいく。クライアントとの関係性で仕事をする営業職は簡単に替えが効かない。引き留められないほうが稀だろう。昨今の人手不足でその引き留め圧力は上昇し、それが更に退職代行のニーズを生むという訳だ。
引き続きアンケートを見ると、言いだせる環境がなかったり、パワハラを受けていたり、何等かのトラブルを抱えているなど、様々な理由がある。
なかなか事は深刻だと思ってたら、下位に気になるワードがあった。
5位「退職のやりとりや手続きが面倒だから」
6位「退職理由を伝えるのが面倒だから」
面倒だから?
「辞めさせてくれない」「言い出しにくい」「脅される」「トラブルと避けたい」なら分かるが「面倒だから」というのはいささかイメージと異なる。
繊細なハートを持つ令和の若者が、悩んだあげくやむを得ず利用するサービスだと思ってたのだが…
そういえば、数ある退職代行サービスのネーミングには違和感があった。
なんというか、深刻さが感じられない名前が結構あるのだ。
退職代行EXIT ⇒脱出するあの二人を連想する
退職代行OITOMA ⇒礼儀正しく適度にカジュアル
退職代行SARABA ⇒去り際に、青春が光りそうだ
退職代行TONZURA ⇒いろいろ、禍根を残すだろう
悩みに悩んだ末に使うサービスには、とても見えない。
他も見てみよう
退職代行即ヤメ ⇒なんとも言えないアダルト感
退職代行モームリ ⇒気持ちを見事に代弁している
退職代行トリケシ ⇒何もかも無かった事にしてくれる
もっと尖ったのがある。
男の退職代行 ⇒男性限定?
辞めるんです ⇒写ルンですを知ってる世代か
やめたらええねん ⇒ウルフルズが、好きなんやね〜
やはり、追い詰められた人々向けのサービスとは思えない軽さがある。
アンケートの結果は方便で、本当は皆「単に面倒だから」が理由ではないのだろうか?
私が退職する立場なら、ちょっと上記のネーミングの会社には頼む気がしないだろう。
私なら…
いや、本当にそうか?
程度の差はあれ、退職代行を検討するくらいだから、辞めたいという気持ちは本物だ。しかし迷惑はかけられないし、引き留められて断るだけの強い意思も私にはない。法律的には2週間前に通告したら退職できるにも関わらず、私は必要以上に追い詰められるかも知れない。
『たかが会社を辞めるだけだ。いや、やはりそれでも…』
もう、辞める事すらやめようと思えてきた。
そんな時、退職代行会社の名前が目に入る…
『EXIT』?
『モームリ』?
『やめたらええねん』!?
ああ、これだ。
一気に気持ちが軽くなった。
私は考えすぎだったのだ。日本では職業の自由は保障されている。引き留められても関係ない。私にしかできない事など、あろうはずもないのだから。
『モームリなんだから、EXITすればいいのだ。
そう、会社なんてやめたらええねん…!』
これで私は、第二の人生を踏み出せる。
これが言葉の力というやつだ。
退職代行のネーミングに希望を感じるのは、気のせいではない。
※一社だけ、架空の会社が含まれています。