見出し画像

究極の無形商材。WEB広告には形も実態も、見返りも無い。

「本日はお問い合わせいただき、ありがとうございます。WEB広告に関心がおありなんですね…」

今日も私は、クライアントにWEB広告の説明をしている。最近は実店舗型の小売店で、この手の問い合わせが増えた。この場合のWEB広告とは、検索結果に基づいて表示されるいわゆるリスティングではなく、大まかな地域を指定して配信するバナー広告の事だ。そして実店舗からWEB広告を受注するのはハードルが結構高い。なんと言っても費用対効果が説明できない。ECと異なり、広告の影響で来店したのか、たまたま来店したかどうかの判別がつかないからだ。

いや、WEB広告には効果以前にもっと悩ましい問題がある…


▪️WEB広告は、典型的な無形商材。

形のない商品やサービスのことを一般的に『無形商材』という。システム開発や採用支援、コンサルティングや教育、売買支援などがそれに当たる。そして私が取り扱う広告も、その代表格だ。確かにこれらのサービスには消費の対象となる物質的な『形』が無い。故に、販売の際は、その価値を論理的に説明する能力が求められると言う。全く同感だ。そして現在、私が取り扱うWEB広告はその中でも『無形レベル』が断トツに高い。

WEB広告ほど『形のない』サービスが他にあるだろうか…

▪️クライアントは、その実態を見れない。

無形商材に形は無いが、発注者にサービスそのものが見えないという事はない。システムはその挙動が確認できるし、コンサルティングや教育も、目の前で人が話すのだから見えないという事はあり得ない。そしてほとんどの広告も同様だ。CMなら該当の枠にTVを見ればわかるし、ポスターでもチラシでもDMでもクライアントがその気になれば、ユーザに届いているかどうかを確認する方法はいくらでもある。しかしWEB広告だけは、勝手が違う。クライアントのスマホやPCに、意図的に広告を表示させる方法は存在しない。本当に広告が表示されたかを確認する方法は、広告がたまたま表示された、知人や社員からの報告に頼るしかないのだ。

▪️作り手の我々も、その実態を見れない。

そしてWEB広告の厄介な所は、提供側である我々でさえ、実際の表示を意図的に確認する術が無いという点だ。たまたま表示された知人や社員からの情報に頼るしかないのは、クライアントと同じなのだ。もちろん管理画面で数字の推移はリアルタイムで確認できる。しかし極論、それが全くの虚偽であったとしても我々にはそれを確認する術がないのだ。Googleなどの広告プラットフォームを完全に信頼するしかない。いくら無形商材とは言え、自身が提供するサービスを、自身で確認できない仕事が他にあるだろうか…


このように、WEB広告は数字以外の実態がほぼ見えない。それはいくらでも不正ができてしまう事の裏返しでもある。少し考えれば『これ、実は配信全くされてなくても分かんないよな…』と誰もが気づく。クライアントは我々が広告プラットフォームを信頼するのと同様、我々を信頼するしかないのだ。故にWEB広告を取り扱う我々には、高い倫理性が求められる。無形商材で重要とされる、論理的な説明より、まずは信頼が求められるのだ…



「WEB広告を検討?そうですか…。本当にいいんですか?お金を払っても、実際広告が出てるかなんてわかりませんよ?そこは信頼してる?ありがとうございます。我々も、Googleを信頼する事しか出来ませんが。で、念の為にですが、効果とか期待して無いですよね?当たり前ですか効果とか、ほぼ無いですよ。ましてや売上なんてとんでもない… え?実際に効果があったと聞いた事がある?たまたまですよ。その日は天気が良かったとか…  考えてみて下さい。人生で広告を見て、『わ〜これ欲しい〜』とか『おお、行ってみよう』と思った事など、数える程しかないでしよう?それでも店舗の認知が上がるかも?お言葉ですが、今日スマホに出てきた広告を一つでも覚えてますか?眼中にないんですよ。眼中に…」


「え…。いや、そこまで正直な人は、初めてだよ!逆にWEB広告、やってみたくなったよ…」

「ありがとうございます。それでは…」

そう。無形商材の販売には、信頼が不可欠だ。
実際私は今、気に入られている。

そして無形商材への反応も、概ね想像が付く。

「まあ、どのみち予算はないけどね」


その見返りは、大抵『無形』だ。


いいなと思ったら応援しよう!

まし  |  言葉の何気なインサイト
気に入っていただけた方は、応援お願いします!

この記事が参加している募集