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YouTube プレミアムは、広告の存在意義を問いかける。
「YouTube プレミアムに入ってます」
部署のメンバーがサラリと言うのを聞き、複雑に思う。
まずは「自分も入ろうかなー」という気持ち。
月1,200円そこらで、あの煩わしい広告から解放されるなら安いものだ。
もう一つの感情は「自分の仕事否定するんか〜い!」だ。
そう、我々はwebマーケティングを生業としている。中でも主力であるweb広告で、圧倒的に多い配信面はYouTubeだ。
彼は広告の仕事をしながら、広告を拒絶している。
そんな奴いるか?
例えば、下戸なのに酒屋やホストをやっている、みたいな話しはある。それは体質の問題であって、お酒の価値そのものを否定しているわけではない。
しかし彼は、下手したら広告の存在そのものを否定している。どないよ、それ。
と、言いたいとこだが、そう思うのは、自分が業界に身を置いているからだろう。
私も一部のweb広告は正直わずらわしい。
広告というのはつくづく不思議なサービスだ。大抵の商品、サービスには明確な社会的必然性がある。コロナ禍で注目された「エッセンシャルワーク」はその代表だ。
医療・スーパー・教育・運送・介護・消防・警察など、これらの仕事を不要といえる人はいない。
対極にある芸能・芸術・娯楽なども、無くて死ぬわけではないが、不要と言い切れる人はほぼいないだろう。
マスコミや政治家は嫌われるかも知れないが、やはりないと困る。
一方、広告はどうだろう。広告を見る側は、煩わしいと思っている。広告主もやりたくてやってる訳ではない。広告なしで売れるなら喜んでやめるだろう。
昨今の原材料値上げでも顕著だが、削減対象になるのはいつも決まって広告費だ。
例えば「広告禁止令」が施工されたら、誰か困るだろうか?
広告が禁止されたとして…
【メリット】
①広告主はその分、商品やサービスに費用を使える。
②その結果は、消費者に価格や品質で還元される。
③広告に携わる人数も減るので、日本全体で生産性があがる。
「いや、広告がないと、ライバル社に客を取られるだろう」と、思うかも知れないが心配ない。ライバル社も広告ができないのだから、条件は同じだ。
続けてみよう。
④広告がない為、消費者は能動的に情報をとるようになり、社会全体のリテラシーが上がる。
⑤社会全体のリテラシーが上がれば、比例して政治家や官僚のレベルも上がる。
⑥結果として、国が抱える様々な社会問題が解決に向けて具体的に動き出す。
もうやるしかない。デメリットなんかあるかな?
【デメリット】
①広告がなくなれば、これまで無料だった数々のコンテンツが有料化される。
→そもそも無料なのがおかしい。今どき子供だって大道芸見たらお金を払う。
②新商品や新サービス、新店舗などの存在を知らせる事ができない。
→消費者の情報感度が上がるので問題ない。いいものであればアツという間に口コミで拡散されるだろう。
③広告業界に携わる人の仕事がなくなる。
→広告業界に限らず、時代とともに消える職業はいくらでもある。
というわけで、広告禁止令が施工されても、人類が大きく困ることはなさそうだ。私もYouTube プレミアムに加入しよう。
いや、違う。このまま自分の生業を否定するのは忍びない。完全主観で再考してみる。
『広告は単なる宣伝ではない。私達自身のセンスや言語感覚に影響を与え得る「出会い」といってもいい。それを否定する事は、自身の成分を否定するに等しい』
『web広告を煩わしく感じる一方、その広告に興味を持つ人が一定の割合でいる事も知っている。その人に広告は何かしらの影響を与えている』
『その人が、来店したり、商品やサービスを購入する。他人の行動に影響を与えた事は、費用対効果とか以前にテンションがあがる』
人は新しい事に出会いたいし、自分の事を知って欲しい。そして人は、他人に良い影響を与えたい。
これはビジネス以前に、人間の本性だ。
だから広告は禁止されない限りなくならない。いや、きっと禁止されてもなくならない。
YouTube プレミアムは、いったん保留だ。
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