見出し画像

「夏の空」     詩・本多裕樹

「夏の空」





空を見上げて、夏の夢

青き世界はどこまでも、懐かしく

過去に何があったわけでもなく

この時にしか無い静寂の明るさ




もう、こういうことは起きないと

もう、この日は永遠だと

そうだとしても、今は今

私たちはこの夏を永遠に感じる




海に山、平地のさまざまな野菜

キウリにスイカ

川原で遊ぶ

何気ない遊興




私たちはそんな原風景を見ながら

少女に出会う

麦わら帽子の

ワンピースの乙女




どこにもあろう

どんな田舎でも

馴染みはあるもので

そんな出会いの遭遇




この時を永遠に思いながら

その乙女と夏を過ごす

田舎の山に川

共に時を過ごす




名前をお互いに知らず

夏を過ごすお互いの関係

いつしか、祭りもあって

浴衣に身を彩る




自転車で迎えにいき

夜の花火を目指し

お互いの空間を楽しみ

花火に逍遥を感ずる沈黙




夢であったのではないか

田舎の村に

夢であろうか

そんな夏休み




君は来年も来るの

私はいるだろうか

君は明日も会ってくれるの

私は夢に思う




だから、お互いに名前を聞かず

ただ、出会うことに意味があることを

君を

君の姿を目に焼き付け




その思い出を幻想か

あやかしかわからず

君に会えたことは

幻であったかのように




だって、それはその場かぎり

一夏の恋もまたあろう

その夏の空間に

自由に知らぬ人とおもいっきり過ごす




ヒッピーでもなく

ただ、青春の一場面

君と過ごす夏

あなたと過ごす一夏




だから、自由と開放が

名も素性も知らず

身分も関係なく

ただ、青春の夏を共に過ごす恋か、何か





夏の夜、

スイカを食べて

夏の朝、

ラジオ体操




雨も降れば東家で語り合い

君の髪の匂いを感ずる

私はどことなく

その思い出を懐かしむ




あなたは、いつまでもいるよね

いつも一緒にいたよね

明日も会いましょう

今日は、共にいましょう夜まで、いつまでも




そうして、明日は僕はいなかった

夢だったのであろうか

幻想だったのであろうか

一夏は妖の世界であったのか




それにしてはみずみずしい思い出で

君の名を知らず

共に過ごした夏を

いつまでも思い出として





今日、どこまでも続く空を見ながら

君の浴衣姿を思い出す

そんな、美しい夏もあったのだと

幻であっても、良き光る瞬間の永遠を





いつも、会えるわけでない

夢なのか

夏という日々の霞に消えたり現れたり

青き空の白い雲





いつしか、そんなことも忘れて

社会に出てはいつも

良き思い出として

あの少女は今何をしているのだろうと夏に思う





夏は青春の瞬間

終わりはあるがゆえに

その限りある時間で

精一杯に遊ぶ




その楽しみに

麦わら帽子のワンピースの少女が

いつも、現れる

君はいったい夢なのだろうか




夏の田舎

スイカを食べて

霞に消える幻に

君を知る手がかりが夏の青き空であったということ







2024年7月24日 本多裕樹

いいなと思ったら応援しよう!