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東大合格に最も必要なのは、才能ではなく〇〇だ!
世は国公立大学受験の真っ只中。受験生は最後の勝負を必死に闘っている。
皆さんの中には来年、再来年、大学受験を迎える人もいるだろう。
もしくは、もう受験は終わったけれども、「日本一」と言われる大学に入るために必要な力ってなんだろう、と気になってこの記事を見てくれた人もいるかもしれない。
僕自身は、去年の受験戦争で何とか勝ち残り、東京大学に受かった現役東大生である。
しかし、決して天才などではなく、地方の公立校出身で、その学校の中でも最初は学年順位が3桁だったような凡人だ。
そんな僕でも東大に入れた理由、僕がその最たるものだと考える秘訣について、本日はお伝えしようと思う。
それは何も、特別なテクニックではないし、別段努力を必要とするものでもない誰でも簡単に持てる、単なるマインドセットだ。
結論から言おう。それは、東大を舐めてかかる気持ちである。
東大を舐めてかかる、「は?」と思った方も多いのではないか。
なんだ、ただの釣り文句か、そう思った方、記事を閉じずに、もーうちょっとだけ、僕にお付き合いいただきたい。
と言うのも、これは僕の単なる捻くれた個人的な感想ではなく、あのスター選手も訴えていたものだからだ。
皆さんは、一昨年のWBC、世界の名だたる強国との、侍ジャパンの激闘を覚えておいでだろうか。
その決勝戦の試合前、あの、世界の大谷翔平が放った名台詞を聞いた方も多いのではなかろうか。
圧倒的格上アメリカとの決勝を前にした侍ジャパンのメンバーに対してかけた、魂が震えるような言葉を。
「憧れるのをやめましょう。憧れてしまえば、超えられないので。」
人のパフォーマンスは、精神状態に多大な影響を受ける。
大谷翔平が言うように、初めから格上と決めつけ、負ける気で挑んで勝てる勝負などない。逆に勝算があると、人は手に届きそうなゴールに向けて必死に手を伸ばす。
それはスポーツでも受験でも一緒だ。
僕は東大に入り、同級生の中での関東の中高一貫校出身の男子の数に驚いた。彼らがごまんと東大に合格する一方、地方出身者や女子などのいわば「マイノリティ」からの東大合格者が少ない最大の理由は、絶対的な学力の差ではないと僕は感じている。
これは、僕の実際の経験をもとにして言える。
先述した通り僕は地方の公立校出身だが、この高校からの現役東大合格者は毎年1桁、つまり多くても学年の上位2.5%程度だ。
しかし、東大に入学した僕は、名だたる中高一貫進学校の出身者たちを見て、こう感じた。
「あれ、地元の同級生と、意外と能力は変わらないのでは?」
もちろん、東大生の中にはとんでもなく優秀な人も多いし、そうでない人も皆それぞれに光るものを持っており、尊敬に値する、たくさんの刺激を与えてくれる優秀な仲間たちだ。
しかし、僕の母校にだって、勉強にかけて彼らと同じくらい、いや、むしろ彼らよりも高い能力を持っているのではないかという友人はたくさんいた。例えば、地理の模試で全国一位を取った同級生もいたが、彼も東大には来ていない。
それも、勉強面に関して、地方公立校の僕たちは中高一貫と比較して学習進度が遅かったり、早くから塾に行く人が関東と比べ圧倒的に少ない(僕の塾の恩師がそう嘆いていた)と言う明確なハンディを背負っているにもかかわらず、である。
では、関東の彼らと地方の僕たちの、東大合格実績を明確に分けているものの正体は何か。
そう、それが、東大との心理的距離なのだ。
関東の彼らは、同じ学校の先輩がたくさん東大に行く。すると彼らの中には自然と、「俺らとレベルが同じくらいの先輩たちが行けたんなら、俺らも行けるんじゃね?」と言う気持ちが芽生える。
となると、東大の過去問などの難問にも、「解ける」「解けないと」と思って取り組むため、解けなければ大いに悔しがる。合格するために一点でも多くもぎ取る方法を必死に考える。そのようなプロセスから新たな学びをたくさん吸収し、気づいた時には本当に学力が東大合格の水準に達している。
逆に地方の僕たちは、ロールモデルとなる合格者の先輩が極端に少ない。となると、関東の彼らとは逆に「できない」と言う固定観念が先に来て、東大に対して立ち向かうより、逃げるようになっていく。実際、授業内の演習で扱う問題が「東大の過去問」と聞くと、それだけで怖気づき、「解けっこないよ」とハナから諦めていた同級生も多かった。
険しい山道を歩く時、先を行く人々が踏み固めた道を視認しながら歩むのと、目も前が霧がかっていてそのような跡が見当たらない、どこにつながるかわからない道を歩むのとでは、どちらがリタイア率が高いか。言うまでもなく後者だろう。
それと同じように、地方の秀才たちの多くは、東大と言う山についての正確な知識不足から、視界に霧がかかって先人が踏んだ跡が見当たらないがために、その山の峰の高さを過剰に見積り、「憧れ」ばかりを抱いて現実的でないと思い、登頂をリタイアしてしまうのだ。
実は僕も、最初はその頂に登頂するなんて夢にも思っていなかった平凡な一学生の一人だった。
しかし、僕の場合は、運よく東大を目指す仲間がたくさんいるクラスに入り込み、東大をいい意味で「舐めてる」恩師に学校でも塾でも出会うことができた。彼らの存在が、言動が、僕の視界の霧を晴らし、東大合格と言う山への道筋を明らかにしてくれたのだ。
だからこそ、これを読んでいる皆さんには、目標に「憧れ」を持つのではなく、ある意味で「舐めてかかる」くらいの軽い気持ちを持っていただきたい。何も東大合格に限った話ではない。資格の勉強からWBCの決勝まで、これは何にでも使えるマインドセットだ。
そして、そのマインドセットを持つために大切なことは、その目標を達成している先人とたくさん触れ合える環境に身を置くことである。ちょうど東大合格者を毎年多数輩出する、関東の進学校の学生のように。
きれいな建物もドアップで写すと意外と傷が目立つのと同じように、圧倒するようなすげえやつだと思う人も、近くで見てみると、意外といろんな瑕疵を持つ、存外普通の人間だったりするものだ。
そうやって、「憧れ」だった目標が「なんだ、意外と大したことないじゃん」と思えた貴方の目には、目標までの道のりにかかる霧は晴れ、
貴方の頭と体は目標の達成に向けてフル回転を始めているはずだ。