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「休養学」を読んでトレイルランの休養を考察する
トレイルランニングに役立てられないかを考察してみる.
「休養」というテーマに新しい視点を得たトレイルランナーが多いはずだ。登り坂やテクニカルな下り道を駆け抜け、タイムや心拍数に気を配りながら走る一方で、どれだけの人が「休むこと」に同じくらいの気を配っているだろうか?『休養学』は、ただの「休む日」を増やすための指南書ではなく、休養そのものを「トレーニングの一部」として積極的に組み込む重要性を説く本だ。
多くのランナーが抱える疑問、「どのくらい休めばよいのか?」に対して著者は明確な答えを提示している。疲労の回復は単に体力を取り戻すためではなく、より高いパフォーマンスを発揮するための準備でもあるのだ。つまり、休養を怠れば、筋力や心肺機能が「劣化」しないまでも「停滞」してしまう危険がある。一方、適切な休養を取ることができれば、体も心も次の走りに備えた「アップグレード」が可能だ。トレイルランニングにおける過酷な体力勝負も、実は「休む技術」で左右される部分が少なくない。
『休養学』の中でも特に印象的だったのは、「積極的休養」という考え方だ。これはただ横たわっているだけの「完全休養」とは異なり、散歩や軽いストレッチ、そして適度なクロストレーニングなどを通じて体をリフレッシュさせるものだ。トレイルランナーにとっての積極的休養とは、舗装されていない道や岩場を走る負荷から一旦離れ、筋肉や関節を新たな動きで柔らかく保つことに近い。例えばヨガや水泳は、トレイルランで酷使する下半身をリラックスさせ、ランニング動作とは異なる動きで全身を効果的にリフレッシュさせる手段となるだろう。
もう一つのポイントは、心の休養の重要性だ。トレイルランニングの魅力は、自然と一体になる爽快感やリフレッシュ効果にあるが、逆にそれが「練習しなくては」というプレッシャーに変わると、精神的な疲労が蓄積してしまう。『休養学』では、これを防ぐための「心のデトックス」が紹介されている。心のデトックスには、自然に触れることや読書、趣味に没頭する時間などが含まれ、競技から少し離れて自分自身をリセットすることで、次の挑戦に向けてのエネルギーが湧き上がってくるとされる。
トレイルランニングでの休養が効果を発揮する場面は、レース前や練習後だけではない。実際のレース中にも、積極的に「休む」ことが必要なときがある。過酷なアップダウンや変わりやすい地形に疲弊した体は、ただペースを維持するだけでは持たない。歩きながら景色を楽しんだり、呼吸を整えたりする「アクティブ・レスト」を取り入れることで、後半のパフォーマンスが大きく変わることもあるのだ。
こうしてみると、トレイルランナーにとっての休養とは、単に体力を回復させる行為ではなく、次なる挑戦に向けて心身を研ぎ澄ませるための「準備期間」ともいえる。『休養学』が教えてくれるのは、どんなにハードな練習計画も「うまく休む」というスキルなしには成果を発揮しないというシンプルな真理だ。山を走るときも、日常生活の中でも、「休む」ことは決して怠慢ではなく、むしろ「進化」のための最短ルートなのだ。
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