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デビスカップ ファイナルズ イタリアVSアルゼンチン 観戦日記 11/21

 

改めて思い起こせば、テニスとは縁があった。20代前半に務めていたマーチャンダイジングのライセンスの会社で、私はマルチナ・ナブラチロワとウィンブルドンのサブライセンス担当者となり、ライセンサーのIMGと一緒に仕事をしていた。81年、アメリカ市民権を得てからのナブラチロワの活躍は目覚ましく、82年全仏OP、ウィンブルドンなど4大会を三連勝し、世界記録をどんどん更新していった。当時の私は仕事が忙しくて彼女の試合を見る時間がほとんどなかったのだが、ライセンスの契約に4大大会優勝時毎にナブラチロワに支払うお祝い金の項目があったので、度々の知らせに驚いたものだった。(笑) 一方ウィンブルドンは、文具やタオル、寝具などのサブライセンスをしていたのだが、ウィンブルドンで大会が開催されるようになって100周年の1984年に、東京でも大会のレセプションが行われ、23歳の私はドレスアップして出席し、つたない英語で大会の方々にご挨拶した。(汗) 2022年センターコート100周年には、大会がロシアと同国を支援するベラルーシの選手たちのエントリーを拒否。ナブラチロワ、キング夫人、ジョコビッチなどは反対派として声をあげた。私はケンブリッジにいたので、せめて予選を見に行きたかったのだが、鉄道のストライキなどで行けず、毎日BBCで観戦していた。車いすの国枝選手が生涯グランドスラムを達成し、感動した。閑話休題。

今日の対戦は前回のデビスカップ優勝国、イタリアVSアルゼンチン。今年ATPで断トツ一位になったシラーの試合が見られるので、チケットを購入した。同伴のMさん夫妻の息子さんは元テニスプレーヤーで、今はコーチをしている。今日のチケットはMさんが昔の息子のコーチからこの席からよく見える、と教わった辺りを買ってくれた。上の方だが、確かに素晴らしい眺めだ。さすが。一列目なので下を覗いたら、真下にアレックス・コレジャ達の試合中継スペースがあった。私は彼の実況中継が大好きなので、うれしい。

誰が出てくるか?

前回までは日本代表とスペイン代表の応援と観戦だったので、緊張したせいか、一日3試合見終わると体のあちこちがコチコチ。楽しいけれど疲れた。しかし今日はのびのびと観戦できる! これもまた、いと楽し。試合は17時から。着席して早速ビールを買いに行くと、なんとデビスカップの会場内でのアルコールの販売はしていないと言う。スポンサーにマラガのビールメーカー、Victoriaがついているのに??ノンアルコールの気分ではないので、あとで外で買うことにする。やれやれ。BJK杯の時には駄目と書いた紙が貼ってあったが、皆外で買って来て持ちこんで飲んでいた。しかしそういえばスペイン戦で、私が飲みかけを持って入ろうとしたら駄目だと言われて捨てた。ここでは完全に禁止らしい。

1ユーロのビールのコップ

イタリアの応援団はすごい。太鼓4台、トランペット4台にメガフォン3人。大音響で応援している。一体この間のスペインは開催国なのにどうして応援団がいなかったのかと、またまた疑問に思う。アルゼンチンも応援団は固まっているが、イタリアの迫力には負ける。私たちの周りからは、両国の言葉が聞こえる。イタリアは近いし、スペインに住むアルゼンチン人は多い。アルゼンチンは同じスペイン語だが、独特のアクセントがあるので、すぐに分かる。

第一戦はムセッティ VS セルンドロ。アルゼンチンチームの監督は以前ナダルやモジャとよく対戦していたギジェルモ・コリアだ。ムセッティはイタリアの22歳。オリンピックで銅メダルを取り、ウィンブルドンでもベスト4まで行った。セルンドロは26歳。22年にトップ100に入る。第一セットが始まったが、どうも面白くない。下をのぞくとアレックスは中継が無いのか、ポップコーンを食べながら観戦していた。

左がアレックス

私とMさんは次のシナー戦に備え、4-6で第一セットが終わった時点で外に出て、ファンコーナーでビールを買って飲む。間もなく第二セットは1-6。アルゼンチンの勝利。これで次にシナーが勝てばダブルスが見られる。うれしい!

ビール休憩
いよいよシナー!

第二試合ヤニック・シナー VS セバスチャン・バエス。生のシナーは初めて。第一戦では自国の選手の応援をしていたが、シングルスでは無表情。いつもテレビで見ている通り細くて顔色が悪くて、名前もイタリア人らしくないと言う話になり、出身を調べたらご両親はドイツ人で、北イタリアのオーストリア国境近くの寒い街の出身だと分かり、何となく納得。バエスは23歳、現在世界ランキング27位。アルゼンチンのトップスターだ。ムセッティ、シナー、バエスとカルリートも含め最近の20代前半の若手たちの活躍がすばらしく、これからも楽しみだ。

収録中のアレックス

二人のプレーはやはりレベルが違った。お互い攻めるテニスでシナーはさすがに技術の幅が広い。ここで勝たなければイタリアは勝ち進めない。応援団も力がこもる。バエスが初めのブレークを取り、シナーが持ち返す。結果は6-2。迫力と気合のこもる試合を存分に楽しんだ。後半はストロークが続くものの、バエスは点数に結び付けず、シナーの圧勝。6-1で終わる。

ほっそりした姿にすごいパワーが

試合後のインタビューでシナーはこう言った。
「勝たなければならない試合だった。(NittoATPファイナルズとは)非常に異なるコンディションだったんだ。コートがとても速くて、プレーするのが大変だった。このコンディションに適応する時間があまりなかったけど、今日は良かったよ」といつもの調子で笑顔なし。

淡々としている

ダブルスのメンバーはその時にまで発表されない。イタリアはなんとシナーと28歳のマッティオ・ベレッティーニ。イタリアのイケメン選手で弾丸サーブがすごい。怪我が続いたが、いつも面白い試合を見せてくれる。この組み合わせはうれしい驚き。今回の目的は生シナーだったが、まさかダブルスも見られるとは。対するアルゼンチンは、マキシモ・ゴンザレスとアンドレス・モルテーニ。この二人はダブルスで昨年のTPファイナルズにも出場した。さぁどうなるか?

イタリアのリード

試合は接戦で始まる。シナーはベレッティーニとよく相談し、慎重に進めていく。そして大事な所でブレイクが決まると喜びを表していた! 初めて見たシナーのガッツポーズ。段々調子をつかんだようで、二人の早くてラインぎりぎりのサーブも決まり、6-4でイタリアリード。
後半戦はタイムの後に楽しそうにコートをスキップするシナーを目撃! アルゼンチンも頑張り、応援合戦も盛り上がる。そしてシナーとベレッティーニは最後にブレイク、7-5でイタリアの勝ち! 

今大会最強の2人

試合が終わるとシナーはイタリアのチームメイトにあいさつした後、反対側のアルゼンチンチームの席に近寄り、選手たちに挨拶をして回っていた。いい奴!

楽しかった!

今回は、いつもポーカーフェイスで分からなかったシナーの人柄を垣間見、そして今年の世界ナンバーワンの、タフで安定した、すばらしいプレーをシングルス、ダブルスと楽しませてもらい、大満足の一日だった。

そして後日、オランダはドイツに2-0で勝ち、イタリアはオーストラリアにベレッティーニとシナーが2-0で勝ち、決勝進出。決勝戦でもこの二人がシングルスでストレート勝ち、イタリアは二年連続優勝となった。そして女子もBJK杯を優勝したので、ダブル優勝。すごい。

今日のニュースで来年から27年までのデビスカップファイナルズはイタリアで開催されると発表された。やはりスペインでの開催はこれが最後だった。BJK杯の日本代表の2日間、そしてその後決勝進出したイタリアとオランダのダブルスを含む3試合が2日間見られ、ラファの引退試合とあいさつが、36年住んでいる地元マラガで満喫できて本当に良かった。

アムスのMさんから、ラファと闘ったボティックが同じテニスクラブで練習していたので話したら、ラファは彼の子供の頃からの憧れの選手だったそうだ。イタリアにもシナー達に憧れてか、優秀な若手選手がどんどん育っているらしい。スペインでは最近もっぱらパドルコートばかりが作られているが、ラファ、フェレール、エミリオ・サンチェス、アルカラスなどが素晴らしいアカデミーを運営して後輩たちを育てている。フェデラー、ラファ、ジョコビッチの黄金時代は終わりかけている。彼らに続けと、夢を追いかける若者たちの今後の活躍が楽しみだ。


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