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4-4 スペインのディープな食とお酒の旅ベテランスペイン撮影コーディネーターのぶらり旅

5月8日 4日目 アルバラシン, ブロンチャレス,ぺラセンセ城,セリアの湧水などテルエル周辺の名所をドライブ

 今日はSが車でテルエル周辺のドライブに連れて行くと言う。
まずテルエルの世界遺産であるエスカリナタという階段。電車の駅の真ん前にある、ムデハル様式のレンガ造りと鋳物の美しい大階段。この街は標高915mの所にあるが、あちこち高低差が沢山ある。今では街の上に行くエレベーターがあるが、昔は旅の行き帰りにみんなここを歩いたのだろう。

エスカリナタの階段

 Galeria de los espejosというローマの水道橋跡がトレッキングコースになっている所に行く。ローマ時代にアルバラシンからセリヤまで全長18kmの水道橋だった一部分。ローマ人とアラブ人は水の扱いに長けていて本当に感心する。

ローマ時代の水道橋跡

 最近ナショナルジオグラフィックスペイン一美しい村に選んだ、アルバラシンに着く。かつてタイファ王国の首都だったこの街にはイスラムと中世の雰囲気がそのまま残されていて、タイムスリップしたよう。町の旧市街は重要文化財。急な傾斜地に建てられた建物は赤茶けた色で、形がまるでキュービズム。どこを見ても美しい。テラスなどの鋳物もとても手の込んだものが多い。街の上に続く城壁も素晴らしい眺めだ。街を歩き回ってから、カフェに入って窓越しの眺めを楽しむ。今回は時間がなかったが、前回はこの街の保存・修復をした財団がやっている宿に泊まった。そして夕方から夜この街を散策すると、ほぼ誰もいなくて、よりタイムスリップ感の強いマジカルな体験だった。

アルバラシン
上の方に城壁が続く

 材木用の広大な松の森を超えてブロンチャレスに着く。ここはサラゴサやマドリッドから避暑や、呼吸器系の患者が長期療養に来る、夏涼しい空気と水のきれいな村だ。Sの両親はサラゴサで写真館をしていたので、夏休みには必ず兄弟三人でこの村の祖母の家に預けられ、毎年過ごした。そして最近その家の兄弟の相続分を買い取り、修繕して新たに住めるようにした。柱や家具など彼女が修復したものもたくさんあり、広い家の至る所に家族の思い出が詰まったすてきな家だった。古いものを代々大切にしていく精神は見習いたい。

古い玄関

 ジローナの友人のお土産にこの地方名産テルエルの生ハムの足一本を買いに行く。ここの気候は生ハムを乾燥させるのにとても適していて、スペインでも有名な産地の一つ。沢山下がっている中から希望の物を選び、鹿の角でできたピンを生ハムに刺して匂いを嗅ぎ皆でチェック、傷んでいないことと香りの良さを確認する。取材の時に聞いたところ、足の蹄に向かってバレリーナの足のような足首のしまったきれいな形のものがおいしいとか。ボデガという熟成種類の9kg位の後ろ足を94ユーロで購入。店には他にも色んなものが売っていて、目を引いたのは生ハムの足の骨5本1パック3ユーロ。これでラーメンの出汁をとったらおいしそう。この辺はトリュフの名産地でもあり、フランスに大量に輸出しているそうだ。さっそくトリュフ味のパテを買う。次はトリュフ祭りの時期に来よう。

気に入った生ハムを選ぶ

昼はRestaurante El rinconcilloに行く。この村のディープな食べ物と言えば、Ternasco de Aragon(アラゴン州の乳のみ羊)。母乳と自然のシリアルのみを食べて、9-12,5kgまで成長した子羊の肉。柔らかくて臭みが全くなくとてもおいしい。この羊のラムチョップのソテーと、先ほどの生ハム店員お薦めの、豚バラ肉の塩漬けの薄切りを揚げたものがのっている特製サラダ。そしてミーガスの目玉焼きのせ(固くなったパンを小さくちぎり、チョリソ、血のソーセージ、豚バラなどと一緒に暖炉やストーブの弱火にかけてじっくり作る田舎料理)をシェア。スペインは高級レストランでもシェアして食べることを嫌がらない。(ちなみにフランスやイギリスなどではマナー違反)皆食いしん坊なので、少しずつ色々食べたいところは日本人とよく似ている。
飲み物は喉が渇いたのでそれぞれ異なったビールを頼む。バレンシアのTuria、地中海ビールDammノンアルコールトースト、Dammレモン。最近の流行ノンアルコールトースト。色が濃く味もしっかりしていてビールを飲んでいる気分になれるので人気。レモンは、ビールをレモン味の炭酸で割ったもの。寒い土地の料理は胃にどっしり来るものが多いので、デザートはパスしてコーヒーを飲む。私が昼食後に飲むのは、エスプレッソマシンでいれるカフェイン抜きのストーレートコーヒーのアイス。スペインの場合アイスコーヒーというのはなくて、自分で熱いコーヒーに好みで砂糖を入れ、氷が入ったコップにこれを入れて出来上がり。入れたての濃いコーヒーなので、カフェイン抜きでも結構おいしい。

子羊のラムチョップ

 次の目的地はEl castillo de Peracense(パラセンセ城)。ここは南アラゴン地方で最も見ごたえのあるモニュメントのひとつ。地形を生かした城塞と城の建築。そしてかなり遠くの敵もすぐに見つけることができる見晴らしの良さ。この地で発掘されたものからその起源は青銅器時代とも言われ、1170年まではアルバラシンのタイファ王国の守りの要塞だったという。この辺の土や石を使って建てられているので、アルバラシンの村と同じ色の赤い城。

地形を生かした赤い城

 自然の湧き水の出るCellaの湧水でお茶休憩。沼津の柿田川湧水群もこんなきれいな水色だった。不思議。この湧水は時には1秒に3500Lの水が湧く、ヨーロッパ最大、世界第二位の湧水だとか。この地域ではこの水を使って育てたセジャ・ジャガイモが名産で、カフェでも売っていた。
カフェのテラスはプラタナスの木が剪定されていて、夏にうまく木陰を作るように隣の木と繋げて誘導していて面白い。

湧水

 テルエルに戻り、いくつもの水道橋の合間を縫って旧市街に到着。街を少し散策してBar Los Planosで名物の生ハムをトマトとオリーブオイルを塗ったトーストにのせたものと、トマトサラダと赤ワインで軽い夕食。帰ったら窓からの空が美しかった。

テルエルの水道橋
日暮れ


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