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散歩は、夜。
やっぱり、夜の散歩が好きだ。
人も減り、車通りも減り、音も減り、光も減る。
少し冷たい風が頬にあたって気持ちがいい。
夜独特の静寂が、大らかな安らぎと、少々のわくわくとドキドキを演出してくれる。
寒い間は日の入りも早く、夕方暗くなってから一人で散歩に行っていたのだけど、日が伸びてからはなかなか、足が遠のいていた。
昨日、もっと夜の更けた時間に旦那さんとお散歩に行きたいなと思い立って、寝る前のお散歩に誘った。
ほとんど人もいないことだし、久しぶりにマスクなしでお散歩することにした。
マンションを出てすぐ、マスクをした人とすれ違う。
なんだかその一瞬、ほんの少しだけ、悪いことをしている気分になった。
この夜にすれ違ったのはこの人だけ。
空を観ながら歩いても、変じゃないし明るいときより危なくもない。
昨日の空は少しくもりで、ほぼ新月。星も少なかったな。
いろんな匂いがした。
土の匂い、草や葉っぱの青々とした匂い、近くの工場の化学的な匂い、コンビニの後ろからは油の匂い。
もっと清々しい匂いを勝手に想像していたので、臭くて、なんかちょっと笑った。
マスクが当たり前ですっかり忘れてたけど、こんなにもいろんな匂いがしたんだとびっくりした。
ちなみに私の鼻は、警察犬並みの嗅覚。
二人で将来の話をするのが楽しい。
足をすすめながら、旦那さんの話を聴いたり、私の話もしたり。
途中、旦那さんが急に幼稚園の外壁を指差して、
「なんか顔に見えてきた」
なんて言うもんだから、ホラーが大の苦手な私は、反射的に旦那さんの腕を乱暴に引っ掴んだ。
唐突な肝試しタイムは、ふざけた話で急速にかき消した。
もっと歩いていたかったけど、だんだんと私の小さな目が閉じ始めたので、ゆるやかにおうちの方向を目指す。
足だけ洗って、眠る準備をしてベッドに入る。
程よく疲れたふくらはぎが、横たわることでだんだんと力が抜けてくる。
これ、好きだ。
寝る前のお散歩、好きだ。
旦那さんと二人だから、好きだ。
見晴らしが良い景色があるわけでも、幻想的な夜空が広がっているわけでもなく、ドラマチックでロマンチックな何かがあるわけでもない。
もしかしたらこの先、さらりと忘れてしまうかもしれないくらい、特になんてことない日の散歩。
今夜も誘ってみよう。
「お散歩、行きませんか?」
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