おふくろの味を強いてあげるなら、コロッケかな。
母の作る料理の記憶がほとんどない。
大嫌いだったピーマンも、肉詰めならなんとかごまかしごまかし食べられたことと、食べないと怒られるから、涙目になりながら無理やり口に押し込んで食べていた添え物のキャベツ。
それと、今日お話するコロッケの3つくらいしかない。
あんな感じの母だったのに、なぜ面倒オブ面倒なコロッケを作ってくれたのか。
なんてことない、きっとただの気まぐれだ。
2回ほどしか出会えなかった事実が、それを物語っている。
2回しか食べていないのに覚えているくらい、母のコロッケはとてもおいしかった。
おふくろの味なんて全くないと言っていたけど、コロッケだけはおふくろの味と言っていいかもしれない。
じゃがいもを潰して、炒めたひき肉を混ぜ、味付けは塩コショウのみ。
実際に作ってるところを見てたわけではないからたぶんだけど。
市販のブルドック中濃ソースをかけて食べるなんの変哲もないコロッケだ。
それがとてつもなくおいしかった。
じゃがいもとお肉の味だけがしっかりとする、余計なものを一切感じないなんとも安心する味だった。
そのコロッケを食べてから、お店で出会うコロッケを食べてもなんか違うなと感じるようになってしまった。
メンチカツはおいしい。でもコロッケだけは、コロッケであってコロッケでない。
“外の”コロッケとして考えれば、たまに食べる分にはおいしいと感じることもあったけど、どれだけおいしくても、私にとってはなんだかニセモノ感は否めない。
大人になって自分で少しずつ料理をするようになってからも、作り方を調べてその工程の多さにびっくりした。
揚げ物は処理が大変だからおうちではしたくないのもあったし、作る選択肢は微塵も残らなかった。買ってくるもの、という感覚が定着したままだった。
おうちでするようになったのは本当にここ1年くらいで。
少ない油でも揚げることができると知ってから、手の届きそうな範囲から少しずつ挑戦し始めた。
2ヶ月くらい前から、おうちでの揚げ物を楽しむ余裕が徐々に出てきて、フライにしたらおいしい具材を調べていたところ、たまたま見つけた。
その名も、“揚げない”コロッケ
次の日にすぐに食材調達。からの作る。揚げないからかんたんかんたん。
それがこちら
どどん。
普段は見た目なんて気にせずドカドカとのっけるだけなので、いざ写真用にと気にしてみると、料理を撮るセンスのなさに少ししょんぼり。
本家のコロッケと違って味気なさMAXだけど、何度か作って最終的にこの形に行きついた。パン粉は別盛りにして、口に運ぶタイミングでちょこちょこかけるとずっとサクサク感を感じられるのがいい。
具材はひき肉だけ。塩コショウでしっかりめに味付けをする。プレーン、青のり、チーズの3兄弟。チーズがダントツ人気。
パン粉はマヨネーズできつね色になるまで炒る。やり過ぎると焦げる。弱火でじっくりと。
食べてみると、見事に母の味だった。おもわず涙が出そうになる。
旦那さんも「めちゃくちゃおいしい!」と言ってハイタッチしてくれた。すぐさま食べ終わり、おかわりもしてくれた。
余計に泣きそうだった。
このレシピを知れてよかった。
どうしようもない母だったけど、気まぐれだったとしても手作りコロッケを作ってくれたことには感謝している。
亡くなる間際、「迷惑かけてごめんね」とばかり言っていた母だけど、迷惑以外のこともちゃんとしてくれていたよって言えるだけの大人になっていきたい。
わが家の今日の夕飯は、揚げないコロッケです。
たくあんを細かくして入れたり、カレー粉とかもアリだな🤔