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山林昆虫記:昆虫類の写真に名前がついたのでご報告
今年の8月に我々と北海道の奥山のホロカトマム山林で2週間一緒に過ごした🏴昆虫学者のクレイグは、帰国してから殺人的な忙しさ. . . に見舞われたそうで、ほんと〜にすみません。その忙しい合間を見て、我々が撮影した虫類の写真を全部見て、
写真に撮った一枚一枚にできる限りわかる限りの昆虫類の同定
をしてくれました!
全部の写真を丁寧に、拡大しながら詳細まで解析して、日付、撮影者、昆虫の名前をつけて送り返してくれました。私にとってはこんな特権みたいな経験ができて、これまで何度となく歩いてきたうちの山で、ほぼ一度も見たことも考えたこともなかった多数の小さな生き物たちの存在を垣間見ることができ、今でも楽しかった想いが満載で、写真に名前がついて戻ってきて、嬉しくてたまりません。
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写真だけでは完全に同定できない種類もあるし、まだアルコール漬けにして送ったサンプルの同定も終わっていません、クレイグからの最終レポートも待ちの状態。
誰もが喜ぶ美しい写真というわけではない(また虫嫌いの人にはすみません)のですが、まとめご報告させていただきます。
水生昆虫
ホロカトマム山林は2012年に水源涵養保安林という保安林(許可や届出がなく木々を伐採してはいけない)の指定をとりました。山からは小さな湧水の渓流が四の沢川やホロカトマム川に注ぎ込んでいます。
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四の沢川は浅く流れが早いのです。何となく、小さな生き物は素人目には全部流されてしまいそうに思えるわけです。ここでクレイグが川底を長靴キックして網でさらい、トレイに引き上げ、小さな白いスプーンで小さな生き物たちを見せてくれるまで小さな川がこんなに豊かな生態系になっているとは考えたこともありませんでした。
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白いのはスプーンの柄の先部分なんです
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分かってはいても、こういう捉えられた自然の生き物の図は辛い
写真で見てもここから出して欲しいと思っているように見える
(でも、成虫になったカワゲラの寿命は数日間なのだそうです)
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川そのものの多様性が生き物の多様性を支えるのでしょう
多様性はチラ見だけでもこんなにあるんですから驚きです。
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透き通る体のカゲロウ
蝶々やとんぼなど
クレイグが水生昆虫の専門家ということもあり、水生昆虫にメインの座を奪われた感はありますが、素人的には蝶々やトンボが昆虫類オーバービューのスターであることは間違いありません。ここには蛾もちょっと含めますが、今回のオーバービューでは夜のライトトラップで蛾がやってくる前にあまりの羽虫の多さにもう1〜2時間で退散したということもあり、蛾の種類は多くありません。次回の課題として、蛾に注目してみたいと思っています。
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このウンカという虫を蝶やとんぼのカテゴリーに入れるのは、乱暴で間違っていると思われますが、クレイグのお気に入りはこの白い羽に赤い「ふ」が入ったウンカ。見れば見るほどおしゃれな朱色です。羽を広げると波波型の模様が見えますね。
このウンカですが「ウンカ」とググるとお米を食べる害虫、などとの記述が出てきます。仕方のないことですが、虫類はいつも「害虫」として人間 vs 虫のような説明が多くて、知りたいのはあんまりそこじゃないんだけどなあと思うことばかりなのですが、なんと、最近note内で他のクリエイターさんが書かれていた良い情報を発見しました。
ウンカがお茶を美味しくする
ウンカの一種であるチャノミドリヒメヨコバイというウンカの一種が茶の葉を齧ることによって、茶が後に発酵した時、独特の香りが生まれ、お茶を美味しくしてくれるのだということ。こうやってウンカという小さな虫が害虫でも益虫でもなく、生態系の一部である大切さを感じさせるお話です。
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見分け方の難しいことよ
マユタテアカネは眉があるのよ
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甲虫とか
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「ゴミムシ」とはゴミに集まる小昆虫などを捕食する虫であることに由来するとか。
このヤホシゴミムシは樹上性
この白い斑点を「華麗」と表現しているブログも見つけました
ヤホシゴミムシの右側の写真、奥に見えるのは、カロリーメイト、メープル味。夫もクレイグもカロリーメイトはメープル味がお気に入り。私はカロリーメイトがいまだに太る元になるのではないかと心配しているのですが、本当のところどうなんでしょうね。あとは二人でゲラゲラ楽しそうにコンビニで買うものはポカリスエット。「Pocari Sweat」の大きな印字を見て、どうして「汗」にお金を払って買うのさ?と、思うのだそうです。余談ですが。
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容易に泡を噴くムシなのであろうことが想像できる
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(あなた方忙しそうだから)
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なんか小さくても凶暴そうですが . . .
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(林道に停めていた車のボンネットの上)
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そういう役割も大事なの、わかるよ
甲虫の王様といえばもちろんクワガタ、カブトムシ。
何度となく登っている自分の山ですが、なんと10年以上、クワガタに出会ったことは一度もなかったので、こういう王様たちは古くて朽ちているような巨木のある森にいるはずでうちの森はまだ若いからなあとなんとなく思っていたのですが、昆虫学者たちがヒョイっと倒木の影を除くと、いるいる。本当にいる。
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倒木は以前は歩道にかかっているものなどが気になってノコギリで切ったり片付けたりしたこともあったのですが、数年も経つとほぼ目立たなくなり、こうやってクワガタなどの住処になっていくのですね
歩いていてよく見かけたのがコエゾゼミ
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拡大されてみると、緑色の縁の羽が美しい
バッタ、そのほか
フキを食べるというサッポロフキバッタ。その名の通り、フキバッタの中でも札幌に特有の亜種とのこと。
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面白いのは、サッポロフキバッタには飛べる羽がないので移動能力があまりなく、ローカルに生まれローカルで育つようです。そして更に面白いことにサッポロフキバッタの性染色体 XY/XX(メス、オスを決める)には他では見られない転座と呼ばれる集団が存在するのだそうです*
*サッポロフキバッタには,オスがX染色体を1本,メスが2本持つ「本来の集団(X0/XX集団)」と,X染色体が常染色体に転座(translocation)を起こして生じた性染色体を持つ「新しい集団(XY/XX集団)」が存在します (琉球大学の論文より)
ローカルに生まれ育つため、近親相姦を避けるための苦作なのでしょうかね。ホロカトマム山林内のサッポロフキバッタはきっと典型的東部田舎もんに間違いないでしょう。
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ハネナガフキバッタ
こちらはひし形をした模様があるのでヒシバッタ。
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忘れられない存在感のキバナオニグモ
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ザトウムシなんですけどね、長い前足があることからめくらの座頭市の持つ杖のように見えることからつけられた名前だとか。虫の名前のつけられ方ってホント興味深いです。
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とは書いたものの、名付け親の想像力がすごくて感心してしまう
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人間の目線では一見静かな森。今まで見えていなかったものが見えるようになった2週間。以前ちょっと虫は苦手だなと思ってた私が、挑戦して良かったこと。
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森の中ではこちらから探しに行きます!
最終的にクレイグにより写真などで同定された種は180種類ほどになりました。エクセルで表になっていますので、ご興味のある方用に。ダウンロードできます。
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とにかく毎日楽しかった
こうやって奥山の山中で出会う虫たちがなんのためにいるのか、どんな役割を果たしているのか、どうしてこんな形になり色になっているのかなどと疑問に思い出すとキリがなく、その答えもほぼ見つけることはできません。そういう、答えを出そうとするのではない過程、世の中は、自然は、大きくてどこまでも複雑であるということを体験すること、はとても大事だと最近思います。
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