オークションで手に入れた、1988年のピノノワールに挑戦
ワインならフランス
フレンチワインならボルドー
ボルドーならカベルネ・ソーヴィニヨン
などなど、「これはこうである」というような自分なりの結論を見出していくという過程は楽しいものであるし、そういうマイルールを肴にして会話は広がるもので、私もそういうお話を聞くのは大好きです。その過程において、どれだけ試行錯誤を重ねているかがカギですけどね。
私の場合、ワインならイタリアモノが好き。フレンチであればフランス2大産地の ボルドー vs ブルゴーニュ Bourgogne(バーガンディ Burgundy)であれば断然ボルドー派です。フランスを数週間ドライブ旅行をした時に、ブルゴーニュよりも、ボルドーの葡萄畑の方が美しかったしなあ。いや、しかし、そう言い切れるほどのいろんなワインを試しているのかと言われれば答えは否。
つい先日、エディンバラの庶民的オークションハウスでさまざまなワインが売りに出されておりまして、何しろそういう「古くて」「変わったもの」が大好きな考古学者の夫に引きづられるようにして、行ってまいりました。庶民的と書いたのは、数箇所あるオークションハウスでも、高級なものばかり扱うところからガラクタ市場に近いものまでランクが色々あるわけで、プロでもない限り、いきなりお高いものに手を出すよりも、興味本位でまずは庶民的なところに行ってみた感があります。
オークションで買い物をする際には大事なことが一つ。
当たり前といえば当たり前ですが、二人で相談して、いくらまでなら許容できる範囲かを決めてメモしていきます。簡単なことのようですが、モノの価値というのは「自分の器を反映する」というのか、これまでの経験やこれからの見通しやいろんなものが複雑に絡み合って決められるものなので、実はとても難しいことなのです。その一番難しい「どこまで出せるか最高額」という点を、オークションの会場でその雰囲気に流されながらその場で決めるのはリスクが高いので、悩み悩み、前もって決めておくのが成功の鍵。
さて当日。
これほしい人〜?
はいはいはいっ!
という感じでは全くなく、淡々と、いく・いかない、は頷く程度のクールな進行です。目星をつけているものになると競争相手を横目で伺いながらのポーカーフェース。
古いワインなんて今までしっかり向き合ったことがないので、本当にのめる代物なのかどうか、もうリスクテイキングではありますが、色々と購入してきました。面白かったわ。
このうち、6本まとめて購入した1988年のファヴレイ社のピノノワール。ネットで検索しても、この36年前のヴィンテージで大体相場がいくらなのかは出てきませんでした。2021年のファヴレイ社のピノノワールであれば1本£36.83とAmazonでは出ています。ハンマー価格は1本£20程度に抑えることができたので、上出来ではないでしょうか。
次に本棚に眠っていた世界のワイン本を出してきて、ブルゴーニュ、ファヴレイ社を調べます。
コートドニュイ/ニュイ•サン•ジョルジュといえばロマネ•コンティ社が有名ですが、ヴォーヌ・ロマネ村の斜面の中腹に、グラン・クリュ畑をもっているわけです。グランクリュ>プルミエクリュでグランクリュは最高峰の格付け。
(コートドニュイ/ニュイ•サン•ジョルジュをコートド•ニュイ•サン•ジョルジュ、フランス語のcôté=側というふうに勘違いしておりましたが、
côté = a masculine noun meaning side
côte = a feminine noun meaning rib, slope, coast
コートドニュイはフランス、ブルゴーニュ地方のワイン産地『黄金の丘陵地』(コート・ドール)の北側の場所そのものを指しているのですね(ニュイは「北」の意)。本文間違いがあったのでlofty_donkey77さんのコメントをお借りして書き直しました。)
この本にも
と書いてあります。しかししかし、この最高峰のワインの話は横においておき、肝心なファヴレイ社は、というと
と書いてあります。
プレモーとは:Premeaux-Prisseyというコートドニュイ•サン•ジョルジュ(ニュイ•サン•ジョルジュの近く)の場所を指し、
ネゴシアンとは:フランス語で「卸売商人」「交渉人」を意味する言葉ですが、ワインの生産者でありながら仲介業者のような働きをし、自社でブドウ畑を所有せず、農家やドメーヌからブドウや果汁、ワインを買い付けて、醸造や熟成、瓶詰め、販売を行うのだそうです。ブルゴーニュには、
小規模生産者が多いため、ネゴシアンの果たす役割はとても大きく、ネゴシアンの腕前がワインを決めるのだそうです。
ああ、これで納得です。購入したこの古いピノノワール(ブルゴーニュ)のワインには1988年というヴィンテージ、フランス産、ファヴレイ社、そして、真ん中に黒い筆記体で Joseph Faiveley と書いてありますがこの人はネゴシアンなんですね、そして、畑の記載がないのはコートドニュイ•サン•ジョルジュの小規模生産者によって生産されたピノノワールを集めてできたワインだからなんですね。
このサイトによれば1825年から続くファミリービジネスでJosephがファヴレイ社と名付け、今は自社の畑も持つようになって大きくなっているとのこと。
もうここまで調べたら、6本もあるんだから、1本ちょっと開けてみようよ!?と気の短い私が夫に提案をしましたが、速攻断られました。
夫によれば
• コルクが壊れることを前提に、ワインの不純物や沈殿物をろ過する布を用意せよ
• コルクを開ける数時間前に横に寝かせてあるワインを立てよ
• 2時間前に開栓してデカンタにうつせ
• ワインに合う食事が必要
• 一緒にリスクを分かち合う友達を呼べ
との条件付きで、今まで開封できずにきました。
とのこと。まじか . . . 。
さてそこから数ヶ月。
今回、上記の条件が整い、晴れてドッキドキの日がやってまいりました。選んだのは夫の誕生日です。まあ頑張りました。今までお料理を作ってからワインを決めるというのが普通だったのに、初めてワインのために料理を決めるという真逆のやり方。
1988 ピノノワールに合うお料理を夫に提案させると、AIを駆使して答えを持ってきます
これを大いに参考にして、作りましたよ。
クリーミーなヤギチーズとキャラメル化させたオニオン、ビーツ、いちじくをつめたミニタルトを軸にして、酸味を効かせ甘みを取り入れ、でもあまり味が濃くならないようにしました。
デカンタした際に香りが良かったので、結構安心して、早速2時間待ったピノノワールと一緒にいただきます。
ピノノワールは味より<<<香り、と言われているだけあり、フルーティーないちご的な香り。オレンジ色に成熟したやや淡い色。酸味が淡いタンニンによって引き出されます。確かにガッツリ系ではなくてエレガント系でニュアンス系、なるほどねえ。ワイン単体で飲むよりもやはりお食事と共にというのが一番美味しいと感じられます。
メインはマッシュルームのリゾット
前述のAIのおすすめによれば、きのこの濃厚なUmamiがワインとよく合うとのことでチョイス
キノコのUmami重視で、スパイスはなし、あっさり目のチーズとハーブという組み合わせがピノによく合いました。
デザート
濃厚でとろけるチョコレートケーキ。ワインはイチゴ的香り満載なので、チョコレートケーキにラズベリージャム入り(これは近くのカフェで買ってきた)、追いラズベリーにバニラアイスを添えて、赤い果実とダークチョコレートの組み合わせが上手くいっていて、ワインにチョコってありなんだね〜。しかもこの頃になってさっきよりもワインがより美味しく進化しているかもしれないというお友達の意見も飛び出してきて盛り上がりました。
AIありがとう、大成功。
ある意味、大変だったけどねえ、あと5回も(しかし6本全部がいい条件で保存されているとは限らないけど)同じ楽しみがあるなんて、良いお買い物だったのでは、と思います。#挑戦して良かった。
*追記
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