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石を見る

沙織さんにもらった雑誌Coyoteは石の特集で、しかもスコットランドのアイラ島とアラン島の石。これがとても面白かったのです。

Coyoteという雑誌をもらったのです

雑誌の中にも説明がありましたが、石を語る際に必ず名前が出てくるジェームス ハットン、現代地質学の父です。ハットンは1726年生まれ。

ご存知の方はそう多くないと思いますが、18世紀〜19世紀初めまで、スコットランドからもう、ウハウハ言っちゃうくらい有名人が大量に出てきた時期があったんです、これをScots Enlichtenment=スコットランド エンライトメント(啓蒙)といいます。この有名人たちはデビッド・ヒューム(哲学者) 、アダム・スミス(経済学者)、ロバート・バーンズ(詩人)、ジェームス・ワット(蒸気機関発明者)など、そのうちの一人がジェームス・ハットンです。この頃、ハットンはのチャールズ・ダーウィンとも交流があり、ダーウィンの進化論にも影響しているらしいです。(ダーウィンはイギリス人、エディンバラ大学にも来ていたらしい)。

偶然か必然か、そんな時にGeology (地質学)walkの企画があり、行ってまいりました。

Geology (地質学)walk

講師のAngusの最初の一言はやはりジェームス ハットンの話から始まりました。

「想像してみてください、1780年、ハットンと(詩人である)バーンズが共にここに立っていたかもしれないのです、そしてバーンズの有名な詩、a red, red roseの中の一節をご存知ですか?」

O my Luve’s like a red, red rose
That’s newly sprung in June;
O my Luve’s like the melodie
That’s sweetly play’d in tune.

As fair art thou, my bonnie lass,
So deep in luve am I:
And I will luve thee still, my dear,
Till a’ the seas gang dry:

Till a’ the seas gang dry, my dear, 海の水が枯れるまで
And the rocks melt wi’ the sun: 岩が太陽で溶けるまで
I will luve thee still, my dear, 君を愛し続ける
While the sands o’ life shall run.

And fare thee well, my only Luve
And fare thee well, a while!
And I will come again, my Luve,
Tho’ it were ten thousand mile.

さすがスコットランド人たち、彼らにとって詩を暗唱することとかすごくかっこいいことなんですね、我々がつい有名な俳句を口にするのと同じ気持ちなんでしょうか . . . 。

ハットンは、長い長い年月の中で地面は風や水で減衰し、川に運ばれ海に流れ込む、そして、何か地球の大きな力でそれがまた地表へ押し上げられる大きなサイクルがあるのではないか、と想像したらしいです。

今でこそ当たり前と思えるような考え方かもしれませんが、その頃は単純に物質は海底に沈澱して堆積して石になり、水が引いて現れたものが岩石であると「水成論」のみでそれに疑問を投げる人はいなかったのだそうです。この考え方は聖書の創世記にも都合がいい。

これに「火成論」、つまり火山の噴火のように地球の内部の力が陸地を隆起させているというアイデアを証明したのがハットンなのです。「火成論」を証明できたのが、堆積していた地層が場所によって崩れ不整合になっている「ハットンの不整合」と呼ばれている場所を見つけたからなのですね。そして特筆すべきはそれまで地球誕生は紀元前4004年というアイデアをぶっ飛ばして、億単位であることを予測したのです。その想像を絶するとてつも無い長い時間のアイデアであればこそ、前述のバーンズのred roseのポエムに「海が乾くまで、岩が溶けるまで、君を愛し続ける」という表現に至るということになりますよね。

日本のようにドカンドカンと活火山がある国では、火成岩の成り立ちとかもっと身近だったと思うのですが、火山のないスコットランドでその考えに至ったというのがすごい。しかも地震のないスコットランドでは「地球の内部の力が陸地を隆起させている」というのが全く持って想像するのが難しいと思うのです。逆に、日本ではそのころ、石の成り立ちへのアプローチとして、どのように人々は考えていたのでしょう、やはり石は神が作ったものだったのでしょうか。

時は1800年、多くの人にとっては#想像していなかった未来ということなのかも知れません

さて、今日の主役は玄武岩。

この質感、色、典型的な玄武岩らしい

エディンバラの街のど真ん中にあるエディンバラ城が建つ丘も、カールトンヒルもこの玄武岩から成っているのだそうです。

玄武岩?

理科の授業で火成岩、堆積岩を習った時に丸暗記させられた記憶があるのですがよい記事を見つけてしまいました。

勝手にスクショしております、ありがとうございます。
玄武岩は地上でマグマが冷えてできたものということね!わかりやすい

こうやってみてみるとでどころは同じマグマでも、粘り気の強さの違いがあって、玄武岩は地上でマグマが冷えてできたもの、粘り気が弱いもの。講師のAngusに日本の火成岩とスコットランドの火成岩に違いについて聞いてみた時も、

日本の山は富士山のように高くそびえるような形になるところをみると、ちょっと粘度が高い(強い)、スコットランドの山はもう少しトロトロと流れる粘度が低いなどの違いがあるかもしれないね(詳しいことは省略するけど)、

と言っていたので、興味深かったのでした。

スコットランドの風景はこういうなだらかな丘であることが多い
それは簡単に言ってしまえば「古い」地形であるからとずっと思っていたけれども
マグマの粘度が日本と違ってトロトロだったのかもしれないという新たな一面が加わった


建物に使われている石の断面から粒々結晶が目立つものとそうでないものも見ることができる
中には堆積岩も
層状になっているのがよく見える
向こうに見えている。エディンバラは石の街。
カールトンヒルの斜面に残る、玄武岩が氷河に削られてツルツルの表面を獲得したという珍しいスポット
建物に使われているのは地元で採掘されるSandstone(堆積岩)がほとんど
エディンバラはこの豊富にある加工しやすいSandstoneに恵まれていた
そのせいで統一感が生まれて自然に馴染んでいる
地元の石切場の石を使うというところが美しい街並みと言われる理由の一つだと思う
Sandstones
すすけて黒くなっているところも風情があるのです
道路のcobblestones
これも硬くて強い玄武岩が使われていることが多いとか


カールトンヒルは玄武岩で成っているという説明でしたが、単純にそれだけで成り立っているわけではなく、岩肌が出ている場所に行ってみると、こういう風に玄武岩などの石ころが土砂崩れで一気に流されて固まったところも多くあるのだそうです。

土砂が固まった様子
ゴロゴロとつぶつぶのミックスなんですね
「過去3億年のうちの、ここはある日、たった1日でできたものかもしれない」というギャップが凄すぎる

そうなのです、エディンバラ市内にはハットンが日常的に歩き回った、かっこいいArthur’s seatとSalisbury Cragsという丘があるのですが

Arthur’s seatとSalisbury Cragsを眺める

この丘たち、出来上がったのは何度聞いても想像できない3億4千年前なのです。

3億4千万年

日本が新しい火山で有名であることは知っているけれども、自分たちのみている風景の出来上がった時期がこんなに違うなんて。

3億年 vs 10万年
想像してみて、貯金額が3億5千万か、10万かの違いを。
手前の隆起は火山によるものと、その後の氷河侵食によるもののミックス
3億年前にはこれらの土地は南半球にあったのだとか


ちなみに、今日のWalkで最終的に辿り着いたのは

The Stones of Scotland
Western Islesの丸い石、Argyll and Buteのピンクの混ざった石

スコットランドの各エリアを代表する石を集めてあるのだとか。全然観光客にも人気のない人知れず、無名に近い場所みたいです、私も全然知りませんでした。

Landscape is Scotland's identity

エディンバラには7つの丘があり、ローマにも7つの丘があります。アテネのパルテノン神殿のアクロポリスの丘があり、こういう坂がある街、丘がある街は魅力的なんですね、スコットランド人にとってはこれが更にidentiry=
アイデンティティとさえ言わせるほど、大事な要素であることは間違いありません。


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山林
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