#04-3 箱根は、フィールドワークに触れる原点になる!【アンケート調査報告】
こんにちは、はたはたです。今回は先日のアンケートから『箱根のこれから』について考えていこうと思います。
こちらの記事を読む前に次の記事を読むことをおすすめします。
1.アンケートを行ったきっかけ
皆さんには隠していたことがありました。
本アンケートの目的はただ『箱根のイメージ』を調査するだけではありません。実は、日本全国にあるジオパークの一つである『箱根ジオパーク』に関する調査を行っていました。
箱根ジオパークの調査を進めているうちにある資料を見つけました。2021年2月に行われた日本ジオパーク委員会による再認定調査です。ジオパークの紹介でもお話しましたが、ジオパークとして承認を受けた後も、4年に一度の審査に合格する必要があります。
箱根ジオパークは他のジオパークと比較して、圧倒的に観光地としての知名度が高いため、評価が高いと思っていましたが…
2年後にもう一度審査を受ける必要がある『条件付き再認定』からはなんとか免れたものの、再認定を受けたジオパークのうち最も厳しい評価(評価△)を受けました。
日本ジオパーク委員会からの評価は以下の通り…
簡潔に言えば、箱根ジオパークのビジョンが全く見えないということです。私は箱根ジオパークの関係者でもなく地学の専門家でもないですが、何か突破口となるアイデアがないか探してみる過程でアンケートを行うに至りました。
2.箱根ジオパークの現状
箱根ジオパークは神奈川県西部に位置し、箱根町、小田原市、湯河原町、真鶴町、南足柄市の5市町で構成されています。
北と南をつなぐ自然のみち 東と西をつなぐ歴史のみちが本ジオパークのメインテーマ(キャッチコピー)となっています。これは真鶴半島や箱根火山等、急峻な地形がおおよそ南北方向に広がっている一方で、旧東海道や箱根登山鉄道、小田原城等多くの歴史的遺産が東西方向に広がっていることから名付けられました。東海道新幹線や東名高速道路は箱根火山を迂回するように通っており、現在でも交通の要衝となっています。
ジオサイト(観光スポット)は全部で49サイト指定されており、それぞれ地質・地形・生物・歴史・温泉のカテゴリーに分かれています。
大涌谷・芦ノ湖・仙石原高原・箱根神社・小田原城・箱根温泉等
火山活動によって形成された場所や歴史的遺産が多く指定されています。
ちなみに土木の視点で見ると、箱根関所や荻窪用水は指定されている一方、意外にも箱根登山鉄道は外されています。近代以降の土木遺産は指定されていないようです…
これらを踏まえて私は、
ジオサイトに指定されている地質・地形・生物・歴史・温泉以外にも箱根を捉える上で重要な要素があるため、ジオパークに関心を持つ観光客が限られているのではないかと考えました。ここからはこの仮説に基づいてアンケート結果を見ていきます。
3.アンケート結果から考察してみる
★アンケートの結果はこちらから
アンケートでは箱根を構成する要素を10個作り、回答者に選んでもらう形にしました。
1. 温泉・温泉街(箱根温泉・湯河原温泉)
2. 旅館・ホテル
3. 地形・地質・火山(大涌谷・芦ノ湖・飛龍の滝)
4. 生物・動植物(仙石原高原のススキ・箱根湿生花園)
5. アート・美術(彫刻の森・星の王子さまミュージアム・ポーラ美術館・ガラスの森美術館)
6. 歴史・文化(箱根神社・小田原城・箱根関所・荻窪用水・箱根寄木細工)
7. スポーツ・レジャー(箱根駅伝・ハイキング)
8. ドライブ・ツーリング・道路(箱根ターンパイク・国道1号線)
9. 公共交通機関(箱根登山鉄道・箱根海賊船・ロープウェー・ケーブルカー)
10. グルメ(黒たまご・スイーツ等)
太文字はジオサイト指定におけるカテゴリーに含まれているものです。これにアートやスポーツ・公共交通機関などを選択肢に入れました。
様々な視点で色々考察できてしまうので今回は2点に絞って話していきたいと思います。
A.百聞は一見に如かず?
まずはQ2-1とQ3-1で箱根での訪問経験とイメージの関係を見てみます。
ここから全体的に箱根への旅行経験がある人はより多くの項目を選択していたことが分かります。箱根に行くことによって箱根に対するイメージがより膨らんだからかもしれません。まさに百聞は一見に如かず?
※項目を選んだ数(一人当たり)
(旅行○:4.81個、旅行×:3.29個)
※特に大きく差が出てきたもの(旅行経験:人数/旅行経験で同じ回答をした人の数を100%としたときの割合)
地形・地質・火山(旅行○:32人/74.4%、旅行×:9人/42.9%)
アート・美術(旅行○:20人/46.5%、旅行×:3人/14.3%)
歴史・文化(旅行○:18人/41.9%、旅行×:4人/19%)
グルメ(旅行○:19人/44.2%、旅行×:4人/19%)
ちなみにスポーツ・レジャーは逆に旅行経験がない人の方が割合が高くなりました。箱根駅伝は家で見て楽しむ方がほとんどだからでしょうか。
B.箱根を旅行したことで箱根に対する価値観が変化?
次にQ2-2とQ2-3を比較して、箱根訪問前後における楽しみにしていたこと/楽しかったことの変化を見てみます。
旅行前、ホテルや温泉に約半数の人が楽しみにしていました。しかし、旅行後、地形・地質・火山やアートが楽しかったと答えた人が増加していることが分かります。宿泊地を楽しみにしていたが、旅行してみて観光地が一番楽しかったと感じた方が一定数いらっしゃったようです。
以上から先程述べた仮説に対する検証結果は次のようになります。
ジオパークの活動は、『地形・地質・火山に関心を持つ人を増やす』という点ではある程度の成果を得られている一方、より多くの観光客へジオパークに関心を持ってもらうためには課題が残っていると言えそうです。
4.箱根はフィールドワークに触れる原点になる!
さて、箱根の現状について様々な視点で見てきましたが、箱根ジオパークは他ジオパークとは違う大きなポテンシャルを持っています。
個人的には箱根は高校生・大学生にとって「フィールドワークに触れる原点」になると感じています。なぜならば、他ジオパークと比較して圧倒的に公共交通機関によるネットワークが発達しているからです。
他ジオパークでは自家用車での移動が前提であることがほとんどです。自動車免許を持っていない高校生・大学生にとっては厳しい条件です。運転できる人と一緒に行かないと訪問は難しいでしょう。
しかし、箱根は観光地として発達しているため主要なジオサイトであれば、公共交通機関で訪問出来ます。
▲ 箱根の主要観光地を結ぶ箱根登山鉄道 ▲
例えば、今でも噴気が出ている大涌谷はロープウェーで降りたらすぐの場所にあります。火山地形が見られる場所の中ではおそらく日本で一番交通アクセスの良い場所ではないでしょうか。
また、土木・建築・生物・美術等、様々な視点から見ることが出来る場所です。地学にたとえ興味が無かったとしても、他の分野であれば興味を持てるかもしれません。温泉・旅館でくつろぐことも出来ますしね。
まとめると箱根ジオパークの方針として、
A.地学と違う学問・分野を組み合わせてみる
B.10代、20代の若い人たちにターゲットを絞る
ということが考えられます。
因みに審査を担当する日本ジオパーク委員会は箱根ジオパークの役割についてこのように言及しています。
確かに箱根の周りには伊豆半島、秩父、銚子、筑波山地域など多くのジオパークがあります。箱根でジオパークに関心を持ってもらった後、他ジオパークに訪問するという流れも考えられそうです。
5.まとめ
『フィールドワークや街歩きって何が楽しいの?』と思っている方々にとって、箱根は絶好の舞台だと思います。ぜひ、地学・地質を軸にしながら様々な分野の方を巻き込んでほしいと思っています。
個人的には、地質・土木・建築・生物・歴史・美術・スポーツ・観光等の分野の方がどのように箱根を見ているか気になります。もし、箱根のすごい所ありましたら、コメントやTwitterのリプ等で教えてくださると嬉しいです。よろしくお願いします!
最後に本アンケートに協力してくださった皆さんにお礼申し上げます。好評であれば、またアンケート企画を実施しようかと思います。
6.あとがき
地質について、私は「新幹線は刈り上げ」しか覚えていません。勉強し直します…