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激しく黄色いあのポスターの話

この世で一番、黄色が好きだ。

ひまわり、レモン、とうもろこし、卵の黄身…
無条件に明るく、底抜けに潑剌と、心底嬉々としている感じがいい。
YELLOW!! というのもなんかいい。
なんともご機嫌な色である。

私は映画『リトルミスサンシャイン』の激しく黄色いポスターを仕事用メールのアイコンにしている。

理由は二つ。一つはただただ激しく黄色いから。
そしてもう一つは、人間の愛おしさを否応なく突きつけられる作品だから。

LITTLE MISS SUNSHINE(2006)


ワーゲンバスに人々が乗り込もうと追いかけている姿。
シンプルでありながらも、これだけでもう事件の予感がする。

『リトルミスサンシャイン』は、アカデミー賞4部門ノミネートされたらしい。こんな話である。

田舎町アリゾナに住む、ブサイクでおデブちゃんな少女オリーブ。ひょんなことから全米美少女コンテストで地区代表に選ばれ、オリーブ一家は決戦の地カリフォルニアを目指すことに。人生の勝ち組になることに没頭する父、ニーチェに倣って信念で沈黙を貫く兄、ゲイで自殺未遂の叔父、ヘロイン吸引が原因で老人ホームを追い出された不良ジジイ、そして家族をまとめようと奮闘する母。そんな落ちこぼれ家族が美少女コンテストの会場に向かうべく、黄色いオンボロワーゲンバスに乗り込む。

あらすじの通り、この家族、欠陥だらけである。
欠陥住宅の擬人化のようなものである。

薬中アル中の祖父、勝ち組を厚く崇拝する父、ゲイで自殺未遂の繊細な叔父、ひたすらに黙る兄、家族をまとめようとするもうまくいかない母、そして自分を美少女と信じてやまない少女…

かなり残念な人たちではあるが、映画が進むにつれて、それぞれの優しさや信念みたいなものや、魅力的なところが少しずつ垣間見えていく。

あれ?なんだかこの人たち憎めないな?超可愛くなくなくない?

そして、大なり小なり程度の差こそあれ、人は皆もれなく残念で欠陥だらけで、なんだか憎めない超可愛い生き物なのである。

美空ひばりも同じようなこと歌ってたっけ。

私はこういう人間という生き物が大好きである。


"Whatever happens, we're a family.
And what’s important is that we love each other."


作中で好きなセリフのうちの一つである。

何が起ころうと私たちは家族。
そして何より大切なのは互いを思い合っていること。

月並みな言葉ではあるが、人間は皆各々の凸凹を受け入れて、テトリスのようになんとかはめ込み合って生きていくのだ。

私が敬愛してやまないヘンテコ賢人作家、夏目漱石も『こころ』と並ぶ後期三部作の一つ『行人』でこう記している。

親しいというのは、ただ仲が好いと云う意味ではありません。和して納まるべき特性をどこか相互に分担して前へ進めるというつもりなのです

夏目漱石『行人』

和して納まる…これだよコレ。
行人を読んだ時、慌てて名言ノートにメモをとったのだ。


何が言いたいかと言うと、私は残念な人間が堪らなく愛おしい。
そして、自分の残念さも是非とも愛したい。


私たちは全員ひとり残らず天然記念物である。


それでは、聞いてください。
THE SUPER FRUITで、『チグハグ』。

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