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雨の記憶から

「お母さん、雨。」という女の子の声に、ふと外を眺める。さっき降りはじめたばかりなのに、ザーッと水の線が糸のように見えるほど強い。最近は外に出る機会も減って、雨の中を傘さして歩くことも少なくなった。仕事帰りや学校帰りの時の雨ほど、気力を奪われるものはあまりないかもしれない。

やっと自分の時間だと、ほっとするタイミングでの雨の中。OFFモードへ切り替わりはじめた身体で帰る帰り道はものすごく長い。そしてこういうときに思い浮かんでくることは、大抵あまりポジティブなイメージではない。それが余計に身体の動きを鈍らせてくる。

でもこうして屋根の下、雨音を聴いていると。同じくらい勢いよく落ちてくる雨を見つめていた記憶が思い出されてくる。それは高校の帰り道、自転車で帰りの坂を登っていた時に降ってきた雨の記憶。傘を持っていなくて、ずぶ濡れになった。最初は絶望しかけたけれど、できた水たまりを蹴ったり子供みたいなことをしているうちに。こんなに思いきり濡れられるのも今しかないと、濡れる感覚を味わうように自転車をおして帰った。なぜか心まで洗い流せた気がして、帰り着く頃にはすっきりしていた。

今ではこんな大胆なこと、あまりできなくなったけれど。その時を思い出すだけで、また少しすっきりするような気がして。

雨って眺めているだけで、色んなことを思い出してくるから不思議ですね。
今日も素敵な一日を🌂


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