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『パパイヤ・ママイヤ』乗代雄介

2022/05/15

乗代雄介さんが新作をSTORYBOXに出したと聞いて、入手法を漁っていたところ、単行本化するとのことだったから一ヶ月待った。
発売日から2日経って、宇佐見りんの『くるまの娘』と共に買いに行った。実際、純文学が好きな人たちにとって、5月はこの2冊はマストで買ったのではないかと思う。

※ネタバレあるかもしれません、ご注意を

私はその2日を待つこともできず、ネット上で公開されている触りの部分を試し読みしていた。古典の授業だったが、同じ文章という面ではセーフということにして。

試し読みで「夕焼けって興味とかじゃないから」というセリフがあって、私はこの言葉を見たときに、あぁ、乗代雄介だなと感じた。
抽象とまでは行かなくとも、その言葉に意味があるかと言われると首を傾げる、そんな文章が乗代雄介の文章で、そこが魅力なんだよな、と読みながら感じていた。

書物の引用や日記でほとんどを占めていた乗代雄介節が、今回はなくて、類い稀ない文章での表し方という点では、主人公(ママイヤ)が撮った写真の説明くらいでしか出てこなかったことに驚いた。それは小学館という版元が関係しているのだろうか?五大文芸誌で書かれた小説と大きく違うのはそういう点だった。

美しい描写は過去作と変わらず健在である。誰だったか、乗代雄介の文章は宝のようだとか、その空間を固めたいだとか、帯に書かれていたように思うけど、まさにそんな文章が続く。今回は地の文よりもパパイヤとママイヤの会話が中心だったけど、そんな会話の中でも私が少し憧れる、青春らしい、どこかふわふわと浮ついた会話が成されていて、セリフにしても乗代雄介の良いところが詰められていて、私は更に彼の書く文章に惹かれる。

私が思う、乗代雄介の良いところは最後の文章である。『旅する練習』のラストは納得のいかない人もいるかもしれないが、そのあとの本当にラストの一文をもう一回見直して欲しい。私はあれ以上に綺麗な終わり方など無いと思う。
私も亜美ちゃんの最後には納得はいっていない。私はハッピーエンドが好きだから、という理由でただモヤモヤしているだけで、あの物語はあの出来事がなくては、書かれなかった真実なのだ。
さて、今回のラストはとても良い。綺麗だ。ぜひ、そこに注目して読むか、読み直して欲しい。

大好きなシーンを列挙していこうと思っていたが、近々乗代雄介さんについてはnoteでしっかり、まとめようと思うので、また後日に。かなりの長編になる予定。もし良かったらそれも見て下さい。

最後に、"きいれえもん"を集める所ジョンの話だが、本作の表紙は綺麗な真っ黄色で、表紙カバーを外しても黄色が広がっている。
きっと所ジョンは『パパイヤ・ママイヤ』が道端に落ちているなんてことがあったら拾うと思われる。そんなことを思わせるように作られた装丁は策士だと思った。

一夏の奇跡ってなんかいいねって思う。私も現在進行形の高校生だから何か一つくらい、わあって思うようなそんな奇跡な出来事と巡り会いたいものだ。夏に期待しつつ、自分でも行動しようとも思う。
今作に関しては、また夏に読み返すと思う。
そして今回のnoteはうまく書けなかったから再読した際に書き直されると思う。

次は川端康成の『片腕』

それでは。

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