1on1の専門家が見る『SLAM DUNK』安西 光義・赤木 剛憲の1on1の流儀
こんにちは、ひろきです!
最近よく耳にする1on1。多くの書籍や記事もありますが、実践してみても上手くいかないと悩む方も多いと思います。そこで今回は、『SLAM DUNK』の安西先生・赤木を例に、マネジメントにおける1on1のあり方を想像し易い形で書いています。最近映画も公開されて話題になっていますが、改めて漫画を読み直して、イメージを膨らませてみませんか?
大それたタイトルで恐縮ですが、最後まで楽しんでいただけると幸いです!
更新履歴:
[2023-03-12 Sun] 一部限定公開 (第二章②)
[2023-03-21 Tue] 第一章初版
前提:
このnoteでは、安西先生と赤木の二人の言葉を主に引用しています。
赤木はリーダー・マネージャーの両側面でチームを率い、安西先生はマネージャーとしてチームをサポートする立場にあります。漫画の前半部分では、安西先生が「赤木主将に任せてありますから…大丈夫ですよ」と述べるように、二人は一心同体であることが示唆されています。そのため、安西先生と赤木の対話はあまり描かれていませんが、二人が常に連携していることを想像すると、より理解しやすくなるかもしれません。
初めに
今回、章の構成は、第1章〜第4章で構成しております。
第1章では、1on1をはじめる前に、1on1はあくまでチーム・組織の全体に対しての個別の手法であることを主に記載しています。1on1を実施する前に、チームとしてはっきりしておくと良いことから整理してみてください。
第2章・第3章では、桜木花道をメンバーとして見立てた際に、1on1を通じて、何を個人とコミュニケーションしていくのかを整理しています。『SLAM DUNK』全20巻を通じて、桜木の成長過程を3つの段階に整理して話を進めています。能力の発揮と開花、そして、発揮においても意識変容から行動変容への移り変わりが描かれています。
第4章では、マネージャー自身について、考えてもらう機会にしています。今回では、赤木の視点です。マネージャーでありながらも、プレイヤーである赤木にとっての苦悩と成長は、マネジメントをしている皆さんとも共感する部分も多いと思います。マネージャーもしんどい中で、いかに楽しみを見出すか、安西先生のスタンスも合わせて、考えてみてください。
【第1章】チームとしての個人
チームとはなんなのか?また、そこでの個人とは?チームと個人の関係性をはっきりしておかないことには、1on1は始められません。このパートでは、個人と向き合う前の段階として、チームと個人との関係性について、整理したいと思います。
①チームとしての明確なミッションとビジョン、それと個人の想い
新入部員を一列に並べて、最初に発した赤木の言葉です。チームとは、共通の目的を持ち、それを達成するために協力し合う人々の集合体です。その中で一番の軸は、ミッションとビジョンです。全てのコミュニケーションは、これらを起点に構成されます。湘北高校バスケ部のミッションは「全国制覇」です。ミッションをチーム全体に対してはっきりと伝えることが大切です。
『ビジョンとは、自分は何もので、何をめざし、何を基準に進んでいくのかを明らかにすることである』(ザ・ビジョン、P.103)
ミッションである「全国制覇」に対し、自分たちがあるべき未来の姿(ビジョン)の強烈なイメージを持っておく事が非常に強い原動力になります。桜木の初の公式戦である陵南戦で敗北をした翌日の安西先生の発言です。
翔陽戦で藤真が出てきた場面での全員での一言『「俺たちは強い」!!』からも伺えます。これが湘北高校バスケ部としてのビジョンです。全国制覇というミッションに対して、強いチームになりたいという在るべき姿をチームの認識として、持っていること。これが、最高のチームへの第一歩です。
それでは、湘北が定める「強いチーム」とは、なんなのでしょう。「強いチーム」だけだと、抽象度も高く、ビジネスの場面でも認識齟齬が起きやすい表現になっています。これを、山王戦から紐解いていきましょう。
SLAM DUNKでいう「強いチーム」とは、「勝利に向けて、泥臭く立ち向かい、背中合わせで団結し、お互いを頼り合えるチーム」。そのようなものではないでしょうか?
「強いチーム」とは、決して、一人では実現できずに、赤木と木暮がもがき続けていたチームに、4人の問題児が加わり、「強いチーム」となって「全国制覇」を目指していきます。全員が万能ではないながらも、それぞれの強みを活かし、欠点を補いながら、一つのチームにまとまっていきます。ピースが1つでも欠けてしまえば、チームが成り立たなくなり、1つでも上手く機能しなければ、勝利を手にすることはできません。
ビジネスにおいても、マネージャーがやっていることは、組織の成果に責任を果たすために、メンバーをサポートし、「人」を介して成果を出すことです。それぞれのメンバーが1人ずつ、パズルのピースが埋まるように、適切に丁寧に成果に向かってチームにはめ込んでいく事なのです。
『人間の行動は、〜情緒や感情を基底に持つところにその本質がある』(心理学的経営 個をあるがままに生かす、P.10)
「人間は感情の動物」とあるように、マネジメントは「人」を介しているが故に、複雑で難しいと考えられていますが、だからこそ面白いのです。そのために1on1という個人と向き合う時間が必要になります。
そして、最後は、信じること。そのチームのビジョンをマネージャーは誰よりも信じ、伝え続けることが、大変重要になってきます。
ミッションとビジョンが定まったのであれば、チームのメンバーに一度目を向けてみましょう。その前に、一つ皆さんに質問です。学生時代に、試験勉強する際の動機はA or Bのどちらでしたか?
A.よい成績をあげる為
B.単位を落とさない為
この考え方は、制御焦点理論といい自身の仕事を捉え方にも出ます。「仕事は面白いことを追求」「仕事では自分の責任に応える」。ご自身が担っている役割によっても異なりますが、メンバーがどちらの思いを持って、業務に勤めているかによって、目標の持たせ方や言葉の使い方が変わったりします。
それでは、湘北高校のチームメンバーについても、こちらを整理しておきましょう。
赤木:【促進焦点】全国制覇という夢
桜木:【促進焦点】春子さんに好かれる為に
流川:【予防焦点】負けたくない → 【促進焦点】もっと上手くなりたい
三井:【予防焦点】安西先生のために
宮城:【予防焦点】小さいことへのコンプレックス
■ 赤木:【促進焦点】全国制覇という夢
赤木は、夢追い人です。壮大な夢を描き、着実に歩みを進めていけるタイプです。
少し話が飛びますが、寓話ウサギとカメで、なぜウサギは負けて、カメは勝ったんだと思いますか?幼少期から慣れ親しんだ寓話ですが、「つぼ八」創業者の山口さんの話が、興味深かったです。
「『どこを見ていたか』で勝ち負けがついたんだよ」。ウサギは、カメを見ていました。では、カメはどこを見ていたのか?カメは、ゴールを見ていたのです。
(「つぼ八」創業者に諭された「ウサギとカメ」の勝敗を分けたもの。より)
中学の時から赤木は常に「全国制覇」という夢を追い続けてきて、周りから「下手くそ」と言われても、チームメイトから「息苦しい」と言われても、決して自分の夢を諦めずに、信念を曲げずにここまで来れたのは、安西先生が信じていたこともあったのではないでしょうか。
夢を持ち続けるも、周囲からの風当たりが強い人には、ただ側にいて、一緒に信じ続けてあげるのが良いかと思います。
■ 桜木:【促進焦点】春子さんに好かれる為に
桜木がバスケットをはじめたきっかけは、不純なものではあります。晴子さんに好かれるために。しかし、物事のきっかけは、何だって良いんです。足が速いことを褒められて陸上を始めたり、モテたいからと言ってギターを買ってライブに出たり、はじめてお父さんに買ってもらった生物の本が大切で生物の学科に進学したり。学生時代に取り組み始めた事のきっかけは、何だって良いんです。それよりも大事なのは、やり始めてみて、自身の心が躍るものだったのか、どうかが大切なのです。
『一日の出来事を細かく掘り下げ、あなたが楽しんでいる瞬間を知ることにある。』(人生デザイン講座、P.110)
スタンフォードの人生設計の書籍にある1文ですが、今やっていることで、自身が楽しんでいることは、何なのか?どうして楽しめているのか?を理解することで、幸福な人生をデザインすることができると考えられています。
桜木も、山王戦最後の瞬間に、晴子にこう言います。
マネージャーとしては、人生に対して目標を持てていないメンバーがいるのであれば、多くの体験を与え、感情を振り返るのが大切です。本当に本人が好きになれるもの、楽しんで没頭できるものを一緒に探して行くことが、必要となります。
■ 流川:【予防焦点】負けたくない → 【促進焦点】もっと上手くなりたい
促進焦点と予防焦点は、必ずしも常にどちらかというわけではありません。ストーリーの中で、その変化を見せたのは流川です。
全国大会進出において、安西先生の自宅での発言です。この場面は流川にとってのターニングポイントだったと考えられます。海南戦の後半でバテてしまい、陵南戦で前半を捨てて後半にかける戦略と取らざるおえない、自分に対しての不甲斐なさ。その点を振り返り、体力だけでなく、技術面での成長を求めて、あらゆる手段に出始めた場面です。周りを頼れない、頑固だけど、努力家のタイプの人に対して必要なのは、明確な課題・目標・ロールモデルを定めることです。それがハマれば、一人で走り出します。
既に、海南戦・陵南戦でも明白にはなっていますが、一番は個としての自分に対しての「課題」。
いちプレイヤーとして、仙道というエースプレイヤーとの比較において、まだ及んでいない、負けている点を自覚させることです。予防焦点である流川に対しては、この点を受け入れていくことは、そこまで難しくなかったのだと思います。次に、明確な「目標」を提示します。
実質、流川に必要な言葉は、この一言で十分だったと思います。その後、全国大会に向けて、三井に挑み、仙道に挑み、そして、桜木とも対戦をしていきます。自分の中で全ての恥を忍んででも、上手くありたいという思いは、強烈な思いへと代わり自身を突き動かしていきます。
そして、仙道や南(カリメロ)から伝えられた日本一の高校生としてのロールモデルとして告げられた一人の名前。
これにより、流川にとっては、「課題」がはっきりし、「目標」を再度明確に定め直し、そのための追いかけるべき「ロールモデル」がはっきりしました。結果として、それは行動に現れてきます。
ここまできたら、あとは支えて・信じて・期待するだけになります。
ビジネスの現場においても、流川のように、表にはあまり出さないですが、心に青い炎を灯しているメンバーも少なくありません。特に、若いメンバーのキャリアにおいては、メンバーの「課題を浮き彫り」にして、メンバーのwillに沿った「明確な目標」と達成するための「ロールモデルの特定」をしていくことが大切になります。
■ 三井:【予防焦点】安西先生のために
「誰かのために」という社会人は、近年より増えてきた印象があります。新卒の方でも社会課題に向けての発言は、以前よりもより多くなったのでは無いでしょうか?ここで大事なのは、目線を自分に持たせることです。
人に依存することは、時として強い力を発揮することがあります。反面、この発言からも滲み出ているように、周囲を気にしすぎるあまりに、自己犠牲により自身の力を十分に発揮できなくなっているメンバーもいると思います。自分が、自分が、というタイプではないが故に、自分に対しての自己肯定感を低くなる人もいたりします。
三井のようなタイプの場合は、感謝の気持ちと本人が自分らしくいられる環境をチームで作り上げていくことになります。山王戦において、三井からのパスで、赤木が河田からシュートを決めるシーンの後、16巻 P.234において、安西先生のにっこりした表情とガッツポーズは、三井の呪縛を解く、感謝の気持ちの表れだったと考えています。
そして、山王戦後半残り10分の段階では、自分らしく居ることにだけ集中しています。「オレの名前を言ってみろ…」とある事からも、自分の存在意義、自分の役割を改めて問い直し、人格を作り直していることが伺い知れます。
自分が、支える側から支えられる側へ。そして、いくら失敗をしても、周りがサポートしてくれるという信頼関係。それにより、他者ではなく自分に集中することができるのでは無いでしょうか。
マネージャーとしては、本人が本人らしく居れる環境を作り上げていくことが、重要となってきます。
■ 宮城:【予防焦点】小さいことへのコンプレックス
宮城の場合は、映画『THE FIRST SLAM DUNK』を見ることで、より深く理解することが出来ます。宮城の思いは、「神奈川No.1 ガード」になること。それは、兄への思いでもあり、自身の身長に対してのコンプレックスから来るところが多分にあります。その中で、一番大きな存在としては、彩子になります。
彼の体格へのコンプレックスと、だからこそこれまで鍛えてきた平面でのスピード。ここでいう「神奈川No.1 ガード」は、流川の時の「日本一の高校生」とは、少し意味がことなります。「神奈川No.1 ガード」という言葉には、コンプレックスに打ち勝つためにも、「負けられない」という予防焦点の思考が含まれているのです。彩子の言葉にも「負けない・大丈夫」という励ましの意味合いが含まれている印象を受けます。
多くの人は、コンプレックスを持っていますが、自身の得意な領域を明確にして、その領域では負けていないことを「認める・必要性」を伝えることが大切です。「隣の芝が青い」という表現がありますが、隣の芝を見る暇も無いぐらいに、自分の今取り組んでいることに意味を持たせることがポイントになります。
また、もう一つ伝えておきたいのは、声掛けというのは、上司やマネージャーが必ずしもやる必要はないのです。チームの横のメンバーが、声を掛けたっていいのです。そういう意味では、マネージャーとして、チーム内での相互の感謝・称賛の機会を整理することは1on1とは別で非常に有効に効果を発揮したりします。振り返り手法の「AKPT」、OKRの「チェックアウト」、「オベーションの仕組み」を参考にしてみてください。
まとめ
チームとしての目的、ビジョンとミッションをはっきりること
個々人により進んでいきたい方向・思考性が違うことを理解すること
様々な角度から環境を整えることも必要になること
1on1を通じて、メンバーのことが理解できれば、様々な形でサポートすることができます。メンバーそれぞれで、大きな違いがあり、またそのサポートの仕方、かける言葉・人、環境の作り方も、全然違うことを体感いただけましたでしょうか?
この節の最後に、1つ伝えておきたい言葉です。
『とにかく考えよ自ずと体が動くまで』(問いの立て方、P.103)
自分のマネジメントの根底にある書籍としては、これが一番にきます。メンバーの根幹にあるものが何なのかを理解できているマネージャーほど、チーム内でメンバーの力を効果を発揮させることができます。マネジメントの本質はこの部分にあると思っています。そのための1on1という場なのです。
②全体と個別、一貫性のある話と個別最適の話
まず最初に伝えておきたいのは、1on1はコミュニケーションツールの一つに過ぎないということです。全体へのコミュニケーションから始まり、1on1に繋がっていくという流れが重要であり、1on1を個別に捉えると機能しません。
「1on1で何を話せば良いのか分からない」と話すマネージャーや、「1on1を雑談に活用します」と話す人事の方へは、まずこの流れがあることを伝えることからはじめます。
ここで、1on1はコミュニケーションにおける最後の砦と書いたように、個人にカスタマイズした場であり、組織から伝えたいことを伝え切るための最後の場になります。なので、1on1は対話の場であることに意味があり、メンバーの理解度や納得感に合わせたチューニングが必要になります。たまに、「マネージャーが一方的に話して終わってしまう1on1がある」という話がありますが、一方的に話したい事があるのであれば、全体の場で話せば良いと思います。
一方で、1on1は「メンバーのための時間」だからといって、「メンバーが話したいことを話してもらう時間」と捉えて、トークテーマをメンバーに丸投げしているマネージャーの方もいますが、それも違います。聞こえはいいですが、それではマネージャーの方が場の設計が出来ていないのでは?と感じます。1on1は「メンバーのための時間」ではなく「メンバーのことを考える時間」なので、メンバーが有意義だったと、その後の業務がスムーズに進められると思える時間を演出する必要があると考えています。
特に、経営であれば、社外への発信、社内への発信、個人への発信で、根本の軸になる伝えたい内容をブラさずに、誤認されないように、表現を整理しておく必要があると考えている。
では、SLAM DUNKにおけるメッセージの発信は、どのようになっているでしょうか?赤木からの発信と安西先生からの発信で見ていきましょう。
赤木からの発信は、常に「全国制覇」の4文字になっています。桜木への陵南との練習試合前の居残り練習についても、赤木は桜木にこのように言っています。
「バスケットにはこういう言葉があるんだ」と言いながら、桜木を焚き付けるシーンがあります。この二つの発言は、少し異なるものだと思われているかもしれませんが、目標設定のツールであるOKR-Aで整理すると次のように整理できます。
ここで伝えたいのは、「全国制覇」という目的に対して、「リバウンドを制す」という目的が必要条件であるということです。簡単にいうと、試合でリバウンドが取れなければ、勝ち進めないということを意味します。もちろん、それ以外の要素もありますが、ここでは簡易的に整理しておきます。
一貫性の話題を出す上で。OKR-Aを出してきたのには2つの意味があります。
OKRの階層構造により、メンバーに適した解像度で物事が伝えられる
目的(O)・定量目標/KPI(KR)・行動目標/アクションKPI(A)により、メンバーのモチベーションとなるポイントが異なる
1つ目に関しては、まさに今の場面において、桜木に対して「全国制覇」と伝えても、その難しさは全くもって伝わりません。なので、OKRの階層構造を使うことで、桜木でも理解しやすい目的「リバウンドを制する」ことにフォーカスさせたのです。この目的により、桜木もここからの数試合で目指すべき事がはっきりすることで、多くの学びを得ることができます。
2つ目に関しては、このタイミングの桜木に対して「居残りで100本リバウンドの練習だ」と言ったらどうなるでしょうか?逃げ出しますよね。なので、「リバウンドを制する者は試合を制す!!」という目的から赤木は説明を開始したのです。一方で、安西先生とのマンツーマンでの合宿では、「10日で2万本のシュート練習」というアクションKPIを設定しましたよね。基礎の大切さを理解した桜木だからこそ、ここでは行動量によりモチベートされたことになります。
このように、ビジネスの現場でも、OKRを活用することで、「メンバーの解像度に合わせたコミュニケーションの設計」や「メンバーのモチベーションポイントに合わせた語り方」が出来ます。つまり、ここでいう一貫性とは、経営から現場、壮大な目標から今やるべき事を繋ぎながら、適切な言葉をメンバーによって使い分けるという話になります。
※ 補足:ここでのOKR-Aの意味合い
O:『目的』の設定
チームの意義や社会的貢献など、数字にこだわらない方を鼓舞する際に活用できるのがOです。目的を明確にして「why」を追求することにより、より本質的な動き方ができるようになります。
KR:『目標』の設定
数字にこだわる方に対してOの現実味を示してくれるのがKRです。また、曖昧性がなく、共通認識を取りやすい数値だからこそブレのない振り返りができます。
A:『行動目標』の設定 (PKAの考えも参考)
質は、量から生まれます。アクションしていなければ、1mmも前に進みません。若手の社員など、OKRが定まってはいるが、何から手を付けていいのか、どの打手が最善手なのかと考え込んでしまう方向けに設定します。
安西先生については、どうでしょうか?山王戦前夜のビデオを見ている際に安西先生が全員の前で伝えた言葉。
全国大会初出場のメンバーにとって、この言葉を受け止め切ることは難しいと思います。「強い意志?」「やってやるぞ感?」それぞれで、胸の中で解釈していたと思います。このような場面は、ビジネスの現場でも良くあることです。経営者が、これだと思って発したビジョンをスッと受け入れられる人はほとんどいません。そのビジョンを伝え続ける、浸透し続けることが大事なことは、多くの方が理解していることだと思います。
ここからが、安西先生の素敵なところです。一人一人の顔色を伺いながら、しっかり「断固たる決意」を浸透させていきます。
この5つのやり取りを見て、皆さん分かりますでしょうか?促進焦点・予防焦点で、大きく分かれていて、それを使い分けてコミュニケーションを図っている安西先生がいます。宮城・三井の予防焦点組に対しては、真っ先にフォローに行き、自信を付けさせて不安を解消させる言葉を投げています。一方、桜木に対しては、煽るようにより自信をつけさせるコミュニケーションとなっています。赤木・流川については、ほとんどフォローはしていません。流川に対しては、言葉すらいらないぐらい自律しているのが見て取れます。
単発のコミュニケーションですが、全体発信からの1on1の設計はまさに理想的な形であることを感じてもらえましたでしょうか。そして、1on1は必ずしも全員に必要なものでもなく、どこの1on1の時間を優先・投資して、どこは本人に任せて1on1の時間を少なめにしておくのかをマネジメントすることが大切になります。
1on1とは、全員と月に1回やっていればいいという、そんな単純な話ではないのです。
まとめ
全体と個別に関して、一貫性が必要であるということ
OKR-Aが、誰にでも伝わりやすい仕組みを提供できるということ
伝えたいメッセージを個人に落とし込むための1on1の考え方
全体と個人を何故繋げていかなければいけないのか。この節の最後に、伝えておきたい言葉は、こちらです。
早く行きたければ、一人で行け、
遠くへ行きたければ、みんなで行け
If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.
組織である、チームであるからこそ、目指せるところがあることを理解し、その大きな船の船員であることを誇らしく思ってもらえるように、個人と向き合っていける1on1でありたいですね。
③チームの「軸」と「遊び」、堅実に抑えるところと可能性を秘める部分
湘北に桜木がいなかったら。赤木・三井・宮城・流川とこの4人でも湘北は十分に強いチームではあります。全国大会にはいけずとも、昨年度より好成績をおさめることは、出来たでしょう。そして、桜木がいない穴を木暮や安田、潮崎、角田で埋めるための努力がなされていたかもしれません。
要は、桜木はより高みを目指すための「遊び」に位置します。ビジネスの表現としては、両利きの経営と整理した方が分かりやすいのかもしれません。赤木・三井・宮城・流川は「知の深化」として、より各々が得意とする領域を深めていく行動をとっていきます。一方、桜木は「知の探索」として、一定のリスクを承知の上で、さまざまな体験を積ませていき、着実に経験へと積み上げていく道を歩ませていきます。
仕事では上位3割の者が7割の成果を生み出していると言われることがあります。チームマネジメントにおいても、この点を意識しながら、環境を整えていくことが大事になります。「堅実に抑える3割の部分」と「可能性を秘めている7割の部分」に分けて置くのです。ここでポイントなのが、常にその上位3割が固定ではないということです。今年の3割と来年の3割は別もにになります。企業だと分かりづらいですが、部活動であれば、3年生は卒業し、次の1年生が入ってくる中で、次世代を育成していくのは当然です。企業の中でも、異動・退職の入れ替わりは良くあることなので、3割で成果を出しながらも、次の世代となる7割との向き合い方が非常に重要になるということです。
※ 補足:両利きの経営とは
両利きの経営とは「主力事業の絶え間ない改善(知の深化)」と「新規事業に向けた実験と行動(知の探索)」を両立させることの重要性を唱える経営論のこと。
「遊び」の位置する人たちに重要なのは、多くの「体験」をさせて「経験」に変えていくことです。
安西先生が、1年生が入った際に必ず最初に部内の練習試合をさせるのはどうしてでしょうか?
試合をすることで、多くのものが浮き彫りになってきます。自分が出来ると思っていたが出来なかったこと、試合の中での自身の成長と自信の獲得と、これからは体験してみなければ分からないですし、気づきがあるから積み上げられて、経験つまり個人の技術に繋がっていきます。
陵南との練習試合の一幕「あ・・・あれは・・・リバウンド」、同じく流川との仙道に対するダブルチーム、三浦台での初めてのフリースロー、と多くの体験を積んでいきながら、一つ一つを消化させていきます。
安西先生が明言はしていませんが、この木暮と流川の発言からも分かるように、1試合、1試合の結果に対する桜木への期待度は薄かったと思います。しかし、長い目で見た時の期待は当初から大きかったのだと思います。だから、退場したとしても毎試合だし続けたのです。多くの体験を積ませるためにも。
それが、気づいた時には、既に経験へと昇華していたことを自分だけでなく、周囲からも見えてきます。
海南戦直後の部内の練習試合では、自他ともに、これまで試合で積んできたものに対しての明確な認識を持つ様になります。多くの強豪校のセンターと張り合ってきたからこそ、自分の自信にもなり、課題が浮き彫りになることで、着実に積み上げてきた経験へと繋げていくことができます。
もう一つは、投資の話であり、ここは人的資本にも関わる話になります。誰に、時間も投じるのか。もっとも、投資対効果が高く、成果(勝利)に繋がるポイントを見定めて、マネジメントコストを払っていきます。明確の表現されているのは全国大会前の合宿です。安西先生は桜木とマンツーマンで、赤木はそれ以外のメンバーと静岡代表常誠高校へ。
決して、常誠高校との練習が楽な訳ではありません。しかし、堅実にやっているだけでは、「全国制覇」はできない中で、一種の賭けに出た部分ではあります。人的資本の本質も、そのようなものだと考えています。
人が成長するかどうかなんて分からない中で、その人を信じて、資源を投じる。桜木が、たまたま成長できただけで、たまたま試合でシュートを決めれただけではありますが、そこに対して徹底的に付き合っていく覚悟を決めた安西先生の姿は、マネージャーとしても見習わなければいけない側面だと思います。
前にも伝えましたが、全員に対して1on1は平等に与えられるものではなく、不平等に与えられるものです。自分もよくビル・キャンベルの言葉を使います。
『「利口ぶるやつはコーチできない」ビルはぴしゃりと言った。』(1兆ドルコーチ)
自分の場合、コーチャブルなメンバーであれば毎日でも1on1をします。コーチャブルでないメンバーに対しては、頻度は多くはないでしょう。この点に関しては、マネージャーではなくメンバー側の意識にも関わる部分なので、桜木についても、入部当初から安西先生がマンツーマンで教えるということはなかったのでしょう。意識変容し、行動変容があってこそのこのマンツーマンでの能力の開花が迎えられるのです。
まとめ
堅実に任せられる部分と遊びとして次世代を生み出す部分を見定めること
失敗を許容できる環境、体験を詰ませることで見えることがあること
投資するなら徹底的にやり切ることが人的資本の本質
1on1をする上で、個人という存在は、チームの中で話すべき役割が徐々にご理解いただけていれば、幸いです。次の章は具体的に、1on1をしていくための準備として、特に桜木の成長過程を描いていきます。
【第2章】1on1の準備 (編集中)
①1on1には種類がある、桜木の能力の発揮から能力の開花まで (編集中)
※ 今しばらくお待ちください
②マネージャーが個別のメンバーを想い・マネージャーが描く未来
翔陽戦後半残り14分21秒、1点差で逆転ができる前の桜木のリバウンドシーンで、安西先生はこう発言しました。
赤木と安西先生は、桜木の能力であるジャンプ力・瞬発力・体格を最初から見抜いていたのでしょう。桜木の初のチーム内の対抗戦では、パスカットにピクッと反応する安西先生や、そこからの赤木の脳天へのダンクシュートで笑みを浮かべる安西先生が描かれています。この時点で、多くのことを把握していたと思います。
赤木と安西先生の対話のシーンは描かれていませんが、陵南戦前日の『リバウンドを制する者は試合を制す!!』(赤木)から始まり、翔陽戦の中でも『リバウンドは君が制するんですよ』(安西)、『リバウンドを制するものはゲームを制す!!』(赤木) と、二人で繰り返し桜木に在ってほしい姿を伝えています。桜木も「リバウンド王」と自分を称し、自分の在り方を受け入れていきます。
そして、翔陽戦後半残り9分58秒の土壇場の場面では、赤木から桜木に、明確にやるべきことだけでなく、やらないことにも言及し、期待値を伝えています。ビジネスの現場でも、多くの業務がある中で集中できないメンバーに対しては、やらないことを明確にすることで、やるべきことに集中させて、より成果に繋がることがあります。
このように、マネージャーである皆さんは、メンバーに想いを寄せて、メンバーの未来や在ってほしい姿を描くことが大切です。メンバーの特性を理解し、メンバーがどこで輝くことを想像し、メンバーに在ってほしい姿を示して伝えることが必要です。そのためには、1on1という個別の場が必要になってきます。
最終山王戦では、安西先生が桜木と次のように会話しています。
つまり、自分の役割とチームへの貢献・成果を結びつけることをしているのです。メンバーの中には、自分が今、成していることが本当にチームへ貢献しているのか不安になる人もいると思います。そのため、役割・成果・貢献を一直線で結び、ミッションに向けて繋げることが重要になるのです。これにより、メンバーは自分たちが活躍できているという実感を持つことができます。
また、桜木の才能に気づかせてくれたのは晴子です。
マネージャーが見えないところで他のメンバーからの客観的な意見が、本人の能力の開花に繋がることもあります。メンバーを多角的に把握することが、チームの成長に繋がっていきます。
まとめ
メンバーの未来や在ってほしい姿を描き、示すこと
自分の役割とチームへの貢献・成果を結びつけること
メンバーを多角的に把握すること
マネジメントにおいて、メンバーの未来を描くことの大切さに関する参考資料を下記に添付しておきますので、合わせて読んでみてください。自身のキャリアにも活かせる内容があるかもしれないので、是非ご利用ください。
③欠点は個性、欠点を活かしてこそのマネジメント (編集中)
※ 今しばらくお待ちください
【第3章】1on1のやり方 (編集中)
①人と人とが100%は分かり合えないからアクションへのFB (編集中)
※ 今しばらくお待ちください
②体験を経験に変える方法、「量・スピード・質・力の法則」 (編集中)
※ 今しばらくお待ちください
③右腕としての信頼、信頼から生まれる成長を築く (編集中)
※ 今しばらくお待ちください
【第4章】最後に (編集中)
①マネージャーである、あなたがしんどいのは、理解しています(編集中)
※ 今しばらくお待ちください
②SLAM DUNKで描く「涙」という心理的安全性 (編集中)
※ 今しばらくお待ちください
③「人生という長い道のり」と「今という瞬間」の意味合い (編集中)
※ 今しばらくお待ちください
ご興味いただけた方へ
・キャリアの相談してみたいメンバーの方
・マネジメントで苦悩するマネージャーの方
・組織開発・人材開発でお悩みの経営・人事の方
TwitterのDM、Careenaやストアカと皆さんのご興味に合わせて連絡ください。是非、一度気軽にお話ししてみませんか?
参考書籍
SLAM DUNK 新装再編版 全20巻
ザ・ビジョン
心理学的経営 個をあるがままに生かす
人生デザイン講座
問いの立て方
OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法
両利きの経営
1兆ドルコーチ
参考記事
制御焦点理論
「つぼ八」創業者に諭された「ウサギとカメ」の勝敗を分けたもの。
目標制度は「永遠のβ版」。OKRを廃止したミラティブが明かす、独自の目標管理の全貌
7対3の法則とは?
目標設定だけで収入が10倍に?! ハーバードMBA調査
コンフォートゾーンとホメオスタシス
管理職なら知っておくべき「NLP」の話
フィギュアスケートの羽生結弦さんも予祝をしていた!?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?