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読書の測り方

 読書をどれだけしたかを測ることが出来るでしょうか?

 私個人は自分の周囲にいる人(家族、友人、同僚ら)と比べると、結構本を読んでいる方になります。読書について話題が及んだときに、どれくらい読書しているのか、と聞かれたり、あるいは聞いたりすることがあります。なんとはなしに読書の量を語ることになりますが、読書そのものはあくまで行為ですから、読書自体を数えることは出来ません。今日読書したかどうかを聞かれて、読書したよ、と答えた場合、それは経験の回数を1回とカウントできますが、本の一節を100文字程度読んでも1回ですし、分厚い本を1日で読み終えても読書回数は1回です。今日、明日、明後日と読書回数を合計していっても、差が正確に現れないのは同じです。

 それでは、本の数を数えるのはどうでしょうか? これも結局は、単純に読んだ冊数だけでカウントすると、例えば薄い文庫本の小説と、難解な哲学書の分厚い単行本も同じ1冊になってしまいます。別に小説より哲学が上だなんていうつもりはもちろんありませんが、読書の分量を単純に1冊2冊と数えていくのは、どれだけ読書をしているのかを測る基準としてはあまり適切とは思えません。

 では、金額ではどうでしょうか? 先の例ですと、薄い文庫本の小説と難解な哲学書の分厚い単行本で比べれば、まず間違いなく後者の方が売値は高いでしょう。しかし全ての本が難解であれば高額というわけでもありません。古典として文庫本で安価で売られている名著はたくさんありますし、古本や電子書籍のように再販制度による定価販売の枠外の場合はどうするのか、という問題もありますが、それ以前にそもそも難解な読書が良くて簡単に読める本での読書が地位が低い、というわけでもありません。

 また、読書に要した時間はどうでしょうか? 時間で数えるなら、冒頭の読書経験回数をカウントするよりは読書の分量を測るにはまだマシです。しかし、これにしても、自宅や図書館などで静かにじっくり読む場合もあれば、通勤中や飲食店など騒がしい中で読む場合もあります。そういった読書環境の違いによって集中力が違ってきて、読書の進み具合も違うのではないでしょうか。

 さて、ここまでダラダラと述べてきて、どれくらい読書しているのかを説明する正確な方法なんてない! と結論づけるのもみっともない話ですが、実際そう結論づけることになりそうです。ただし、これは絶対的な基準がない、ということであって、話題に出たときに「どれくらい読書しているのかなんて分からないからこの話は終わり!」と宣言して、場の雰囲気を思いっきり悪くしましょう、というつもりはありません。

 日本語はハイコンテクストなものと言われますが(ここではその真偽は問いません)、「どれくらい読書しているのか」という話題が出たときに、そこで何を問われているのかということを読み取って、「毎日読書してますよ」とか、「だいたい1日2時間くらいですね」とか、「月に10冊くらいは読んでます」とか、「年間で20万円くらいお金使ってます」といった答え方を、意識的というよりは無意識的に行っているのではないでしょうか。

 「どれくらい読書しているのか」と聞かれたときに、あなたは何と答えますか?

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