日本人とアニサキスの我慢比べ
アニサキス食中毒が増えているそうですが、魚の生食大好きな日本人にとっては宿命というか宿業というか、おそらく生食文化のない外国から見たら生魚を食べるのは、頭がおかしいと思われる行為なのでしょう。
終宿主であるクジラの数が増えたことで、クジラの餌になるサバやイカのアニサキスも増えているという理屈だそうです。じゃあ、クジラが減った20世紀よりも前の時代ではやっぱりアニサキスが多かったのでしょうか? そもそもその頃は本当に海沿いでしか生魚を食べられなかったので、それほど問題とはならなかったのかも知れません。
アニサキス退治のために加熱してしまうと、それは生の刺身やお寿司には使えないというか、全く別の料理になってしまいます。そうなると冷凍して解凍したものを生食っぽく食べるしかありません。
生でなくとも、一度冷凍してしまうと味が落ちてしまいます。焼き魚でも生のまま焼いたものと、冷凍してから解凍して焼いたものでは、やっぱり違いが分かります。
江戸時代あるいは19世紀くらいまでは、魚の生食なんて日本人の一部しか不可能でした。輸送や冷蔵技術がそもそも現代とはまるきり異なりますので当たり前なのですが、それら技術が発展して完全に日本文化に定着した今の生魚文化は、アニサキスが増えても無くなりはしないでしょう。
未だに自分で釣ったフグを免許も無しに捌いて毒にあたる人がいるくらいですから、アニサキスが怖くても生のお刺身を食べ続ける日本人であるはずです。
日本人とアニサキスの我慢比べ、チキンレースが続くにしても、被害が拡大したらやっぱり責任を取らされるのは販売する店、提供する店になってしまいます。そうなると、生魚をスーパーや飲食店で扱うリスクを恐れるようになって、最終的には日本における生魚文化が無くなってしまうかも知れません。
そうなっては欲しくないので、それを防ぐには結局はアニサキスを食べる前にやっつけておくしかなく、そのためには結局は冷凍→解凍するしかありません。
今の冷凍技術・解凍技術では、味も鮮度も落ちてしまいます。生と遜色ないレベルで楽しめるテクノロジーが発明され、それをどこでも誰でも利用出来るようになれば、おそらくアニサキス食中毒は昔ばなしになるでしょう。
テクノロジーは困難を克服するためにあります。
まだだいぶ先のことでしょうけれど、そのテクノロジーの恩恵に浸れる日が来ることを祈ります。