
悪魔のストライダー
2021年のクリスマス。義母から息子にストライダーが贈られた。
その時はまだ、ストライダーの恐ろしさを知る由もない・・・。
クリスマス以降、息子の移動手段は徒歩からストライダーに変わった。
しかし、ストライダーにまたがる彼の移動速度が極めて遅い。
公園までの所要時間はおよそ6倍。
歩いて約10分の道のりに1時間以上を要すことになってしまった。
息子のストライダーにまたがる姿は滑走と呼ぶにはほど遠い。
両足は常にしっかりと地面についており、股の間のストライダーのせいで、ぎこちなくヨチヨチと歩く羽目になっている。
さらには歩く最中、たびたび足を止めては写真撮影をせがんでくる。
よほどお気に入りなのだろう。
ストライダーにまたがる息子自身の姿を撮らせては、その写真をのぞき込み、満足気に足を進める。
少し歩いては立ち止まり、ポージングし、撮影会。
写真を確認してはニヤついて、そしてまた歩き出す。
この繰り返しで私のアルバムは息子とストライダーに占拠された。

あまりの遅さに耐えかねて、ストライダーを取り上げたら最後、また別の悪魔が顔を出す。
泣き叫び、「シュトライダー!! シュトライダー!!」と呪文のように繰り返し、その場から一歩も動こうとしない。
もはやストライダー中毒、ストライダー依存症、strider symptomだ。

そしてとある日の夜、恐怖の出来事が起きてしまった・・・。
寝ぼけまなこで起き上がり、シュトライダー、シュトライダー・・・、と悪魔のように呟きながら姿を消した息子。
再び姿を現した息子を目の当たりにした瞬間、自分の目を疑った。
シュ、シュ、ッッスストライダァァァァァ!!
白馬にまたがる王子様ばりの満面の笑みで、ストライダーにまたがる息子がいました。
