今日娘が入院しました②
無理も無いが、たぶん娘はその時の状況を把握出来ていなかったのだろう。先生の大きな声のおかげで、思考停止だったのかもしれない。
「今日でも大丈夫です」とあっさり答えたので、私のほうが「エッ?」と焦ってしまった。
「大丈夫なの?準備はお母さんするけど、何も用意してきてないよ」と尋ねたが、「うん」とだけ答えると入院手続きの書類を書くために、娘は自分の鞄の中から眼鏡を探し始めた。
「あっ、お母さんに書いてもらうからね」と言って、先生が私の目の前に書類を並べた。
『医療保護入院』
初めて聞く言葉だった。患者本人の同意がなくても、診察により家族の同意で行う入院。だから入院する為の書類に、私が同意のサインをするのだ。だけど、一瞬娘と強制的に引き離されるような気持ちになった。「今日でなくてもいいのに…」
今の娘が先月のような少しハイな状態だったら、そうは思わなかっただろう。今月後半から少しずつ娘の気分の波が下がってきて、私とも話す時間が増えてきていた。
病気であることはわかっているけど、昔のような素直な部分が戻ってきているような気がして、入院はもう少し先でもいいのではと思い始めていたからだ。
胸を締め付けられるような気持ちで、1枚1枚説明を受けながらサインをしていく。
娘の主治医は、この声の大きな先生になるのだろうか…相性が良いとはとても思えない。なぜ今日入院って言うのだろう、心の準備も全然出来てない…仕事は休まなくちゃいけなくなるけど、明日にしてもらおうかな…
「やはり明日にしてもらうことは出来ますか?」と恐る恐る言ってみたが、「いえ、もうこちらの準備を進めているので」と断られてしまった。
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