米津玄師「メトロノーム」に見るメタファーの威力
この半年ほど、米津玄師をよく聴いている。「Lemon」はたぶん1000回くらい聴いただろう。歌詞のひと言ひと言が絶妙で、深く響いてくる。
さて、今日は久しぶりに1時間くらい走った。Youtubeで米津玄師のミックスリストを流しながら。50分くらい経ち、身体が心地良い疲労を覚え始めたとき、イヤフォンから切ない楽曲が聴こえてきた。何という曲だろうと思って画面を見ると、「メトロノーム」とあった。どうやら失恋がテーマのようだ。
ぼんやりと聴き入っていたのだが、いつの間にかその世界が鮮やかに脳裏に描かれ、そして次の一節にやられた。
きっと僕らはふたつ並んだメトロノームみたいに
刻んでいた互いのテンポは 同じでいたのに
いつしか少しずつ ズレ始めていた
時間が経つほど離れていくのを
止められなくて
メトロノーム!そういうことか!
あまりに妙を得たメタファーに衝撃を受けた。
お陰でこの後のパートはまったく頭に入ってこなかった。笑
メタファー(比喩)というのは、コミュニケーションにおいて的確に用いることができれば、相手の理解、そして共感が劇的に得やすくなる。
ここ最近、山口周さんの『知的戦闘力を高める 独学の技法』『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』を立て続けに読んだのだが、そこで紹介されていた要素のひとつがレトリック(修辞学)であり、メタファーだった。
レトリックの歴史は古く、プラトン『パイドロス』やアリストテレス『弁論術』などに遡る。また中国の古典においても、数々の訓戒がメタファーを用いて示されていることが分かる。
かつては社会のリーダーとなるためのリベラルアーツとして位置付けられていたレトリックは、現代においてもビジネスパーソンとして多少は身に付けたい技術だ。特にコミュニケーションを仕事にする広報・PRパーソンとしては必須スキルだろう。
先述の著者・山口さんはレトリックを学ぶのに詩を推奨されていたが、J-POPにも優れたお手本があるのだと分かった。
それにしても米津玄師さん、恐るべき才能です。
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