昆布と鹿とつららの日々
生まれてから15歳で家を出るまで、三つの海に囲まれた町で育った。
三つの内訳は日本海、オホーツク海、太平洋だ。
二本ばかり道路を挟んでいたけれど部屋の窓からは海が見えたし、玄関のドアを開ければ海の匂いがした。
オーシャンビューと言えば聞こえはいいけれど、潮風で家は傷み、車にはかもめの糞が落とされ、海の匂いとはすなわち家の近くに乱立した水産加工場の匂いで、「海の近くに住んでいた」と話したときに「いいな〜!素敵」と言ってくれるその人が想像しているような爽やかなロケーションとはほ