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採用ブランディング作成手順④STP分析_セグメンテーション後編(採用ブランディング講座:vol.11)

自社の商品をサービスの立ち位置を明確にする
採用では、自社の魅力の立ち位置を明確にする

この2つがビジネスの戦略上、とても重要であり
そのためのフレームワークがSTPになります。

S:セグメンテーション(市場を細かく分けて)
T:ターゲティング(自社のターゲットを決めて)
P:ポジショニング(どこのポジションで戦うか?)

ブランディングを作成していく中で
STP分析は非常に重要です。

特にポジショニングで事業や採用の
ポジションを決めるためにも
セグメント(市場の細分化)は一番重要です。

この記事は前編からの続きとなりますので、
もし、前回の記事をまだ読んでいない方は
先にこちらからご確認ください。

今回はセグメンテーションにおいて
リクルーティングの視点から考えた
分析手法に関する考察を解説します。

このシリーズにおいて
特に重要な回となりますので、
ぜひ最後まで読んでくださいね。


1.セグメンテーションの復習

前回の記事を振り返り、
セグメンテーションに関する
基本的な考え方を復習したいと思います。

市場を細かく切り分けたものを
セグメント」と呼び、
以下の考え方による切り口があります。

地理的変数(ジオグラフィック変数)

 国や都市、地域といった地理的な条件に関連する特性。

人口動態変数(デモグラフィック変数)
 年齢、性別、家族構成、職業、収入等、人口動態に関連する特性。

心理的変数(サイコグラフィック変数)
 価値観、趣向、性格といった心理的な状態に関連する特性。

行動変数(ビヘイビアル)
 人の行動パターンに関連する特性。

更に、そのセグメントは以下の「6R
という基準に照らして妥当性があるか?
確認して判断します。

Rank(優先度)
 自社の事業計画にとって優先度が高いか?
Realistic(有効性)
 市場規模は十分にあるか?
Reach(到達可能性)
 
メッセージがターゲットに届けられるか?
Response(測定可能性)
 
効果の計測は可能か?
Rival(競合)
 
参入障壁が低く、競合が多すぎないか?
Rate of Growth(成長性)
 
成長、もしくは衰退していく産業か?

そして一番重要なことは市場の細分化は
属性』から始めてはいけない
ニーズ』から始めるべき
という内容でした。

ここまでが前回のおさらいです。

2.採用におけるセグメント


前回解説したセールスにおける
セグメンテーションの多くは
採用にも応用が可能な内容です。

ただし、
セールスとリクルーティングには
大きな違いがいくつかあります。

①地理的変数に大き影響を受ける

職場(仕事内容や環境)が商品になるため
大手企業のように、全国規模に事業所があり
一括採用を行う場合を除くが
採用市場では「場所」が限定されます。

セールスにおいてもリアル店舗の事業で
あれば商圏の範囲内となるため同様です。

ただし、テレワークの場合は場所の制約が
大きく軽減されるため、範囲が広がります。

②市場のパイはある程度決まっている

また、セグメントは場所以外にも
年齢」が大きく影響を受けます。

新卒なら大学3年生院卒(修士)1年生
それ以外の学生なら最終学年となります。

そのため、新卒一括採用の場合は
地域によっては既に成立しないとう地域
もあると推測されます。

最初に確認すべきは学校数生徒数となり
若干のUターン等がありますが、
それらの合計が市場のパイです。

あまりにレッドオーシャンで
しかも、学校にツテがない場合は
新卒採用は諦めて中途採用をお勧めします。

セールスの場合では、新たな価値提供を
打ち出し、新たな顧客層を獲得することも
可能性としてはあり得ます。

従って、
新卒一括採用という日本のシステムは
行き詰まりを見せているのだと感じます。

③業界内の最低ラインをクリアしているか?

次に待遇面において
例えば、職種がルート営業の場合、
年収600万円超の求人は大きく減少します。

このように仕事内容年収には相場があり、
同じく業界における標準の待遇があります。

つまり、業界と職種によって
給与以外にも年収等も含む
待遇はある程度決まっています。

セールス上の競合ではない企業でも
市場の分け方によっては競合が成立し
職種や待遇が近しい企業が登場します。

待遇に差がない場合、
他の要素が判断基準となるため、
それを把握する必要があるのです。

業界や職種でやりたいことが実現できるなら
仕事内容が重視されますが、やりたいことが
特にない人は待遇が重視されます。

やりたいことが
 ある学生:仕事内容、職種を重視する傾向
 ない学生:待遇、職場環境を重視する傾向


これを踏まえて、
採用競合になっている企業を把握すると、
自社の市場(セグメント)が見えてきます。


以上が、セグメンテーションの
セールスとリクルーティングにおける違いです。

採用の場合、
セグメンテーションの自由度が
低いと感じたのではないでしょうか?

そこで前回ご紹介した
セグメントの意味合いを変えてしまうことで
新たな市場が生まれ、今までの競合とは
差別化を図ることができるようになります。

この視点を無くして分析を進めても
ただ条件勝負のナビサイトへ登録しても
レッドオーシャンで苦労するでしょう。

この記事では分かり易く説明するため
4象限で2つの軸を示し、
その中で未開拓の市場を見出した例として
図解をしてくれています。

しかし、軸を良くご覧ください。
ここには属性だけではなく、
市場のニーズが入っていることに
お気づきでしょうか?

とにかく先にニーズを意識する
それから、属性で切り分けて、
その市場ではニーズが当てはまるか?
という順番で探すことがコツです。

この辺りの考え方をリクルーティングでも
応用できないか?次の章で考察します。


3.採用のセグメンテーションの実態


ここまでご説明した踏まえて
一つの事例をご紹介します。

日本で一番人口が少ない「鳥取県」を
参考に各種データを調べてみました。

(鳥取県の)人口動態変数
人口 :544,000人
高校生:約14,500人
 内、就職志望は1,200人/就職率は25%(約300人)
大学 :約2,000

※端数は省略。
 令和の近年のデータを以下のサイトより参照。

(鳥取県の)新卒一括採用の募集企業
全業種の企業数:740社
(東部:200社、中部240社、西部:320社)

もっと細かく業種別、地域別に調べれば
穴場があるかもしれませんが、
市場としてこの状態は成立していません。

県下の高校生と大学生を合わせて約2,300人。
その多くが都会での就職を希望するとしたら
鳥取県の新卒における全学部の
母集団が1,200人未満と推測されます。

対して、
企業数は一つのナビサイトを見ただけで
740社あり…その先は想像がつきますよね?

それでもあえて挑む場合、
私は以下の内容であると考えています。

「地元で働きたい人+α」

この「+α」は
「仕事のやりがい」
「企業のビジョンへの共感」
「自身の成長への期待」

このような企業が掲げることに
求職者が共感ができる部分から

就職した後に実現したいこと」=「ニーズ

が必要であると思います。

その結果、相手に伝える際には
明るい将来としてのベネフィットが伝わる
のではないでしょうか。

例えば、
先ほどの鳥取県の事例で一社ご紹介します。

情報誌システムの中でも
土木・建築」に特化したシステムを
提供している企業です。

目指しているビジョンは
顧客のUI、UXを第一に考えており、
「使いやすい」でNo1へ!
というシンプルな内容です。

年収はそこそこ、残業時間や年間休日数等
待遇面もある程度の基準をクリアしていて、
立ち位置が明確になっている点からも
上記の条件は揃っています。


これは個人の見解ではありますが、
シンプルで分かり易く、他社が使っていない
キーワードは効果的だと思います。

最近よく見かけるのが
サステナブル」「社会課題を解決」など
流行っているように感じます。

しかし、これを見て
「自社の提供している商品・サービスの
 ビジョンとして適切なコピーですか?」
と感じるのは私だけでしょうか?

それって、会社の看板を掛けかえれば
どこの会社でも当てはまる
と感じるコピーって多いですよね。

「使いやすい」でNo1へ!
このコピーも一見当てはまっているように
感じた方がいるかもしれません。

ただ、私が主張したいことは
そのメッセージを体現した事業である
ならば全然問題ありません。

求人広告で打ち出すコピーもそうですが、
自社がブランディングを行う上で、
タッチポイントは様々な場面で存在します。

上っ面の良い文言がいかに秀逸なコピーでも
意味がありません。
信念をもって実現しようとする姿が
求職者から見えないと、共感は生まれない
と覚えておいてください。


少し話が逸れましたが、
セグメンテーションの視点で見ると
どのように分類できるでしょうか?

学生の視点で見ると、
地元で働く
+「待遇の良さ
+「土木・建築系システムの興味がある
という学生には明確に刺さる内容です。

どこに学生がいるか?という問いには
エンジニアという面では未経験ですが
土木・建築系の学科がある大学や高校が
鳥取県下でいくつか見つかりました。

このように「+α」において
学生から見て刺さる要素がないと
ただの条件比較で負けてしまう等、
多くの求人に埋もれてしまいます。


4.セグメンテーションの手順


最後に、リクルーティングにおける
セグメンテーションの手順をご説明します。

地理的変数(ジオグラフィック)
人口動態変数(デモグラフィック)

で市場を確認した上で、
先に6Rに照らして状況を分析します。

先ほどの鳥取県のように、
明らかに成立していない場合は
中途採用も検討してください。

次に以下の手順へ進めていきます。

①提供できる「待遇+仕事内容」を言語化
②求職者にどんなニーズがあるのか?
③どんなセグメントの人が該当するか?
④③に当てはまる地理的、人口動態的データを抽出
※このあと、ターゲティングへ

順番が重要となりますので、
必ずこの順番で進めるようにしてください。

一番の悪手は

自社の仕事内容・職種から
求める能力/人物像 ⇒ 学群 ⇒ 学部

…と、学生を『属性』だけで絞ることです。

この視点でセグメンテーションを行うと、
実際の応募状況とズレた分析になり、
あとで必ずやり直すことになります。

(知名度が高い大手企業で
 学生を「ふるい」にかける採用をして
 成立している企業は除きます。)

なお、セグメントの属性として有名なものが
高学歴層の「とりあえずコンサル」です。

他にも、以下のような傾向があります。
・安定志向
・共働き志向
・早期化、早期終了化

そのまま使えるか分かりませんが
学生の志向性は感じ取れたと思います。

学生はみんな不安なのです。
企業に頼れないと思っています。
だから早く成長して、自立したいのです。

実際には個社の事情が違いますので、
採用活動の中で出会った学生から聞く
直近に入社した社員へインタビューする
などが有効な調査手段です。

求職者の視点で、何を求めているか?
『ニーズ』に当てはまる『属性』を見つけて
セグメントを分けること

これが今回の話の結論です。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

長くなり過ぎるため、セグメンテーションだけで
セールスとリクルーティングの2回に分けました。

それだけセグメンテーションの重要性が
伝わっていたら幸いです。

次回は、ターゲティング、ポジショニングの
話題へ移りたいと思います。

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