僕がゲイだと自認するまでの話
これまでアダルトチルドレンとしての僕の話を掘り下げてきたが、一応ある程度進んだ(と思う)ので気分転換に違う話題を掘り下げてみたい。
となると次はこれかな、と。
僕はゲイである。
令和の時代においてはこのことについて多くの説明は不要だと思うし、僕は今となってはもうまったく疑いなくゲイとしての人生を歩んでいるわけだが、そんな現代においてもそう簡単に割り切れない人、そうしたくてもできない人も意外とまだたくさんいるのではないかと思っている。
それぐらいにセンシティブな話題だと思う。
僕がちゃんと「ゲイであること」を自認できたのは22歳の時である。
現代においては遅いと思われるかもしれないが、僕が生まれたのは昭和であり高校生の時に平成になったものの当時は今とはまったく違いスマホはもちろんインターネットもない時代である。
そして今やオールドメディアと言われるテレビではまさに今話題のフジテレビでとんねるずが「保毛尾田保毛男(ホモオダホモオ)」などというキャラクターで笑いを取っていたようなレベルの時代であった(ちなみに僕はとんねるずが大嫌いだ)。
ただ同じ頃には放映時間帯には新宿2丁目の人通りが消えた、ともいわれる「同窓会」や、今や実力派俳優である西島秀俊さんがおそらく最初にゲイの役を演じた「あすなろ白書」などのドラマが放映され始めていた時代でもあった。
そんな時代に、もっと言えばさらにそれ以前の社会において自分が同性愛者であることを自認するのはかなり難しいうえに苦しいことであったであろうと想像できる。
中学生になるまで僕は父に髪を切ってもらっており、その髪型は今でいうところのマッシュヘアなのであるが当時流に言えばおかっぱ頭、カリメロカット(「カリメロ」というアニメは今どれくらい認知されているのだろう)といったところであろうか。
そして僕は男の子同士の遊びや運動が苦手だったりして俗に言う男らしさが圧倒的に足りていなかった。
髪が長く華奢で見た目的にも男らしさがなかった僕は幼いころから女の子と間違われたり、「男女(おとこおんな)」と言われてからかいの対象になることが多かった。
「オカマ」とか「ホモ」とかいう言葉はもう少し成長してからだったように記憶しているが、もちろんそういう言葉も多く浴びてきた。
トイレで用を足しているときに友だちに隣から覗きこまれて、「ちゃんとちんちんついてるんだ」なんて言われたこともあった。
子ども同士であったし周りでは残酷なほどの容姿いじめなどもあったので、それに比べたらマシだとは思いつつもやはりいい気分はしなかった。
周りからはこのように見られていたわけであるが最初から同性が好きと思っていたわけではないし、そのように振る舞っていたつもりもまったくない。
子どもの頃の僕はもちろん同性愛なんて言葉も知らないし、そういう概念はまるで頭の中にはなかったからだ。
恋愛なんてちゃんとしたものではなかったと思うが好きになった(と思っていた)のは一応女の子であった。
おそらく最初に好きになったのは幼稚園の女性の先生である。
その一方で、かっこいい男の子も好きであったと思う。
ただ当時のそれは自分にはないものを求める憧れでもあっただろうし、単純に仲良くなりたいという程度のものでそれ以上の感情はなかった。
今思えば女の子への感情も同じ程度であったのかもしれない。
中学生以降はおかっぱ頭を卒業し男子らしい髪形になったこともあってかそういうからかいは以前よりは少なくなったものの、恋愛感情的には変わらずであったと思う。
同じクラスの女子を好きだと思いつつ、誕生日が同じで下の名前も同じという男子と仲良くなりたくて仕方なかったし、部活の後輩男子をかわいがっていた。
もちろんそれが「僕の中での普通」の感情だった。
いつからかは忘れてしまったが、僕にはなぜかこんな理想があった。
10代のうちに結婚して、若いパパになってたくさん子どもを作って、平凡でも幸せな家庭を築いて、若いじいちゃんになって40代で孫の顔を見る、というようなものである。
本当になぜかわからないのだが、これは自分が得られなかったものを得ようという感情からだったのかもしれないと今なら思える。
だが、結婚どころか女性とお付き合いをすることもないまま20歳を超えてしまった。
高校は進学校に通ったのと、大学では部活(楽器)に明け暮れてそんな暇がなかった、というのが言い訳である。
周りでは付き合う人は付き合っていたが僕には無縁であったし、生真面目が過ぎる性格なので楽器の練習を最優先にしていた。
そんな僕にも部活を引退すると同時にいよいよ初めての彼女ができた。
相手は同じ部活で共に頑張ってきた女性であった。
僕は性的な接触以外では彼女とすごくいい関係を築けていたと思っていた。
ただ、生まれて初めて出来た彼女とセックスどころかキスすらしたいと思わないのはおかしいと気づいてはいた。
それ以降も自分を騙し騙し付き合っていたのだが、ついに彼女の方からそのことを追及されるに至った。
付き合った相手に何もされないのだ、当然の疑問であろう。
僕はそれは彼女を大切に思っているからだ、という苦し紛れの嘘をついたうえで別れを切り出し、強引に別れた。
僕は結婚したいと思っていたくらいなので恋愛対象はずっと女性だったはずだと思っていた。
しかしよくよく考えてみると、自慰行為の時は覚えて以来ずっと男性のことを思い浮かべていたのである。
それなのに本当に不思議なものでこれは彼女ができたら自然と治るものだと思い込んでいた。
それぐらい当時の僕には知識も情報も経験もまったくなかった。
ゲイという存在は知ってはいたが、自分がそうであるとは夢にも思っていなかったのだ。
実際にいざ女性を目の前にした時に僕は何にもできなかったしそもそもそういう欲がまったく湧いてこなかったので、これはさすがにおかしいと思った僕はとりあえずゲイの男性と会ってみることにした。
当時、伝言ダイヤルというものがあってメッセージを残した見ず知らずの相手にこちらから電話をかける、という今考えるととても怖いシステムであったが、なぜかその存在を知っていた僕は自分を確かめたいという気持ちからつい利用してしまった。
待ち合わせ場所に現れたのは僕の好みとはかけ離れた男性だったのだが、その時の僕は生まれて初めてのことでものすごく緊張していたし背徳感も大きかったので断るなんてことはできず、相手はどうやら僕のことを気に入ってくれたようであったので言われるがまま一緒に部屋へ連れていかれ、初めての体験をした。
好みではない男性ではあったがちゃんとそういう欲は発露した。
そこでようやく自分の性を自認できたのである。
僕は男性が好きで性的指向も男性、ゲイなのだ、と。
それと同時に家庭も結婚も子どもも孫も自分には得られない夢なのだということを悟った。
そして先に述べた彼女から追及された件はその少し後のことであった。
今でも当時の彼女には本当に酷いことをしたと思っている。
この話の続きは記事を改めたいと思う。