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【謎】男子はどこに消えるのか

昔から気になっていたんですよ「男子が少ないな」って。

街中などの往来、買い物で出た店先などで見かける学生は、女の子ばかり。女子が劇的に多いんです。

若い女にばかり目が行ってるからだよ、変態オヤジ!

と思われるかもしれませんが、違うもん。

これはぼくが高校生のころから気になっていたことなんです。ひとり池袋に買い物に行くため地元ひばりヶ丘駅で電車の到着を持っているときも、周囲に女子はいても、男子は稀。

女子にばかり目が行ってるからだよ、非モテ男子!

と思われるかもしれませんが、違……そういうこと言うのやめてください。

で! 最近になって外を歩いたときに見かけた中高生を実際にカウントしてみたんです。あれから何年……という感じですけどね。

でも、やってよかったんですよ。

数えていた10日間では、概ね7:3くらいで確かに女子が多く、男子が多かったのは1日だけでした。

出生数は男子の方がわずかに多いと言われています。統計的には事実です。実際、学校のクラスも男子の方が多かった。

――と思っていたんですが、どうやら「そうでもないかもしれない」というのが今回のお話です。

錯覚としての男子減少

中高生を街中で見かけるとき、女子が多く見えることにはいくつかの理由があります。

その一番の理由は、男女のカルチャーに差があって、女子の方が「おしゃべり好き」ということでしょう。

おしゃべりに夢中な女子は、友達と並んでゆっくり歩いたり、完全に立ち止まっていたりすることが多いので遭遇率が高まります。男子も稀にいるけど、女子が圧倒的に多いです。

「学校の教室で友達と話し込んでしまい、帰りが遅くなった」というパターンもありますね。下校時刻はとっくに過ぎてからぽつぽつと見かける中高生に女子が多い現象につながります。日暮れ時などに、ひとりぼっちで男子が歩く姿を見かけるのは稀です。

逆に言えば、男子はすんなり帰宅しやすいとも言えます。

下校時刻にブワーっと押し寄せる"学生の波"を丁寧に計測すれば、そこでは男子の方が多いことでしょう。委員会をまじめにやるなど、男子がソソクサと逃げ出すようなことを女子は逃れられずに全うする傾向も、女子の下校が遅れがちになることにつながっているはずです。

女子を多く見かける第二の理由は、「制服の肯定感」でしょうか。

直球で言えば「商品的」な意味で女子の制服には"価値"が認められています。そのことの是非はさておき、制服のまま出歩くことに女子の方が抵抗がない傾向は確かでしょう。

女子は「あったほうがいい」と「どちらかと言えば、あったほうがいい」をあわせると、86.4%が学校制服を必要と回答しています。

全国の高校生1,099人に聞く「学校制服の必要性」に関する最新調査
全国の高校生1,099人に聞く「学校制服の必要性」に関する最新調査

なお10日間ほど男女観測数を計ったとき、その基準は「制服姿であること」にしました。「たぶん中高生だろう」とわかる私服姿の男子女子もいるのですが、これはカウントしていません。私服姿だと男子中学生は小学生と区別できなかったり、男子高校生はオッサンと区別できないケースがあるので厄介なのです。男子に比べて女子は服装に世代が出やすいので高校生か大学生も見分けがつくように思えます(確認してはいないけど)。

また、母娘の関係もあるのでしょうけど、女子の方が店先にいるんですよ。例えば近所の100円ショップで男子を見かけることはまったくありませんが、女子はそれなりです。今川焼屋さんで"買い食い"しているのもいつも女子ばかり。そのうしろに並ぶのちょっと恥ずかしい。

もちろんお店の種類によって変わります。ただ、昔なら中高生男子がよくいたようなお店(例えば模型店とか)が、いまどき街中にはほとんどないのも関係あるでしょう。男子は日用品に関心が薄く、ネットで買いやすいものを欲する傾向がありますからね。

稀に薄汚いリサイクルショップへ行くと場に馴染んだ父親とその息子らしきプチオッサンを見かけますが、決して制服ではないのでノーカンです。大人も行く店で男子を見かけるときは親が一緒にいる傾向があり、単独でお店に入ることが少ないように見えます。なので日曜日や祝祭日には(制服姿ではないけど)よく見かけます。女子に比べると、男子は子どもだというのもあるでしょうね。

事実としての男子減少

以上のように「女子が"多く見える"」ことは、いくつかの理由で簡単に説明可能ですから、「男子減少」は事実とは異なる"錯覚"だと思っていました。でも、本当に男子が減っているかもしれないのです。

これもぼくが昔から気になっていたことなのですが、小学校6年生に進級するとき児童数が激減したんです。団塊ジュニア世代の僕らは一学年の人数がとても多く、小1~小5まで38人程度×5クラスあったのですが、これが小6では40人強×4クラスになりました。

総人数の減少がおかしいですよね。38x5=190人程度いたのが、急に30人弱も減って160人ほどになったわけです。

ぼくが住んでいる地域は東京都東久留米市で、小学校は市立でした。東久留米は「湧水と竹しかない」と言われている"東京の田舎"のひとつです。夜は普通にコウモリが飛んでいます。

消えた30人全員ではないのですが、この小6児童急減の最大の理由は「進学準備」と考えられます。中学受験準備のための「進学準備クラス」があるような小学校へ転入したり、あるいは良い塾へ通いやすい地域(都心)へ転居したりするわけですね。

ただ、これだけでは男子減少の説明にはなっていません。

実際に当時の卒業アルバムの巻末名簿を調べてみたところ、クラスの男女構成は概ね25:15でした。すごい「男余り」! 小5以前のデータがないので正確には比較できないのですが、38人学級のころは22:16程度だったはずなので、小6で男女が同数程度減少して男子の比率が高まったおそれすらあります。

今はどうなんだろう? と思いネット上の母校のサイトを見てみると、生徒数が掲載されていました。すると…

小6男子は48人、女子は60人!?

男子が激減し、女子の人数が上回っています。女子は小5時点で減少し始める様子も見てとれますね。受験準備が早いのでしょうか?

ただし、これはあくまで昨年の同時期に在籍した小1~小6の児童数であり、小1から小6へかけての増減を示すわけではありません。また少子化と「公立離れ」の影響で児童数自体が少なく、学年ごとのゆらぎが大きくなっている点にも注意が必要です。

とはいえ、貧困層が子どもを持たなくなった影響と、富裕層の"ご子息"が学歴競争に参戦する傾向が高いことによって、非都心部などから男子の流出に拍車がかかっていることは確かでしょう。男女差別に基づく「男が家を継ぐ」という風習によって男子に教育資本をつぎ込む傾向が、少子化によってさらに加速しているせいもありそうです。

もうちょっと正確なデータがほしいので、東京都が公表している『令和3年度 公立学校統計調査報告書【学校調査編】』を見てみましょうか。

東東京、区の一部(男子が10~20%程度多い)

このように東京東部・都心部などの区部では総じて男子が多く、千代田区、港区、世田谷区、渋谷区といった区部のなかでも"エリート的"な地域でより露骨です。

一方、東京西部・市部における男女の人数比は、人口全体の男女比よりは開きがあるものの、都心エリート地域に比べれば遥かに緩やかです。

西東京の市の一部(男子が5~10%多い程度)

府中市や国立市といった発展度合いが高い地域で比較的男子が多めではあるものの、そうではないコウモリが飛ぶような地域では男女差が小さく、そもそも子どもの総数が少ない福生市ではわずかに女子が上回っています。単純な発展度合いだけでなく、西東京は中部(中央線沿線)に学園都市があり、北部はそうではないことも影響していると思われます。

その生活習慣上の理由でもともと目立ちにくい男子が、ぼくが住む東久留米市のような西東京・コウモリ地域では実際に減少していたわけです。それでもまだ実際には男子の方が多いのに少なく見えるのですから「生活習慣の差、おそるべし」という感じでしょうか。

日本は人口減少社会へと転じており、今後、各地で"限界"化していくと言われています。一般には「女性が逃げ出す地域(=超保守的な地方)ほど少子化化が加速する! ヤバイ!」と言われているのですが、逆に男子が消えていくことでの人口減もあるわけですね。

そりゃあ社会全体で人口が減少するわけですから、それこそ「男が」「女が」と言っていても仕方ないのは当然ですけどね。

誰得ドット絵『多様性の壁』

(おしまい)







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