理論武装組織ヒズボニャ(前編) ~マンション・団地で猫を飼おう計画
お久しぶりの「マンション・団地で猫を飼おう計画」の続きです。この話題はどうにも話が長くなりがちなので、どうまとめるかなかな~と迷っているうちに時間が過ぎてしまいました。
とはいえ、うちのダメダメ団地の感情的ペット反対派・通称「村長」(現・団地管理組合理事長、団塊の世代・男性、元教師、来世は猫砂としてトイレに流される運命)が剥き出しの感情を発露してくれるおかげで、逆にこちらの知見は着実に蓄積されています。ありがたいことですね!
これを活用して、ペット禁止派が放つ感情的意見・デマに対する反論を整理し、この「"低度"な情報戦」を戦うための理論武装の助けになることで日本全国のペット肯定派の力になれればと思います。
「古い団地でペットは飼えない」は本当か?
さて今回はテーマを絞って、村長の主張「古い団地でペットは飼えない」という見解は本当か? について考えていきます。
もちろん知識ゼロの村長は「思い付き」を語っているだけですが、聞きかじった根拠は一応示しています。それは「古い団地にはペットを飼う設備がない」というものです。こういう無知な人たちが挙げるペット用設備というのは、例えば、ペット用エレベーターとか、足洗い場とか、ドッグランとかです。「そんな設備はないし、作れない。だからペットはダメ!」というものです。
ただ上記3点はすべて、主に犬のためのものなので猫にはほとんど関係ないうえに、犬にとっても必須のものではありません。
ペット用エレベーターの意味と必要性
ペット用エレベーターについては、密室たるエレベーター内で動物アレルギー被害を出さないためにあった方が良いものですが、必ずしも必要なわけではありません。エレベーターがあるような建物には非常用階段の設置が法律で定められているので「散歩させるときは階段で行け」でもいいんです。
もちろん階段での上り下りが現実的ではない高層マンションもありますが、うちのダメダメ団地を始めとした「古い団地」はエレベーター設置義務のない5階建てがMAXです。
そもそも人間用エレベーターもない団地で、「ペット可」にするためにペット用エレベーターだけが設置されたら逆におかしいと思わないのでしょうか?
ドッグランと足洗い場
ドッグランと足洗い場は、どちらも「あったらいいな」でしかありません。
特にマンションにおけるドッグランは、行けども行けどもコンクリート&アスファルトが連続する都会でこそ欲しいもの。人がゴミゴミしているビルの谷間のようなところしか散歩させてもらえない気の毒な都会の犬たちのストレス解消の場です。一方、農家も寄り付かなかったような雑木林を切り拓いて建てられたうちのダメダメ団地では必要性が皆無です。
そもそも近年の「ペット可マンション」にあるペットのための設備は、騒音対策などの「必要性」のためにあるわけではありません。「あったらいいな」系設備を売りにして動物愛好家を呼び込むとともに、「販売価格や家賃を高くするため」のもの。特に、既存の「小型犬なら可能」マンションとの差別化のために「大型犬も飼える」ことを謳っているわけです。
マンションにこれらの設備を設置するのはビジネスの都合が第一で、公共の秩序や飼える/飼えないとは別次元のものです。しかし、動物の知識がない人はこういうことを区別できません。
なお、ぼくが団地理事会に提出した要求では大型犬の飼育までは許可しないことを前提に、散歩に連れ出す際はケースやケージに入れて運ぶルールにすることを具体的に明示していますから、村長の主張は完全に的外れ。
人語を解さない村長は、むしろ"動物カテゴリー"に属すのですから、うちのダメダメ団地で飼養してはならないのではないでしょうか?
いや、完全室内飼育ならいいのかな……。うーん。そうですね、完全室内飼育でなら村長を飼養することは認めなければなりませんから、「今すぐ保健所送りにしたい」という気持ちは抑えましょう。ただ、散歩に行きたいときは奥様がケージに入れて団地の外まで運ばなければなりません。
騒音対策の設備・構造は?
冗談はさておき。
村長の主張には、「古い団地だから遮音性が低い」というものもありました。「騒音対策」は大切です。これはペット飼育に不安を感じる人の気持ちもわかりますし、安易に否定できません。
とはいえ、建物が古いとダメ、新しいとOK、という考えは安直すぎて驚きます。「古いとダメ」という発想には、差別・偏見の匂いもします。そもそも「ブーメラン」を気にしない堂々たる態度には恐れ入るばかりです。
賢明な読者のみなさんはおわかりのとおり、現代日本は長い不景気が続くなかで「コストカット」で延命してきたという経緯があり、昔の方が「余裕」がありました。
特に「古い団地」は戦後の高度成長期に都市部に大集合する労働者たちを受け入れるために国策で建てられたものですから、現代的な感覚からすると「採算度外視」が当たり前でした。
ただぼくはマンションの建築に詳しいわけではないので、これについては情報発信をしている不動産関係者の発言を調べてみました。
いまどきのマンションの壁の厚みは――
・12cm 薄い。隣家の声が聞こえる。
・15cm 薄め。昔(昭和50年代まで)の標準。
・18~20cm 現在の標準。隣家の会話やTVの音は聞こえない。
・20cm~ 厚め。よほどの大きくなければ隣家の声は聞こえない。
――という感じのようです。ペット可マンションの壁は12cmということはなく、18cmとか20cmはある、ということのようです。
では、うちのダメダメ団地の壁は何cmなのでしょうか?
実際に測ってみると……
なんと間仕切り壁(部屋と部屋の間を仕切る壁)でも約22cmあり、戸境壁(隣家との境界の壁)も同じ厚さがありました。
念のため、実験として「猫同士が大声で喧嘩する動画」を実際の猫の声より大きな音量でループ再生したスマホを隣室に置き、扉は塞いだうえで壁越しに音が漏れ聞こえるかも試してみました。
結果……まったく聞こえませんでした。
ま、そりゃそうです。日常生活において、壁越しに聞こえる人の声は、大きなクシャミをしたときだけ。日常会話や電話はまったく聞こえません。人間より声量の小さな猫については、言わずもがなです。
さらについでに、うちのダメダメ団地より約10年あとに建てられた近隣団地(まさに昭和50年代築)にもお邪魔して間仕切り壁の厚さを測ってみたところ、こちらは12cmでした。
この近隣団地の外見を見ると、8階建て、エレベーターがあり、庭に相当する草木のある面積は(ダメダメ団地の)半分程度、という具合い。明らかな「効率化」が図られていることがわかります。
「ペット可」を意識せずに建てられたマンションの場合、逆に後年になるほど効率化の影響で騒音が伝わりやすく、逆に古い建物の方が実は遮音性が高く、潜在的に「ペット可」の可能性を秘めているのです。
ただし、床については充分な遮音性を持っているとは言い難く、人の足音は聞こえます。聞こえるからといって「騒音」とみなされるわけではないのですが、好ましくないのは事実です。
とはいえ、床だけなら防音は比較的容易ですし、人の足音を気にするならペット禁止を声高に叫ぶ前に「フローリング禁止」にすべきでしょう。そして、古い団地で畳敷きの和室が残っている方が、遮音性を高くしやすいという逆転現象もあります。
というわけで、もちろん立地条件や建設主体などによって違いはありますが、「古い団地でペットを飼えない」は事実に反するどころか、むしろ逆。完全に根拠のないデマだと言えるでしょう。
人生はアドベンチャーゲーム?
ちょっと調べればいいのに調べもせず、どうしてこうも迂闊に思い付きを語ったり、文書にまで記してしまうのか理解に苦しみます。
でも、うちの村長のように「しらべる」コマンドがないアドベンチャーゲームのような人生を歩むのは、なんだかちょっと気の毒な気もします。もう、リセットしても良いのではないでしょうか?
次回・後編ではさらなる追撃として、実際に不動産情報を調べて見つけた、「ペット可」の古い団地の物件情報を紹介していきます。ペット禁止派と抗争するための理論武装にも、実際に移り住むにも役立つという、ぼくのnoteにしては珍しい実用的な記事になります。にゃーにゃー言っているだけでは、ないのですにゃよ。
(つづく)