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殺処分削減をがんばる街に、ふるさと納税しよう!(後編)

殺処分ゼロなどの動物愛護活動に力を入れている自治体に「ふるさと納税」で寄付しようぜ企画の後編です。前回は、いくつかのAIに候補地を洗い出してもらいましたので、今回はどこに寄付するのがよさそうかを選定していきます。

でも、これ……たいへん!

選定の注意点

選定のまえに、ちょっと注意点についてお話しします。

今回、膨大は自治体のなかから寄付先を選ぶためにAI検索を利用しましたが、殺処分削減・動物愛護についてはかなり多くの自治体が普通にやっていることです。また動物愛護に力を入れていても、ふるさと納税とはリンクしていないケースも多々あります。「ふるさと納税に頼らずとも、着実にやっている」ということですね。

なので、今回選定から漏れた自治体が決して悪いところというわけではない、ということはくれぐれもご理解ください。

とはいえ、それでも今回の企画はあくまで「ふるさと納税で、殺処分削減などの動物愛護を応援する」ことが目的ですから、わかりやすく「ここに寄付すれば、より確実」というところを挙げていきます。

「選択肢」がある自治体

寄付先選定の最大の問題は、AIにピックアップしてもらった自治体が、「本当に動物愛護に力を入れているか?」を確認することにあります。ひとつひとつ自治体ごとにその活動内容を手作業で精査するのもたいへんすぎますからね。

そこで今回は単純に、ふるさと納税サイトで「寄付金の用途を指定できるか」を基準に選定することにしました。

返礼品の注文時に、用途を選択できます(自治体による)。

いくら本当に動物愛護に力を入れている自治体だったとしても、バラまき公共事業や、度を越した企業招致のために寄付金が使われるのはいやですからね。逆に動物たちの住環境破壊につながりかねません。

ところが、前編でAIにピックアップしてもらった候補のなかで用途を選択できる自治体はほんの数ヵ所しかありませんでした。あまりに情報が少なかったので、「ふるさと納税における寄付金の使い道として、動物愛護に関連する用途を指定できる自治体をたくさん紹介して。ただし税収が少ない地域に限る。」と追加で検索した結果を含みます。

以下が、その結果です!

北海道 長沼町(perplexity)
https://www.maoi-net.jp/shokai/furusatouenkifu/

人口1万人弱。町内に鉄道なし、パトリオットミサイル配備あり。用途は「町内認定特定NPO法人の活動支援」を選ぶと、殺処分前の犬猫を引き取りや新しい飼い主への譲渡活動を行なう「HOKKAIDOしっぽの会」の活動を支援できるとのこと。返礼品は発芽米と珈琲豆の2品。なお、用途には「タンチョウも住めるまちづくり」もあります(今回のタイトル写真は長沼町Facebookより引用)。

北海道長沼町にあるハイジ牧場(写真はWikipediaより引用)

千葉県 千葉市 (Mixtral)https://www.city.chiba.jp/zaiseikyoku/zaisei/shikin/furusatokihukin.html

県庁所在地・人口98万。低税収なわけないと思いますが、それはさておき。用途に「動物愛護の推進」を含みます。よく「千葉にはピーナッツしかない」と言われますが、梨や八千代牛乳もあるので、返礼品は意外と(?)多様です。

神奈川県 鎌倉市(Mixtral)
https://kamakura-furusato.com/

鎌倉市も大きな観光地なので本当に低税収なのか少々疑問ですが、人口は約17万人ということで意外と厳しいのかも。用途は、「環境に配慮したやさしい街づくり」に動物愛護の推進が含まれます。観光地だけにお土産品が豊富なので、返礼品は豊富です。

鎌倉市にある鎌倉大仏(写真はWikipediaより引用)

大阪府 泉佐野市(Mixtral)https://www.city.izumisano.lg.jp/kakuka/seicyou/furusato/menu/furusato/index.html

ふるさと納税の制度開始初期にがんばりすぎて政府と対立した泉佐野市。認定除外されたりもしましたが、現在は復帰。大阪といっても泉佐野市は人口10万人弱。用途には「クリーンプロジェクト」があり、これが犬・猫不妊去勢手術費用助成金交付事業ということで、ダイレクトに寄付金を利用してくれそうです。トップクラスのふるさと納税活用地だけあって、返礼品も多種多様です。

泉佐野市にある佐野漁港(写真はWikipediaより引用)

奈良県 奈良市(Copilot)
https://furusato-nara.jp/

また県庁所在地で大観光地、人口34万人。低税収……? 用途に「動物愛護事業【犬猫殺処分ZEROプロジェクト】」があります。返礼品は鹿……ではなく、抱負なご当地お土産品ラインナップ等となっています。

広島県神石高原町(perplexity)
https://www.jinsekigun.jp/town/formation/mirai/machi/furusatonouzei/

人口7300人! 2004年に4町村が合併してできた新しめの市。用途は、寄附を希望する団体(町内に主たる事務所を置くNPO法人)で広島県の殺処分ゼロに取り組むピースウィンズ・ジャパンを指定可能(※楽天では選択不可)。返礼品は肉(神石牛)、ブルーベリー製品、コシヒカリといったラインナップ。

神石高原町にある帝釈峡(写真は神石高原町観光ナビより引用)

熊本県 熊本市(Copilot)
https://www.city.kumamoto.jp/html/furusato/

県庁所在地、大観光地。人口73万人。用途に「熊本市の動物愛護推進を支援! ~人と動物の共生社会の実現を目指す~」があります。2016年の震災被害もあり、今でも熊本城の復旧・復元への寄付を募っています。もはやクマモンが名産品となった熊本ですが、あれはあくまで熊本県のキャラクターらしく返礼品では目立ちません。

以上……?

はい、以上です! え、少ない? しかも低税収とは思えない良く知られた都市が混ざっていて、過疎地域との落差が激しすぎますね。

観光地は発信力があるので情報を拾われやすいのと、同時に「お客さんの目」をよく意識しているからわかりやすく用途の選択肢を設けているのだと思われます。

選定結果の妙な落差は、もちろんAIモデルごとの基準の違いと挙動の怪しさによります。Lhama、Claude3、ChatGPTの検索結果は、用途に該当する選択肢がなかったため活かせませんでした。

ただしChatGPTは、低税収であることを指定しそこねて追加検索したときに、用途に動物愛護の選択肢がある奈良県生駒市を紹介してくれましたので、追加で紹介しておきます。

奈良県 生駒市(ChatGPT)
https://www.city.ikoma.lg.jp/furusato/

人口11万人は奈良県内で3位、税収は2位。県内1位の奈良市の1/3規模。用途に「【動物愛護・環境づくり】猫の殺処分ゼロと、人と動物に優しい環境づくり」があります。観光スポットはあるものの、返礼品はお土産品というよりは地元の農産品が多め。

生駒市から見た生駒山(写真はWikipediaより引用)

がんばっている自治体

実際にはそれぞれのAIは「これ、どこよ?」というまったく聞いたこともない自治体を紹介してくれています。でもそういうところのほとんどはサイトの情報がわかりにくく、動物愛護に力を入れている様子がまったく伝わりません。サイトの内容を充実するための人員を避けないとか、あまりにも財政が厳しいため寄付金を「動物のためになんて、使えない」という場合もあるでしょう。

それとは別に、財政規模の大小を問わず、自治体の多くが「どうせみんな、節税・返礼品だけが目的なんでしょ?」という認識でいることはサイトを見ていて感じました。

寄付金の利用目的や実績をきちんと報告するのは、逆に「お役所的」で固いと思われるので避けているせいもあるかもしれません。実際、ウダウダ言わずに魅力的な返礼品の紹介ばかりした方が寄付総額は多くなるでしょう。

そこでオマケとして、用途から動物愛護のための直接的な寄付はできなくても、がんばっていることがわかる自治体をふたつ紹介しておきます。

福島県 福島市(ChatGPT)
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/kurashi/kifukin/index.html

活用事例に「動物愛護管理事業」「ペット同伴避難所に活用」あり。過去に用途「動物にもやさしいまち」があったもよう。人口27万人。

佐賀県 みやき町(ChatGPT)
https://www.town.miyaki.lg.jp/_4351.html

活用事例に「飼い主のいない猫不妊去勢手術費補助事業」あり。また返礼品に「ペットグッズ」カテゴリーあり。犬の無添加おやつ等。人口2万5000人。

まとめ

なにをもって「低税収」とするかは、AIで判断がわかれることは想定内ではあったのですが見事に落差のある結果となりました。

ただ、「動物の殺処分削減」をメインテーマとして考えると、住宅地が多い過密な地域でこそ強く求められる課題になるため、「低税収」という条件と矛盾しやすく、AIにとってかなりの難問であったはずです。

また、ふるさと納税の用途は自治体が年ごとに変えられるため、選外になった候補のなかには、過去に動物愛護系の選択肢があった自治体が含まれているようです。そしてそれは、最後にオマケで紹介した2自治体のように「寄付金の活用実績」をわかりやすく公開していれば判別でき、公開していなければ埋没してしまいます。

これまでは「いちいちそんなところまで見る人はいない」と思われるような細かい情報は省略するのが当たり前でしたが、AIは人よりずっと細かいところまで見ています。今後、もっとAIが発展し、活用されていくとこのあたりの意識を変え、人が見ないような子細な情報を出していく必要があるのではないでしょうか。

AIの発展といえば「仕事が奪われる」「人が堕落する」といったイメージが先行しますが、一方で、地方の自治体のような認知度を上げていきたい側からすれば、AIに見つけてもらうためにしてやらないといけないことが増えそうです。

いずれ、寄付金の用途に「公開する行政情報の向上のための予算」なんて項目が現れるかもしれませんね。それを人がやるのか、AIがやるのかはわかりませんけれど。

(おしまい)







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