【開催レポート】セカンド読書会 児玉雨子『##NAME##』(Promotion Edit)
ハロヲタ(Hello! Projectを推す人の総称)だけが集う読書会「ハロヲタ読書会。’23」のセカンド読書会が開催されました。この記事では、その開催レポートをPromotion Editでお送りします。
課題本は、児玉雨子『##NAME##』
セカンド読書会の課題本は、児玉雨子『##NAME##』。
本作が芥川賞候補にノミネートされたことで、著者のことを初めて知った、という方も多いと思いますが、それ以前から児玉雨子先生は、全てのハロヲタが知る存在でした。雨子先生は、ハロプロに多数の歌詞を提供しているのです。そんな雨子先生の小説を、ハロヲタが読まないわけにはまいりません。そこでハロヲタ読書会。'23セカンド読書会の課題本として、本作が決定しました。
次の写真のあとからは、ネタバレがあります。
『##NAME##』を未読の方はご注意ください。
読書会前半戦
読書会前半はフリートーク。参加者それぞれが本作の感想を自由に話し合います。話題の中心は以下の3つのテーマでした。
【児童ポルノ、性加害、毒親】
本作の主人公・雪那(せつな)は、中学生のときにジュニア・アイドルの活動を始めます。活動時は気付かなかったのですが、大学生となり、幼少時の自身の活動は児童ポルノだったのではないか、と疑念を持ち始めます。
この点については次のような意見が交わされました。
・ ジャニーズ事務所の性加害が問題となっている中、芸能界での子供の性被害について再考する機会となった。
・ 児童ポルノの定義の曖昧さ。雪那や美砂乃の写真は児童ポルノに該当するのだろうか?
・ 加害者は誰なのか?
少女の水着写真を商品化する芸能事務所か、それを消費するファンか、我が子を商品化する親か、過去の水着写真をネット検索する家庭教師先の保護者か、または性被害者であることを押し付けてくる大学の同級生か?
・ 雪那の母は毒親なのか?どのような思いで、ジュニアアイドル活動を奨励していたのだろうか。
・ 水着姿を撮影されるアイドルの精神的苦痛は、前回課題作品の朝井リョウ『武道館』でも描かれていた。ハロプロのメンバーは、どのような思いで水着姿になっているのだろうか。
【改名、雪那と美砂乃】
芸能活動を辞め、大学生となった雪那。しかしジュニアアイドル時代の活動がデジタル・タトゥーとなり、苦悩します。家庭教師先の保護者は、雪那のジュニアアイドル時代の水着写真を理由に家庭教師を解任。同級生の間でも、雪那がジュニアアイドルだったことは周知のことで、「あなたは被害者だから、怒れ」と押しつけがましく助言する友人も登場します。
そして雪那は、このデジタル・タトゥーから逃れるため、改名の道を選びます。新たに選んだ名前は「ゆき」。嫌われて疎遠になった美砂乃から呼ばれていた通称です。
この点については以下の意見が交わされました。
・ 「雪那」を「ゆき」と改名し、「那」の字が消えた。
「…、那はきれいとか美しいとか、そうゆう意味。」(14頁)
という記述と考え合わせると、「穢れた」自分を体現する改名と読み取ることもできる。
・ 美砂乃に対する雪那の心情は複雑で理解が難しい。中学生時代に美砂乃から絶交され、無視され続けたにも関わらず、大人になっても、美砂乃に結婚祝いのDMを送信する雪那。ジュニアアイドル界のスターである美砂乃に対する憧れなのか、または理解し合える唯一の親友だったのか。
・ 「たとえ闇の、歪な構造の中であっても、私は美砂乃ちゃんといる瞬間は私でいられたのだ。」(142頁)
秘密の共有は、連帯意識を生む。雪那は、美砂乃に対して一方的にこのような感覚を持っていたのではないか。
【アイドル】
ハロヲタだけの読書会ですから、やはりアイドルやヲタについての話題も出ます。
・ 地下アイドル引退後に、職場で過去の活動を揶揄されることがある。
・ 「本気じゃないなら話合わないからもう帰って。てか、もう辞めて、全部。」<90頁>
美砂乃が雪那を絶交するときに告げたこの言葉は、ユニット・アイドルのメンバー間にしばしば見られる意識差を想起させる。
ファースト読書会の課題本、朝井リョウ『武道館』でも、鶴井るりかが堂垣内碧に同様の台詞を言っていた。
・ 「そこにない視線」(47、59頁)という表現が登場する。常に誰かの視線を意識してしまうアイドルの受難を感じる。
「面接の前や後も、どこかから誰かが審査しているかしれないから、ちゃんとしなきゃね。」(47頁)
島倉りかさん(BEYOOOOONDS)が、ハロプロ研修生時代に、川村文乃さん(アンジュルム)から、上記同様の助言を受けた、と語っていたことがある(「tiny tiny#82」)。
読書会も後半戦
読書会も後半戦。
後半はテーマトーク。今回のテーマは、「胸に響いた歌詞発表会~児玉雨子パンチライン」。
雨子先生が、ハロプロのために執筆された歌詞の内、胸に響いたフレーズを、参加者の皆様に事前に考えていただき、当日発表しました。
結果はこちら。
恥ずかしながら、PINK CRES.の曲は知りませんでした。M-Lineにも素晴らしい曲がたくさんありますね。
「楽しい時間は…」、「えーーっ!」
楽しい時間はあっという間に過ぎ、お約束のエーイングを受けながら、読書会は終了。
そしてアンコールにお応えして、懇親会。
今日のおつまみは、羽カツオのたたき、八木メシ風サラダ(もちろんカット野菜を活用)など。
最後に、松本わかな邸でアンジュルムも遊んだ『モーニング娘。ドンジャラ』大会も開催し、大団円。
「ハロヲタ最高」コールを三唱して、セカンド読書会は幕を閉じました。
ご参加、ご支援いただきました皆様、ありがとうございました。
今後の予定
サード読書会は、11月を予定。
それに先立ち、ハロプロ入門講座を10月28日(日)14時から開催します。
詳細は追ってお知らせします。
以上
文責 いいの
これまでの開催レポート
ファースト読書会 朝井リョウ『武道館』 2023年7月15日