最も短い小説たちの話
こんにちは、喜田村星澄です。
1月ですので年が始まる月に、始まりに相応しそうなこのテーマをまた掘り下げてみたくなりました。
以前、関連する記事を書きました。それは↓こちらです。ご参照ください。
さて、今回は、もう少し深めに調べてみましたよ。
最も、短いとされる小説は6語で構成されていましたね。
ほかにも、同様に短い小説があるはずだと思いまして、いくつかの作品を探しました。
それから、それぞれの小説の内容や背景も出来るだけ記してみることにします。それぞれが奥深いですね~。
◇フラッシュフィクションとは
シックスワードノベル(Six-Word Novel)とは、名前の通り、6単語で構成された非常に短い小説のことを指します。この形式の小説は、限られた言葉数で読者に強いインパクトや感情を伝えることを目的としています。これらは、フラッシュフィクション(Flash Fiction)と呼ばれるジャンルの一部です。フラッシュフィクションは、通常1000語以下の非常に短い物語を指し、限られた言葉数で強いインパクトや感情を伝えることを目的としています。以下に、フラッシュフィクションの特徴について詳しく解説します:
【特徴】
簡潔さ フラッシュフィクションは短いが故に、無駄な言葉を一切使わず、物語の核心部分だけを描写します。重要な情報や感情を素早く伝えることが求められます。
意外性 読者の予想を裏切るような結末や展開がしばしば含まれます。短い物語で驚きを提供することが重視されます。
読者の想像力を喚起 短い文章でありながら、読者に多くの想像力を要求します。読者は物語の背景や詳細を自身の経験や想像力で補完することになります。
■6語小説:
「For Sale: Baby shoes, never worn.」
和訳: 「売ります。赤ん坊の靴。未使用」
有名な例でいえば、アーネスト・ヘミングウェイが書いたとされる「For Sale: Baby shoes, never worn.」が最短の小説として知られています。この6単語の小説は、わずかな言葉で深い物語と感情を表現していますね。短いながらも、多くの読者に強い印象を与えています。
作者: アーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)は、20世紀を代表するアメリカの作家であり、短編小説や長編小説の分野で高く評価されています。ノーベル文学賞も受賞しています。
解説: この6語の小説は、わずかな言葉で深い感情と物語を伝えることができる名作とされています。赤ちゃん用の靴が「未使用」で売られているということから、読者は様々な背景や物語を想像します。この短編は、シンプルでありながら強烈な印象を与えることができます。
「Born a twin; Graduated only child.」
和訳: 「双子として生まれ、ひとりで卒業した」
作者: 不明
解説: 双子として生まれたが唯一の子供として卒業する。この一文で、家族や成長の過程における変化や喪失感を示唆しています。
「We’re lying in bed. She’s lying.」
和訳: 「私たちはベッドに横たわっている。彼女は嘘をついている」
作者: 不明
解説: ベッドに一緒に横たわっているが、彼女は嘘をついている。この一言で関係の複雑さや裏切りのテーマが浮かび上がります。この短編小説は、言葉遊びによって感情的な裏切りを示唆しています。
「Strangers. Friends. Best friends. Strangers.」
和訳: 「他人。友達。親友。そして再び他人」
作者: 不明
解説: 他人、友達、親友、再び他人になるという関係の変化。この一文で、時間の経過と共に変わる人間関係を示唆しています。人間関係の変化や儚さをシンプルに表現しています。
「Found true love. Married someone else.」
和訳: 「本当の愛を見つけた。他の人と結婚した」
作者: David Wheeler (デイヴィッド・ウィーラー)
解説: この作品は、真実の愛とその後の選択による感情的な矛盾を描いています。愛を見つけたものの、他の人と結婚せざるを得なかったという切ない物語です。
「Epitaph: Foolish man was eaten alive.」
和訳: 「墓碑銘: 愚かな男は生きたまま食べられた」
作者: Anonymous (匿名)
解説: 墓碑銘に書かれた短い一文で、愚行がもたらす悲劇的な結果を表現しています。
「Dying is easy. Comedy is hard.」
和訳: 「死ぬのは簡単だ。コメディは難しい」
作者: Anonymous (匿名)
解説: この言葉は、死とコメディの難しさを対比しています。多くの俳優やコメディアンが引用する言葉です。
「It’s better this way, she lied.」
和訳: 「この方が良いのだと、彼女は嘘をついた」
作者: 不明
解説: 「この方がいいんだ」と嘘をつく彼女。この一言で、隠された真実や感情の葛藤が示されています。彼女が嘘をつく理由、背後にある事情や心情が読者の想像をかき立てます。
■7語小説:
「Computer, did we bring batteries? Computer?」
和訳: 「コンピュータ、バッテリー持ってきたっけ?コンピュータ?」
作者: Eileen Gunn (アイリーン・ガン)
解説: 緊急の状況でバッテリーがないことに気づいた絶望感と、テクノロジーに依存する現代社会の脆弱さを描いています。
「He died happy. She lived sadder.」
和訳: 「彼は幸せに死んだ。彼女は悲しみと共に生きた」
作者: Unknown (作者不詳)
解説: 二人の対照的な人生の結末を示し、残された者の悲しみを表現しています。
「Closed coffin. I'm still not convinced.」
和訳: 「閉じた棺。私はまだ納得していない」
作者: Unknown (作者不詳)
解説: 閉じた棺に対する不信感を通じて、死への疑念や執着を表現しています。
■8語小説:
「Cuando despertó, el dinosaurio todavía estaba allí.」
*スペイン語
和訳: 「目が覚めると、恐竜はまだそこにいた」
作者: アウグスト・モンテローソ(Augusto Monterroso)は、ホンジュラス生まれのグアテマラの作家で、短編小説や風刺作品で知られています。
解説: この8語の短編は、目覚めたときに恐竜がまだそこにいるという不思議な状況を描いています。短いながらも、読者に多くの疑問や興味を抱かせる作品です。この短編は、時間や場所、登場人物の背景などについて読者に考えさせる力があります。
「He longed for peace, could only make war.」
和訳: 「彼は平和を望んでいたが、戦争しかできなかった」
作者: 不明
解説: 平和を望むが、戦争しかできない。この一文で、個人の内部の葛藤や避けられない運命が描かれています。主人公の望みと現実の間の矛盾が強調され、読者に深い印象を与えます。
「Life’s more than just a chore.」
和訳: 「人生はただの雑事以上のものだ」
作者: 不明
解説: 「人生は単なる作業以上のもの」。この短い一文で、人生の意義や充実感について読者に考えさせる力があります。日常のただの義務や作業以上の何かを見つけることの重要性が暗示されています。
「He put his hand on the lever. The train left without him.」
和訳: 「彼はレバーに手を置いた。電車は彼を残して発車した」
作者: 不明
解説: 彼がレバーに手を置いたが、列車は彼を置いて出発した。選択と結果のテーマが描かれており、一つの決断がどのように結果に影響を与えるかが示されています。この一文で、選択の重さと後悔の念を感じさせます。
「Longed for rain. Despised the resulting flood.」
和訳: 「雨を待ち望んだ。洪水を憎んだ」
作者: Michael A. Arnzen (マイケル・A・アーンゼン)
解説: 欲しかったものがもたらす予期せぬ結果や失望を描いています。
「He won the race. She loved him.」
和訳: 「彼はレースに勝った。彼女は彼を愛していた」
作者: Unknown (作者不詳)
解説: 勝利と愛の結びつきを示し、成功が愛される理由の一つであることを暗示しています。
「Forgotten anniversary. Her smile hid pain.」
和訳: 「忘れられた記念日。彼女の微笑みは痛みを隠していた」
作者: Unknown (作者不詳)
解説: 忘れられた記念日がもたらす悲しみや、その痛みを隠す微笑みを描いています。
※短い小説に特別な思いを寄せる記事を、いつくか引用させて頂きました。
たくあんさんが、「売ります。赤ん坊の靴。未使用」の小説の解説をしてくれています。短歌をやっている視点から短編小説の短さの魅力を見いだしているのですね。
「詩のような小説を求めている」という甘野充さんの記事です。ショートストーリーにも、十分に情景や感情が描かれているということで、同感いたしました。
今回の記事のような、シックスワードノベルをフラッシュフィクションと呼ぶようなのですが、それについて解説していますね。ラングストン・ヒューズによる「高くつくぜ、人間のままでいるっていうのは…」これって、とても気になる作品です。「It’s expensive, staying human…」わお!
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
📚✨