東京に出てきて十年近く経とうとしていた頃、田舎から
東京に出てきて十年近く経とうとしていた頃、田舎から一通の電報が届いた。その時、丁度私は金属部品の研磨をしかける所だった。金の卵として田舎を出た後、私は金属加工の工場で働いていた。十年間、毎日ねじを作りながら、ねじのように働くのは大変素晴らしかった。私は、ねじになりたかった。円柱の金属部品に螺旋状の溝をつける作業をしながら、いつも私はねじと一緒に溶けて同化していくような心地いい気分になった。ねじに、なりたかった。私はねじになりたかった。何も考えず、何も苦しまず、何も辛くない。