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H3BO3 参加作品

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H3BO3に参加していただいた作品たち
運営しているクリエイター

#三題噺

2016年、2017年 H3BO3カクヨム

以前カクヨムにて投稿していただいていた、H3BO3の小説たちを一覧で。

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月端(ナン飛ばすエイ)さん
【企画】H3BO3用

いましんさん
Boric Acid (三題噺)

朝星青大さん
カフェ * CORAL
善因善果
本物
春の香り
ぎょいこう
キスは、こうするの !

山の端さん
天使の棘

甲乙 丙さん
黄金の店長
400字掌編集 ~ごった 煮ーあ to Nov

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ほおずきさん三題噺 第二十二回

お題【海苔、頭痛、省エネ】大学のとき付き合っていた合コンで知り合った彼氏を掠(かす)め取られたヒトミと、こともあろうに同じ会社の同じ部署で働くことになろうとは思ってもみなかった。ヒトミは男好きのするタイプなんだそうだが同性の私にはよくわからない。いったいどこがいいのか。

ヒトミはその彼と結婚して1年目。早速、夫との諍(いさか)いで別居中なのだとか。ざまぁみろ、と思いながら表向きは親身に相談に乗っ

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ほおずきさん三題噺 第二十一回

お題【ホットケーキ、求婚、飛行船】この頃、暇さえあれば正樹はプロポーズの言葉を探している。なんて言えば彼女は喜んでくれるんだろう。彼女にそれを言うのは一度きり、一生に一度だけなんだ。どう言えば彼女の心に残るんだろう。

美奈子とカフェに入った。

目の前にホットケーキとカフェオレが運ばれてきた。このパンケーキの一番下がオレで一番上が美奈子。真ん中はまだ影も形もないけど我が子ってとこかな。

「ねえ

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ほおずきさん三題噺 第二十回

お題【おむすび、禁酒、山】京都北部の山奥に家族をもつヤスオは雪深い冬の間だけ伏見の小さな酒造会社に職を求めていた。これは祖父の代からの慣習で、春になると酒を持って帰ってくる祖父や父によって、幼い頃から酒に親しみ、酒の味が判るようになっていた。

作物の収穫が終わり農閑期を迎え少し肌寒さを感じるころにヤスオは京都の町にやってくる。そして紅葉が色づくのを見ながら酒の仕込みをするのである。磨き込まれた米

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ほおずきさんの三題噺 第十九回

お題「塩、勝負、洞窟」13日の金曜日。ぼくは四年に一度開催されるこの国の神さまを決める大一番の観戦ツアーに出かけた。

対戦は町の人間と森の動物の代表なんだけど、ぼくが生まれてからずっと人間が神さまの座に就いている。だから動物が神さまになるなんてとても信じられない。人が神さまになってから町は発展を続けて、ずいぶん暮らしやすい世の中になってきたんだって。山の斜面にはソーラーパネルが設置されたし、山並

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ほおずきさん三題噺 第十八回

お題「石、瞳、船」深い深い森の奥に湖があった。この湖には流れ込む川も流れ出る川もなく、時々降る雨と太陽光による蒸発で均衡が保たれていた。湖岸には葦が生い茂り、周囲から湖面を隠していた。

この澄み切った深い深い湖の底には青と緑だけの世界があった。未だかつてこの世界の果てまで行った者はなかった。魔蟹、ケンタウロス、獅子、牡牛、醜い小人たち、この醜い小人たちには牡牛の角があってその先の毒には龍をも倒す

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ほおずきさん三題噺 第十七回

お題「ピーターパン、地下鉄、大晦日」去年の大晦日のこと。

「あら、これからお買い物ですか?」

「そやな。ママのお遣いやんな」

「いつも親子仲良しですねぇ。うちのにも見習ろてほしいわ」

明日は待ちに待ったお正月。ぼくは錦市場までお遣いを頼まれた。ぼくが買うのは出来合のお節。ママにはできないものか、作るのが面倒なものらしい。買い物のリストと今日までの期限のスパの招待券を握りしめて私鉄から地下鉄

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ほおずきさん三題噺 第十六回

お題「遠距離恋愛、クリスマス、かぼちゃ」「今日は今年初めての雪が降ったのよ」と、彼女からLINEがきた。

まだらな灰色の空に、輝く白い山の写真が貼ってある。

「ここでも雪が積もったよ」

輪郭だけを残して薄化粧をした街の写真を貼って返す。

「あったかい部屋でココア飲みながら一緒に眺めたい景色だな」

と打つ。

「クリスマスに会えないなんて悔しすぎるよ」

「会いたいな」

「だって仕事が忙

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ほおずきさん三題噺 第十五回

お題「麺、双子、紙」バスも通わない山中にあるこの村では双子を共に育てるのは良くないという昔からの因習が根強く残っていた。小倉家に双子が生まれたころは尚更で、双子として生まれた直哉はすぐに遠い親戚筋の町の商家に養子に出された。

そこにはその前の年に生まれた子どもの乳母が今も養育係として家に留まっていた。その乳母は前の年に生まれた咲子の養育係と直哉の乳母の両方を引き受けた。

直哉が13になった頃、

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ほおずきさん三題噺 第十四回

お題「音、カフェ、後悔」私がこのカフェで働き始めてそろそろ10年になる。学生時代、客として通っていたこの店をひょんなことから任されることになってしまった。と言うより押し付けられたのだ。

私の専攻は建築で建築家になろうとしている時だった。院でマスターを取得したその年、この店の元オーナーが故郷の母親が倒れたという知らせを受け、しばらくの間ということで私に託されたのだった。

しかしその後音沙汰もなく

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ほおずきさん三題噺 第九回

お題【初恋、灯台、雨】目を覚ますと真っ白い壁が目に入ってきた。天井は格子状の白。ゆったりした白いシーツにはリズミカルな波紋がある。

子どもの笑い声が聞こえてくる。白いカーテンの窓の向こうにはきっと温かい庭がお日さまの柔らかな光を受けているのだろう。

手首に白い包帯が巻かれ、その上にネットがかけてある。

横を向くと小さなテーブルに白い封筒があるのが目に止まった。手を伸ばすとピリッと痛んだ。そっ

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