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【エッセイ】家出少女の夜明け

大量の荷物を抱えて大学へ向かった。
中身はただの一泊分。それなのにこの量。
今日の授業と相性が悪い。
なんで泊まりに行く日に限って体育なんてあるんだよ。

いつものリュックと、ボストンバッグ。
そのふたつを抱えて電車に乗った。

場所は取るし邪魔になるし、置き場をミスったら蹴られる。
重い。肩が痛い。

大学に行く。

友達に言われる。
「家出してきたの?」
私は笑って答える。
「一日家出少女になりました!」

家出じゃないよ。泊まりに行くだけだよ。
知ってるけどね。友達も。

外を歩けば視線を感じる。
大学構内なんて特に。
いないもん。こんなバカでかい荷物持って歩く人。
すれ違いざまに「不審者やん」と言われる気持ちよ。わかるかい?わかんねぇだろ。
私は笑ってやるよ。
重い荷物振り回してやろうか。
しないけど。

ひとり暮らしの友達の家に泊まった。
一年以上付き合いがあるのに、初めてのことだった。ほかの友達はよく泊まりに来たり、夜な夜なピザパーティーをしたりするらしい。
そこに私は呼ばれない。寂しかった。
だけど仕方ない。実家暮らしだから。
今考えれば、私から行けばよかっただけなんだけどね。
どうしても、時間がかかってしまったの。
私が行っていいのか、言っていいのか、未だに距離をつかみかねてる。

私は彼女たちとは違う。
寂しくて、家を出たくなった。


初めて彼女たちとしたピザパーティー。
家にテレビはなかった。いらなかった。
自分たちだけで盛り上がれるから。

今回のメンバーは私以外みんなひとり暮らし。
家主以外のふたりは午前0時に家を出た。
私と家主は途中まで見送って、引き返す。

教職仲間。みんなそう。
明日、もう今日か。模擬授業がある。
初めての模擬授業。
きっとぼろぼろになるんだろうな。
だけど意外と緊張しないんだ。
そういう時ほどきっと私はなにかやらかす。

まぁいいか。死ぬわけじゃないし。
そういうスタンスで生きてるんで。私。

1日きりの家出少女。
夜をさまよい荷物を抱え、優雅に歩く。

2時に寝て7時に目が覚めた。
頑張れば間に合ったけど、一限は飛んだ。
教科書を持ってきていなかったから。

代わりに暗い部屋で模擬授業のワークシートを作っていた。家主はまだ夢の中にいたので電気はつけなかった。


わずかに開いてるカーテンの隙間から朝日が射し込む。その光が美しく、愛おしかった。


この夜明けに、名前をつけることは出来ない。

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