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【エッセイ】ひとつくらいは

大事なものひとつくらい、守りたい。
ひとつ捨てたら、ひとつ守れるかな。
私が持てる荷物の数には限界があって、規定数を超えると代わりに何かを手放さなくちゃいけなくなる。
その時に選択を迫られるんだ。
今あるものを捨て、新しいものを得るか。
新しく得ようとしてたものを捨てて今あるものを守るか。

私は捨てた。

みんなと同じように、抱えて、進む。
だけど私はひとつ違うものを抱えていた。
誰にも言わず、ひとりで。
みんな知らない。

私は抱えきれなかった。
ふたつとも大事になんて、できなかった。
だから捨てた。
だからやめた。
そうすれば、もうひとつは守れるから。

大事なもの、ひとつくらい。
ひとつでいい。守りたかった。

周りに左右されない。
揺るがされることのない思い。心。

守りたかった。
私の未来。
自分で決めた、自分の未来。

たくさんの人を驚かせ、傷つけ、私も傷ついた。
何度も何度も泣いて、彷徨って。
だけど立ち止まることを許さなかった。
だって時間がなかったから。

時間は言い訳にしかならない。
過ぎた時間は戻らない。
だけど。だからこそ。今。
今やるべきことを、今やりたいことを、やる。

そのために捨てた。

誰にも知られずに、ひっそり消える。
みんなが気づく頃、私はそこにいない。
戻ることもない。
ただ私を生きるだけ。

全部抱えて進むなんて器用なことできないからさ。

今も前向いて貫こうとする人達が眩しくて羨ましい。私にはできなかった。応援してる。

将来の方向性を変えた、ひとつの決断。
それが私にとって正解かどうかは何十年か後にわかる話。きっと。

とりあえず、今の私がやりたい道を行くね。

そんな独白。独断。

私はひとつ、夢を捨てた。
だけどそれは間違ってなかったって。
最善だったって。
証明してくる。

一旦、涙を流すのはここで最後にするね。
この件で私、ずっとずっと泣いてきたから。
枯れるほど陰で泣いてきたから。


将来の選択って、難しいね。
生きたいように生きるって、難しいね。
おとなになるって、こんなに難しいんだね。


大事なもの、守りたいだけなのに。


だけど諦めないよ。
まだまだこれから。

そうしてようやく、私は前を向けた気がした。

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