【5】2016年からの『ポーの一族』続編――より強い絆が見え始めたエドガーとアラン、世界史と絡み合う「ポーの一族」
2016年、まさかの“『ポーの一族』続編“の発表開始。「長く生きていて本当によかった…!」と歓喜に打ち震えたファンも多かったです。今作では、エドガーとアランのこれまで描かれていなかった期間の日々、さらに、アランの再生という問題もふくめ、現在進行系でのふたりの絆が綴られています。溝口さんが「“異端と共存できる別の世界”を見せることで、私たちを導いている」と語る『ポーの一族』続編の世界に迫ります。
『ポーの一族』復活までのストーリー
『ポーの一族 春の夢』小学館、2017年
溝口 2016年から連載を再開された『ポーの一族』について、いくつか考察をしていきたいと思います。まずあらためて、本当に、連載を再開してくださってありがとうございます。
萩尾 いやもうほんとに、こちらこそ読んでいただいてありがとうございます。再開する前はすごく怖くって、(キャラクターの)顔も違ってるし、手足の長さも違うし、「これはエドガーじゃないわ!」って言われたらどうしようとか考えてドキドキしていたんですけど(笑)。でも、描き出したときはもう60を過ぎていたから、なにか言われたら「還暦過ぎてるから許してね♥」って言おうと思って(笑)。
溝口 (笑)。40数年ぶりですものね……ほんとに、まさか、まさか続きを読めるとは……!
萩尾 私も、まさか描くとは思わなかった。
溝口 (笑)。さて、先程も述べたように、私自身は、作品の分析はできるけれど、マンガも小説も書けず、物語の創作が一切できない人間です。だから、ゼロから物語やキャラクターがどう立ち上がるのか、また、作者が物語の命をまっとうさせたと感じるのはどういうことか、といった点にすごく興味があります。
なので、萩尾先生は今「まさか『ポーの一族』をまた描くとは思わなかった」とおっしゃいましたが、ということは40数年前に、この物語はいったんまっとうしたとお感じになったのでしょうか。そして、再開にあたってどんな心境の変化があったのかについて、あらためておうかがいしたいです。
萩尾 『ポーの一族』は短編から始まって、『ポーの一族』『メリーベルと銀のばら』『小鳥の巣』の3部作で完結するはずでした。だけど、描いているうちに色んなエピソードが浮かんできたので、「いつかこれを描きたいな」と思いながら、お話をためていたんですね。そのあと『別冊少女コミック』で連載を再開したときに、数年おいていたものですから、同じ顔が描けないわけです。そうするとやはり、『ポーの一族』を愛する読者から「顔が違うじゃないか!」とお叱りを受けまして、「ごめんなさい!」とか思いながら描いていました(笑)。
溝口 それは……! お手紙に文句が書かれているんですか?
萩尾 はい、当時はお手紙で来るんですね。今みたいなネット社会じゃなくてよかったー!
溝口 (笑)。
萩尾 それで、連載を再開してから1年くらい経ったときに、なんだか読者を失望させているみたいだから、これで終わりにしようと思ったんです。それで、『エディス』でアランを消してしまって。ま、本人にはちょっとかわいそうだったけど、私としてはほっとして終わったんです。
溝口 なるほど。
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